医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

冠状動脈石灰化リスクへのオメガ3不飽和脂肪酸の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2019-08-15 09:47:39 | 健康・病気

心臓の血管や弁の石灰化は、栄養医学分野において重要な課題になっています。Dr Robert Bassington博士によると、魚類の高摂取は、重篤な冠状動脈石灰化の防御効果があり、魚類を最も多く摂取する被験者グループは、重篤なその石灰化を進展さすリスクが減少したそうです。面白いことに、サプリメントとしてEPAとDHAを摂取した被験者グループは、冠状動脈石灰化に対し、防御効果を示さなかったそうです。一方、日本での研究では、日本人男性でのDHA摂取は、血中DHA濃度を高め、冠状動脈石灰化スコアが低下しました。なお、EPA摂取による血中EPA濃度の増加と冠状動脈石灰化スコアとの関連は認められませんでした。ちなみに、冠状動脈石灰化は、アテローム性血栓症の主要なマーカーです。なお、以前の、日本のランダム化比較試験では、スタチン(商品名メバロチン)服用の脂質異常症患者が、1.8g/日のEPAを併用服用し、冠状動脈疾患イベントを有意に抑制したとの研究もありますが、スタチンについては、長期投与になるので、いろんなリスク(副作用)がでる可能性があるため、投与しない医師もいると、報告されています。

オランダRotterdamのRenate C Heine-Broring博士らの研究によると、冠状動脈石灰化に対する魚由来(EPA・DHA)のオメガ3不飽和脂肪酸の冠状動脈保護作用の疫学的・実験的データでは、19g/日以上の魚を摂取したグループでは、魚を全然摂取しないグループに比べて、その石灰化がより軽度でした。魚の摂取量が多いグループは、重度の石灰化が少ししか認められませんでした。それらは、統計学的に有意のボーダーラインでした。EPA+DHA摂取は、有意な結びつきは認められませんでした。

Okayama UniversityのK Nakamura博士らの研究によると、NOXの活性は、WTマウスに比べて、Klotho miceのSMCsでは著しく高い値でした。そして、EPAは、NOX4遺伝子とNOX活性の発現レベルを減少させました。結論として、EPAは、NOX遺伝子発現の減少とklotho 変異マウスでのGPR120経由での活性化を伴った冠状動脈石灰化を防ぎます。

いろんな研究から、魚には冠状動脈石灰化リスクを減らすことが考えられます。EPAとDHAは、両者を摂取する場合、冠状動脈石灰化リスクを減らせ、EPA単独ではその効果が統計学的には認められず、DHA単独では認められるという研究が有りますが、魚を頻回に摂取し、EPAとDHAも併用摂取するのがよいのでは、と考えます。また、魚、EPA・DHAの摂取は、心臓弁の石灰化リスクの低下にも寄与すると、考えています。

References

Renate C Heine-Broring,et al. Intake of fish and marine-3fatty acids in relation to caronary calcification. The American Journal of Clinical Nutrition.Vol91 Issue5, May 2010

Sekikawa A, et al. Association of blood levels of marine omega-3 fattyacid with coronary calcification and Ca density in Japanese men. Eur J ClinNutr. 2019;73:783-92

Dr Robert Bassington. Omega3fatty acid and coronary calcification. RdB Nutrition. March 4, 2012

K Nakamura, et al. EPA prevents arterial calcification in Klotho  mutant Mice. Research Gate. 12(8). Aug 2017

 

 

 

 

 

 

 

 


心臓の石灰化とビタミンK2、ビタミンDの作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2019-08-14 11:11:02 | 健康・病気

心臓の冠状動脈や大動脈、大動脈弁、僧帽弁のそれらの石灰化は、その原因として動脈硬化の進行とCaパラドックスが関係しており、その石灰化は、ビフィズス菌や乳酸菌の摂取で予防できたり、進行を遅らせたりできると、報告されています。そして、その石灰化対策は、EPA・DHAの併用、ビタミンD、ビタミンK2、Mg(大豆製品、ナッツ、海藻、魚介類に含まれる)、それに食事でのCa、Mg補給(2:1)、プロバイオティクス食品などの摂取の常用が必要と言われています。また、"The NewEnglannd Journal of Medicine"誌によると、遺伝的に遺伝子の変異が見られ、血中リポタンパク質(LDLコレステロール、HDLコレステロール)濃度が高いヒトは、大動脈弁の石灰化が見られるとの報告もあります。

なお、ビタミンDとビタミンK2は、心臓弁膜の健康に必要なビタミンで、ビタミンDは、大動脈弁のCa蓄積に対する中心的制御因子で、ビタミンDにビタミンK2を併用すると、ビタミンDの大動脈弁石灰化修復作用が強まるとの、日本での報告もあります。また、ウサギを使ったある研究では、心臓弁膜症(石灰化による硬化症や狭窄症)の進展に対し、ビタミンDの効果が評価され、石灰化した心臓の弁へのビタミンK2の有効性も評価されました。ちなみに、ビタミンKの多く含まれる食品は、納豆、春菊、菜の花、ほうれん草、にら、サニーレタス、ケール、クレソン、ワケギ、ひじき、わかめ、のり、抹茶、かいわれ大根などで、特に、納豆、青菜に多く含まれます。なお、高齢者の心臓弁膜症は、ほとんどがアテローム性動脈硬化症が関係し、できたプラークに骨から溶け出したCaが入り、石灰化し、堅くなります。また、Maastricht大学での研究によると、ビタミンK2を45μg/日、少なくとも摂取する人々は、大動脈石灰化と心臓血管系疾患による死亡リスクがが50%ほど減少しました。別の研究では、食品の形のCa摂取は、食品の形のビタミンK摂取の併用が望まれます(2019年、2月の報告、米国)。さらに、大動脈石灰化へのビタミンの効果の新しい研究が米国で、ビタミンK(1mg/日)、ビタミンD(5,000IU/日)を用いて、2021年まで行われる予定だそうです。また現実に、心臓石灰化対策にビタミンK2を200μg/日、ソフトゲルサプリメントで摂取している米国人も報告されています。また、ユタ大学の研究によると、ビタミンDの長期の過剰摂取は、不整脈の心房細動の原因になる可能性があるとの報告もありますので、許容最大上限量の2,000iU/日以下に抑えておく必要があります。

 

僧帽弁石灰化予防の食事療法は、緑色野菜、豆類、ナッツ類、種子食物、全粒穀物、果物、それにMgを含む食品などを毎食、献立に加え、リンの摂取量を減らすことです。石灰化に対するMgとsodium thiosulfateによる治療において、Mg欠乏になった場合、Ca(しらす干し、チリメン、干しエビ、緑色野菜、豆類などに含まれる)は、より毒性が高まります。Mgは、尿中へのCaの溶解性を高めるため、Mgを含む食事は、腎結石(腎石灰化が進んだ状態)の再発を予防するのに著しい効果があります。なお、Dr, Chris博士によると、大動脈石灰化は、正常な心臓機能と心臓の拍出能を強く阻害します。僧帽弁石灰化は、大動脈のそれに比べて臨床的に重要度は低いようです。現在の医学では、今のところ、石灰化を治療する薬剤は見いだされていないので、このブログで紹介したような栄養医学的対策が重要と思われますが、長年にわたっての体内の石灰化は、一朝一夕でなくなるものでないので、血液の酸性化を防ぐため、食事でのアルカリ食を始め、生活習慣の見直しが必要かと、考えます。なお、サプリメントの形で上記栄養素を摂取予定の人は、これらに詳しい管理栄養士、薬剤師への相談、もしくはネットでの副作用情報の検索が必要です。

References

Dr.Churis. Calicified aortic valve and mitral heart valve calcificatipon. HealthHype

Calcified heart valve and diet. LIVESTrONG.com

Rong.Shu.MD. Risk factors for heart valve calcification in chronic kidney disease. Medicine . Feb 2018, Vol 97 Issue 5

Dr Sircus. Calcification and its treatment with Mg and sodium thiosulfate. Dec 8, 2009

Genetic association with valvular calcification and aortic stenosis. The New England Journal of Medicine. Feb 7, 2013

The University of Maastricht. How to reduce Ca in arteries. LIVESTRONG. com