医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

オメガー3不飽和脂肪酸エマルジョンの脳卒中発作後の脳機能改善効果について その一 栄養医学ブログ

2013-05-27 14:31:54 | 健康・病気

脳卒中発作後、脳の組織が障害を受けたり、脳の機能が障害を受けたりしますが、その損傷を修復したり、機能を改善する薬剤は、現在のところ、少ししかありません。しかし、コロンビア大学のRichard Deckelbaum博士らの研究グループは、マウスにオメガー3不飽和脂肪酸を投与して、脳卒中後遺症の改善を確認しました。ヒトでもそれが証明されれば、人類にとっての福音になるのではないか、と期待されています。また、更なる研究が世界各国で行われる、と考えられます。

彼らの報告によると、虚血性脳卒中発作後の数時間以内に、注入されたオメガ―3不飽和脂肪酸(魚油、亜麻仁油などに含まれている)を多く含むエマルジョン(乳濁液)は、マウスでは、50%かそれ以上、脳細胞のダメージ量を減らすことができる、とDeckelbaum博士らは報告しました。

新しい脳卒中や、成人の脳卒中発作で生き残ったヒトに見られる、長期間の神経学的、行動上の問題のいくらかをオメガ―3不飽和脂肪酸(ビタミンF)は、減らす可能性がある、とその研究は示唆しています。現在のところ、cIot-busting tPA(遺伝子組み換え組織タイプのプラスミノ―ゲン賦活体)は、虚血性脳卒中発作の回復の改善に有効であることが、わかっています。その薬剤は、脳卒中発作後すぐに投与されるなら、脳への血流を回復させますが、脳の損傷を防げない可能性があります。しかし、脳神経が死んでしまうのを、救うことができるかもしれません。

オメガー3不飽和脂肪酸は、脳卒中発作により阻害された脳の多くの生化学的プロセスに作用するので、脳の保護物質として、もっと可能性を有する、と博士は述べています。このRichard Decelbaum博士のグループの発見は、新生児や成人の、他の原因による虚血性脳障害にも有効である可能性がある、とVadim S. Ten博士は付け加えました。

オメガー3不飽和脂肪酸の効果は、脳の中にもともとある神経保護物質の産生を高め、炎症と脳の細胞死を減らし、脳細胞を保護する可能性のある遺伝子を活性する、と考えられます。

References

Omega-3 lipid emulsion markedly protect brain after stroke in mouse study: Science Daily, Feb. 20,2013

Fish oil may protect against stroke from ruptured carotid artery plaques: Science Daily,Nov. 1,2009

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摂取食品の組み合わせとアルツハイマー病のリスクとの関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-05-25 21:33:57 | 健康・病気

食品摂取の組み合わせとアルツハイアー病のリスクとの関連は、今まで、断片的には、栄養学者が研究し、その関連を指摘していましたが、個々の食生活の多様性から、研究はしにくく、その結果も相反する結果が出ていました。しかし、コロンビア大学のYian  Gu博士らは食事パターンを分類し、どのパターンの食生活がアルツハイマー病のリスクに結び付くかを、疫学調査により、突き止めました。

野菜サラダ、ナッツ、魚、家禽の肉(ニワトリ、七面鳥など)、それに野菜(アブラナ科)や果物などの摂取量が多く、高脂肪の乳製品、赤身の肉、動物の臓器の肉(ハムバーグなど)、それにバターなどの摂取量が少ない食事を摂取するヒトは、アルツハイマー病の発症が、そうでないヒトに比べて少ないことが、Yian  Gu博士らの研究で明らかになりました。最も重要な、変わりうる環境因子の一つである食事と結び付いた疫学的証拠(エビデンス)では、アルツハイマー病(認知症の一つ)のリスクは急激に増えつつあります。しかしながら、アルツハイマー病のリスクに関しては、個々の栄養素や特徴となる食事の影響について、繰り返しますが、現在ある文献では相反した結果が出ており、この理由の一つとして、協働作用をする食品どうしや栄養素どうし、それに食品の特徴が複雑に混じった食事を、人々が摂取するからと考えられます。ここに、栄養と病気のリスクの関連の研究の難しさがあります。

Yian Gu博士らは、ニューヨーク在住の痴呆症に罹っていない2,148名の成人(65歳以上)について研究し、参加者は食事のパターンについて情報を提供され、1年半ごとに(平均4年間)痴呆症の発症を評価されました。7つの食事パターンでは、以前にアルツハイマー病のリスクと関連が有ることが証明された、7つの栄養素の血中濃度の変化も確認されました。すなわち、それらは、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、オメガ―3不飽和脂肪酸、オメガー6不飽和脂肪酸、VE、VB12、それに葉酸(VM)でした。追跡調査の間に253名がアルツハイマー病を発症しましたが、一つの食事パターンがアルツハイマー病のリスクの減少に深く関係していました。この食事パターンは、このブログの最初に紹介しました。

低リスクの食事パターンの栄養素の組み合わせは、アルツハイマー病の発症において、いろんな代謝経路をもたらします。VB12と葉酸は、循環性ホモシステイン値を減らすことができ、アルツハイマー病に影響するホモシステインと関係が有るビタミンです。VEは、強い抗酸化能によりアルツハイマー病を予防しますが、その際、VCも必要と考えられます。また、オメガー3不飽和脂肪酸は、動脈硬化による痴呆や認識障害、その発症や細胞膜機能への影響による血詮症や炎症、ベターアミロイド蛋白質の蓄積によるアルツハイマー病を予防するに違いありません。

ところで、ルンド大学のマウスによる研究では、アルツハイマー病の有毒蛋白質をビタミンCが溶かす、と報告されています。なお、野菜、果物、いも、豆などは、農薬や重金属に汚染されていない健康な土壌で栽培されたものを、摂取することが、健康増進に必要で、ヒトの健康は、土壌や水と深く関係しています。

References

Food combination associated with reduced Alzheimer's disease risk identified in new study: Science Daily, Apr. 13,2010

Food combination and Alzheimer disease risk: Yian Gu et al. Arch Neurol,2010

 

 

 

 

 


うつ病、統合失調症とビタミンD,ビタミンB6、補酵素Q10について 日本ビタミンC研究会 

2013-05-23 17:00:42 | 健康・病気

北欧では、パプア・ニューギニアに比べて、うつ病が多く、気候や日照時間、それに食物が関係していると言われており、その一つにビタミンDの摂取量(日照不足によるのも一つの要因になり、その不足が、うつ病発症の一つの要因であることが、新し研究により明らかになりつつあります。また、アイルランド(石ころだらけの痩せた土地に冷涼な気候)もパプア・ニュ―ギニアに比べて統合失調症が多い、と調査で明らかになりました。なお、パプア・ニュ―ギニアは、熱帯雨林帯に属しトロピカルフルーツなど、海の幸、山の幸が豊かです。このうつ病や統合失調症の発症の差の要因は、遺伝因子だけでなく、気候や食事パターンも関係している可能性が有ります。

多くの研究では、うつ病、統合失調症を含む精神障害とビタミンD(ここでは主にビタミンD3を言います)の間の関係に焦点を合わせています。J.J. McGrath博士らの研究によると、出生時のビタミンDの血中濃度が異常に低いか、異常に高いデンマークの乳児は、その濃度が正常値の乳児に比べ、統合失調症を発症しやすい、と報告されています。更に、出生後の一年間にビタミンDを与えると、その後の統合失調症の進行リスクを減少させました。まだ証明されないでいることは、その後のビタミンDの補給がその症状を改善さすかどうかです。更なる、研究を待っています。

次に、ビタミンDの欠乏は、うつ病と双極性障害(躁うつ病)の原因の一つになります。G。 Parker博士らは、ビタミンDの欠乏が、うつ病の原因か結果かどうか明確ではないが、うつ病の一般的な治療法として、ビタミンDを勧めるのには、不十分ながら、証拠(エビデンス)があります。北欧の食事パターンや住む所によるビタミンD値が低いうつ病患者は、ビタミンD欠乏症になりやすい傾向があります。また、ビタミンDを摂取しすぎると、統合失調症に成りやすいという、研究も有りますので、適正量(1,000国際単位/日以下)の摂取が望まれます。なお、脂溶性ビタミンなので、過剰摂取には注意を払って下さい。

ビタミンB6は、うつ病や統合失調症の治療のため、もっとも頻繁に摂取されているビタミンです。このビタミンは、蛋白質、アミノ酸代謝を円滑にし、セロトニンの合成に関係しています。うつ病に対しては、著しい効果はすくないが、閉経前期の女性では、著しい効果が認められました。ホルモン量の変化に伴ううつ病の婦人には、有効である可能性が有りま。また、統合失調症のナイアシン・グリシン療法にも補助的に投与されています。治療適正量は、体質、体格にもよりますが、100mg/日以下が安全量と考えられますが、アレルギー体質や腎臓の悪い患者は、医師・薬剤師に相談下さい。

次に、Hoffer博士は、統合失調症の治療に高単位のナイアシン、補酵素Q10を用い、上昇したアドレノクロム値を低下さすことにより、素晴らしい結果を得ています。ちなみに、ナイアシンと補酵素Q10は、統合失調症の原因物質の一つのアドレノクロムのメチル基をキャッチする性質が有ります。

References

A massive dose of vitamins for depression and schizophrenia: LIVESTRONG. COM, Jun 12, 2011

Neonatal vitaminD status and risk of schizophrenia: Archives of General Psychiatry; J.J. McGrath, et al.; Sept 2010

VitaminD supplementation during the first year of life and risk of schizophrenia:Schizophrenia  Research, J.J. McGrath, et al. april 2004

D for depression: Acta Psyciatrics  Scandanavica: G. Parker, et al. April 12,2011


ガン戦略と免疫について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-05-22 21:12:32 | 健康・病気

今までのガンに対する戦略では、ガン細胞を殺し、体からガン細胞をなくすことが、主流でしたが、そうすると正常細胞まで殺し、逆にガン患者の寿命を縮めることになり、また、副作用などで患者を苦しめる場合が多い状態でした。これとは全く逆の、ガンの進行を止め、永久に休眠状態にガンを導き、ガンと共生することにより、寿命を延ばす方法がガン患者の寛解に結びつくのではないか、と世界のガン研究者は考えるようになりました。ドイツのチュウリンゲン大学のMartin Rocken博士らのグループもそう考える研究者の一人でした。

彼らは、免疫システムはガンを操ることができ、永久に休眠状態へガン細胞を誘導することが可能であることを、世界で初めて証明しました。今までも、抗酸化栄養素やビタミンC,マックス・ゲルソン栄養療法、それに漢方療法などでガン患者の免疫力を高め、寛解や延命効果は報告されましたが、それらの裏付けとなるのはMartin Rocken博士らの研究です。

ガンの永久の進行停止は、科学的にはsenescence(老齢化)として知られており、個体の生命を持続できる可能性があります。ガン細胞を破壊するのではなく、コントロールする免疫療法は、ガンの進行を阻害できます。特に、フェーズ1や2のガンでは有効性を発揮できるのではないか、と考えています。

免疫反応はガンをsenescence(老齢化)させ、ヒトの発生の状態にします。ヒトの体はガンの増殖を阻害することにより、ガン細胞のsenescenceプログラムを引き出し、ガンからヒトを防護します。この点に関しては、ガン療法の、信号分子と感染症の免疫学が、再び、注目の中心になります。

Rocken博士らは、信号分子のインターフェロンとガン壊死因子(サイトカインなど)の両方が、ガンの兆候もしくは組織の破壊なしに、in vivoでガンの増殖をストップさせることを、発見しました。動物実験でも、免疫療法によるsenescenceの効果は、抗ガン剤より優れ、ガン細胞が永久の休眠とsenescenceの方向へ変化することが分かりました。更に、臨床で延命効果と副作用のないガン治療として可能性が出ることが、期待されています。今後は、体の免疫力を高める分子栄養学、分子免疫学による治療法に的が絞られると考えられます。更なる研究が増えることを期待しています。なお、ビタミンCには、インターフェロンやガン壊死因子の産生を高める作用があると報告されていますが、更なる追試が必要です。また、腸内環境を善玉菌優位の環境にし、免役能が十分発揮されるよう、プロバイオティクスやプレバイオティクスを含む発酵食品や乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌を含むサプリメントの摂取も必要です。

References.

Milestone of cancer research: Arresting cancers rather than killing them:Science Daily, Feb. 1, 2013

T-helper-1-cell cytokines drive cancer into senescence. Braumuller et al. Nature, in press.2013

Early tumor dissemination , but late metastasis : insight into dormancy.J.:Rocken, M. Clin. Invest. 120, 1800-1803(2010)

藤井毅彦:ガンを予防し、治すビタミンC療法)、日本ビタミンC研究会、1982年

藤井毅彦:ガンと栄養、 日本ビタミンC研究会、1980年




高脂肪食とアルツハイマー病(認知症)の進行について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-05-19 23:04:28 | 健康・病気

アルツハイマー病(認知症の一つ)は、遺伝的関係と食生活の洋風化が関係している,と以前から指摘されていましたが、そのことを、更に証明する動物実験が行われましたので、ポイントを紹介したい、と考えています。そして、これらの研究数が増えて、確証に至ることを期待しています。



2008年、Laval大学の研究チームは、アルツハイマー病の主たる神経学的マーカーは、動物脂肪(肉類に含まれる飽和脂肪酸)が多く、オメガ3-不飽和脂肪酸(魚に含まれるEPAやDHA,
亜麻仁油に含まれるアルファーリノレン酸など)が少ない食餌を与えられたマウスの脳に悪影響を与えることを、証明しました。この動物による研究から、最も工業化された国々に特有の食事は、アルツハイマー病の進行を促進することが、示唆されます。



Frederic Calon博士らは、タウ(tau)蛋白質とアミロイドーβ蛋白質を産生する遺伝子移入マウスを用いて、アルツハイマー病の脳に見出される、正常神経機能を阻害するタウ(tau)蛋白質と
脳内の老人性プラ―クの形成に結び付いたアミドイドーβ蛋白質を発見しました。



博士らは、9ケ月間、異なった食餌を遺伝子移入マウスとそうでないマウスに与え、その後、
動物の脳に及ぼす影響を比較しました。食餌にオメガー3不飽和脂肪酸が少なく、動物性脂肪(消費カロリーの60%)の多い餌を与えられたマウスは、対照グループのマウスに比べて、
アミロイドーβ蛋白質とタウ(tau)蛋白質濃度が、それぞれ、8.7倍と1.5倍を示していました。
また、高脂肪食は、アルツハイマー病のその他の特徴である、脳のドレブリン(drebrin)蛋白質値の減少を示しました。このような食餌によりもたらされた代謝上の変化は、脳の炎症反応にも影響を及ぼしました。



欧米諸国では、飽和脂肪酸が多く、オメガー3不飽和脂肪酸の少ない食事が一般的で、日本国でも戦後、食生活が欧米化し、戦前の、海産物、豆、イモ、雑穀、野菜などが中心の食生活が一変しました。戦前の食事は、飽和脂肪酸が少なく、オメガー3不飽和脂肪酸が多かったようです。
もう一度、日本的食事への回帰が望まれるゆえんです。ところで、抗生物質などの発見により、感染症対策は、戦前に比べて格段に進歩しましたが、食生活が関係した病気への対策が遅れているのが現状です。とりあえず、肉中心から、魚、野菜中心に変え、動物性脂肪やリノール酸の多い油の摂取を減らしましょう。



Reference



High -fat diet could promote development of Alzheimer's disease: Oct.31, 2008, Science Daily