医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガンでのTNF-αの制御とビタミンC点滴の作用について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2022-01-23 15:45:32 | 健康・病気

Balkwill博士らの研究によると、TNF-αは、免疫システムの恒常性とその維持、炎症、それに宿主(ヒト)の防衛力に関係しています。しかし、その名称(腫瘍壊死因子)に関わらず、悪い側面をもっています。特に中高年の人々では、TNF-αは、慢性の炎症、自己免疫、そして、その名称とは裏腹に、ガンなどの悪性疾患の病理学的プロセスに影響を及ぼしています。

また、Kellie A. Charles博士らの研究によると、サイトカイン類は、悪性細胞と免疫システム間の、ガンを促進する相互作用を統合しています。多くの実験的ガンやヒトのガンでは、サイトカインのTNF-αは、これらの相互作用の重要な因子で、その作用は多面的で、2009年の時点では完全に解明されていませんが、研究が行われているので、近い将来解明されると期待されています。

卵巣ガンモデルマウスを用いた研究では、TNF-α受容体1(TNFR1)の信号は、異なった白血球群でコントロールされるか、TNF-αは抗体療法で作用を失うかどうかについて、博士らは、TNF-αは、TNFR-1に依存したCD4+細胞によるIL-17の産生を維持し、このことは、腫瘍の微細環境へ骨髄細胞の回復をもたらし、ガンの成長を高めました。したがって、TNF-αの過剰産生を抑制する因子が、ガンの進行を抑制するのではないかと、期待されています。現時点では、ビタミンCの点滴、ビタミンD、ジンジャー、緑茶カテキンなどの過剰なTNF-αの抑制作用が報告されています。

O Gelovka博士らの研究によると、ビタミンDとTNF-αの協同(cooperation)は、前立腺ガンの成長のコントロールに重要な役割を果たし、ビタミンDはTNF-αの上方制御をもたらします。また、他の研究では、TNF-αの信号がnFKBの活性化やCOX-2の発現をもたらし、それらの事象が発がんをもたらす、と報告されています。このようにTNF-αの異常は、ガンだけでなく、炎症性腸疾患、乾癬、鬱症状、それにアルツハイマー病など多くの疾患と関連がある、と報告されています。さらなる研究が期待されます。

References

O Gelovko, et al. VitaminD up-regulation of TNF-α. Life Sci.2005 Jun17

Balkwill. TNF-α in promotion and progression of cancer. Cancer Metastasis Rev. 2006 Sep;2583:409-16

Kellie A.Charies, et al. The tumor-promoting actions of TNF-α involve TNFR1 and IL-17 in ovarian cancer in mice and humans. JCIinsight. Sept8,2009

 

 

 


統合失調症の陰性症状とグリシン(栄養成分)の効果の可能性について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦   

2022-01-18 15:04:03 | 健康・病気

統合失調症の陰性症状は、抗精神病薬での治療は難しい、と報告されています。諸外国の研究では、アミノ酸の一種のグリシンの高投与が、統合失調症の陰性症状(無為自閉、感情の平板化、興味・関心の低下など)に有効である可能性があるとの研究報告が、出されています。

Psychiatry誌(1 Apr, 2006)に載った研究では、統合失調症の陰性症状の改善が、グリシンを摂取したグループで見られ、プラセボグループでは見られませんでした。このことは、NMDA(N-メチル-D-アスパルテート)レセプター仲介神経伝達物質の促進は、統合失調症の神経弛緩薬抵抗性の陰性症状に対し、効果的治療法であることを示す可能性があることが、示唆されます。

Daniel C, Javitt博士らの研究によると、統合失調症の陰性症状の34%軽減は、グリシン療法の期間中に観察されました。また、Emmanuel Stip博士らの研究によると、グリシンとD-セリンは、統合失調症の陰性症状を改善するが、短期では、それらの患者の認知機能の低下、もしくは全体的な反応は改善は見られませんでした。また、Uriel Heresco-Levy博士らの研究によると、統合失調症の長年にわたる陰性症状の治療に、高投与のグリシンが効果があると報告されています。また、Robert T Harvey博士らの研究によると、統合失調症やアルコール依存症、痛みの新しい治療因子としてグリシントランスポーターに注目しています。

James Myhre博士らの研究によると、グリシンの短期のインパクト は、セロトニン値に関してであり、統合失調症を治療するというより、抗精神病薬での治療患者に有益であり、donzapine やrioperdalなど抗精神病薬のネガテイブな副作用を軽減するように思われます。更なる研究が期待されます。

グリシンは、脳において抑制性の神経伝達物質であり、そのことが、統合失調症の陰性症状の寛解に有益と考えられ、推奨摂取量は3g/日を超えないよう、4g/日より多い持続的摂取は、嘔吐、吐き気、呼吸障害が起こるとの報告もあります。

References

Daniel C .Javitt, et al. Adjunctive high-dose glycine in the treatment of schizophrenia. International Journal of Neuropsy chopharmacology. 2001,4, 385-391

James Myhre, et al. What is Glycine? Verywell health 2020/06/14

Amelioration of negative symptoms in schizophrenia  by glycine. Psychiatry 1 Apr 2006

Emmanuel Stip, et al. Glycine and D-serine improve the negative symptoms of schizophrenia . BMJ Journals. Vol 8 Issue3

Robert J. Harvey. Glycine transporters as novel therapeutic targets in schizophrenia, alcohol dependence and pain. Nature Reviews. 31 Oct 2013

Uriel Heresco-Levy, et al. Efficacy of high-dose glycine in the treatment of enduring negative symptoms of schizophrenia. JAMA Psychiatry. Jan 1999

J Semba . Glycine therapy of schizophrenia. PubMed. gov