医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

免疫応答に及ぼす食事性ビタミンCとプロバイオティクスの併用効果について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-09-24 20:07:48 | 健康・病気

免疫機能が正常に機能すれば、ガンやウイルス性疾患、細菌性疾患など、いろんな疾患への防御作用が発揮されます。これと関連してビタミンCやプロバイオティクスは、免疫応答を改善する作用を有することが、多くの研究から明らかになっています。ここでは、ビタミンCとプロバイオティクスの併用による免疫刺激作用を、インデアン鯉の成魚での研究について考えていきたい、と思います。なお、魚での基礎研究ですが、ビタミンCやプロバイオティクスは、単独でもガンやウイルス性疾患、細菌性疾患への効果が、ヒトでの研究で数多く報告されていますので、それらを併用することは、ヒトでも相乗効果をもたらす、と考えられます。

Fish &Shelfish Immunology(Vol23,Oct 2007)誌によると、インデアン鯉の成魚の免疫応答に及ぼすプロバイオティクス細菌(Bacillus subtilis)とビタミンC誘導体(アスコルビン酸ポリリン酸塩)、それに、それらの併用摂取(6日間)による作用が研究され、血清蛋白質とグロブリン量は、B. subtillsを投与したグループでは著しく高く(p≦0.05)、一方、ビタミンC誘導体を投与したグループでも著しく高かった。抗体値は、B.subtilisとビタミンc誘導体併用グループの投与の次に来るB.subtilis投与グループでも著しく高かった。また、死亡の最少率は、ビタミンC誘導体グループ、それにビタミンC誘導体とB,subtilisの併用グループでは、それぞれ、35%と40%で、続くB.subtilisグループでは25%でした。

これらの結果から、ビタミンC誘導体と乳酸菌のB.subtilisの併用投与は、免疫刺激作用が強く認められ、また、それらの併用投与群は、死亡率が、それぞれ単独投与群に比べ低いようでした。このようなことから、ビタミンCと乳酸菌の併用摂取は、免疫能を高め、ガンやウイルス性疾患、細菌性疾患、それに、その他のいろんな疾患の予防・治療に補助的に有益となる希望が湧いてきました。また、同じプロバイオティクスの酪酸菌、納豆菌、枯草菌などとビタミンCやビタミンCナトリウム、ビタミンCカルシウムなどとの併用も免疫能を高め、ガンやウイルス性疾患、細菌性疾患の防御や寛解に有益な可能性がありますが、ヒトや動物での更なるロングスパン(長期)の研究の積み重ねが求められます。

ところで、同じガン対策として、Rath博士らの研究によると、リジンとビタミンC、それに植物性抗酸化栄養素のあるもの(ブドウ種子注出物、ホーソンベリー注出物)は、コラーゲンの消化やガン細胞の侵入をストップでき、リジンのガン細胞への阻害作用は、ビタミンCとプロリンを併用摂取することにより強められ、これらの治療法では、乳がんでは56%、結腸ガンでは60%され、黒色腫ではほとんどすべてのガン細胞の侵襲が阻害されたと、博士は報告しています。なお、その処方例として、4錠ではL-リジン1.1g、L-プロリン1.1g、ビタミンC1.147g(ビタミンCカルシウム、ビタミンCマグネシウムよりなる)、ブドウ種注出物100mg(抗酸化物質)、ホーソンベリー注出物100mg(抗酸化物質)を2~4錠/日、を毎食事時に摂取するようです。これらの処方とビタミンCとプロバイオティクスの併用摂取は、ガン対策としては、体に優しい、リスクの少ないものになる、と考えられますが、体質や腎臓・肝臓にトラブルをかかえている人は、これらに詳しい専門家に相談が必要です。


References
S.K.Nayak, et al:Effect of dietary supplementation of probiotic and vitaminC on the immune response of Indian major carp,Labeo rohita. Fish &Shelifish Immunology. Vol23,Oct 2007

Take probiotics to prevent cancer: Natural News. June 1,2012

Jee Eun Kim et al: VitaminC induces apoptosis in human colon cancer cells through endoplasmic reticulum stress and mitcohondrial pathway. The Journal of Immunology.2007,178,4925

 

 

 


腸管性炎症と腸管バリア機能障害に対するプロバイオティクスの効果について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2015-09-03 14:07:30 | 健康・病気

"腸を制する者はガンを制する"と言われているように腸は、健康・長寿のために極めて重要な臓器です。現在、腸管の健康のため、プロバイオティクスやプレバイオティクス、ポリアミンなどが盛んに研究され、希望のある研究結果が、国内外で報告されています。

米国での研究によると、プロバイオティクスを急性の下痢患者に摂取してもらい、臨床上の効果を得ているようです。また、腸管の炎症の軽減、腸管粘膜機能の改善、それに腸管粘膜の過剰反応の調整など、その効果が報告されています。これらの臨床研究データでは、プロバイオティクスが内因性宿主防御メカニズムを高めることが報告されています。このように、プロバイオティクスによる腸管細菌叢の改善は、腸管バリアーの機能障害と炎症反応に伴う臨床症状の改善の可能性をもたらします。

プロバイオティクスの治療上の標的は、腸管バリアー機能障害の改善です。まず最初の宿主の防御の標的は、抗原の排除(腸管粘膜に拡がった、外からの病原微生物などの排除)と抗原に特異な免疫反応の調整に向けられています。このために、現在、プロバイオティクスやポリアミンなどの腸管バリアー機能障害改善効果が、いろんな研究で報告されており、希望の持てる結果が出ているようです。なお、ポリアミンは、納豆やみそなど発酵食品に含まれ、また、プロバイオティクスの中には、ポリアミンを産生するものもいるようです。また、日常の食生活に、プロバイオティクスやポリアミンを含む納豆など発酵食品を取り入れ、大腸ガンや潰瘍性大腸炎、糖尿病などを寄せ付けない体にしましょう。これらに関して、更なるロングスパンの研究が期待されます。

References
Erika Isolauri: Probiotics in human disease. The American Journal of Clinical Nutrition. Vol73 June 2001
Zhu Y et al: Competition between yogurt probiotics and periodontal pathogens in vitro. Acta Odontol Scand.2010 Sep;68(5):261-8