最終回、追悼ギャランΣ連載。最後は、ドライブインプレッション編です。

ギャランΣハードトップが属するハイオーナーカークラスは、その売れ筋は「5ナンバーフルサイズ、6気筒、ハードトップ」でした。中でも6気筒というのは重要で、4気筒車では得られないスムーズさこそが、高級車たるゆえん、と言っても過言ではありませんでした。
当初ギャランΣのハードトップは、4気筒エンジンしか存在しませんでした。普及版はごく一般的な2バルブ、シングルカムのプレーンなエンジン類で、その中でターボやインジェクションなどで差別化を図っていました。唯一の例外として、シリウスDASH3x2という3バルブSOHCターボ(バルブタイミング・リフト機構付)という強力な4気筒エンジンが用意されており、VRという最上級グレードに搭載され、いわゆる6気筒エンジンのライバルたちのスペック競争に対抗していたのです。
そして後期型にマイナーチェンジされた際に、待望のマルチシリンダであるV6エンジンシリーズが登場しました。最終的にはデボネアなどと共通の3000ccのV6エンジンも用意され、ワイドラインナップでした。

6G71という型式の2000ccのV6エンジンは、ゴロゴロと豪快なアイドリング音を有するシングルカム、2バルブのエンジンです。ゴロゴロ音といっても、静粛性はかなり高く、回せば勇ましい6気筒サウンドを奏でます。エンジン横置きのFFということもあって、そもそも直6エンジンはどだい無理な話ですが、エンジン長の短いV6ならば搭載可能です。かなりエンジンルームはミッチリしています。

かっこいいインテークとサージタンク。V6 2000の文字がかっこいい。ライバルたちが、ターボやツインカム、4バルブなどを用意しスペックを競い合う中、シングルカムで2バルブ、たったの105馬力なんてガッカリスペックなのですが、どういうわけか力は十分。そりゃ爆発的なパワー感や、高回転域へ一気に突き抜ける回り方もしませんが、とにかくトルクフル。街乗りでは不便さを全く感じません。やや高速道路の登坂路で「もうちょっと馬力あるといいな~…」と思う程度です。燃費は、街乗りが8キロ前後、高速では14キロ程度走り、この手の6気筒の中では望外に燃費が優秀だと思います。ただし、先述の通り、上まで回ろうとするエンジンではなく、せいぜい4000rpmまでと言ったところ。ただし、回すと良い音するんですよ~、このエンジン。

ボンネット裏の警告文

電制スロットルなど「なにそれ?」の時代の車ですから、アクセル制御はワイア式です。2本あるのは、クルーズコントロール用と思われます。
●足回りは?
かなりグニュグニュのサスペンションで、乗り心地は本当に超一流なのですが、ハンドリングは最低クラス。ちょっとスピードを出して曲がろうものなら、物凄いロールとタイアのスキール音。この車に関しては、ローダウンサスペンションなどで少し硬めにしたかったところ。そうしたら、もっと評価は変わったかもしれません。
ちなみに、フロントはふつうのストラット独立ですが、リアサスはこの時代では珍しいト-ションビームです。
●ボディ剛性は?
これが意外にも、ボディ剛性が高い車です。特に段差では、サスペンションがよく動いているのを感じるほど。もっとも、昨今の軽自動車にも負けるレベルなので推して知るべしといったところですが、少なくとも、GX71や20ソアラよりは遥かに剛性の高いボディでした。
車内の静粛性も一流です。
●シフトフィーリングは?
この個体は5MT車でしたので、シフトフィーリングについても記しておきたいところ。操作は軽く、ギアも入りやすいのですが、この個体はリンケージがヘタってるのか、やたらと遊びが大きく、グニュグニュでした。おそらくストック状態であれば、もっとカチカチ決まるミッションだったと思います。
ギア比はかなりのハイギアードで、燃費を稼げます。ヒールアンドトウは、わりとしやすいペダル配置だったと記憶しています。
●視界は?
グラスエリアが割と広く、ボンネットも運転席から目視可能。取回しはしやすいボディ形状だったと思います。ただ、やや着座位置が低く、もう少し高いとよかったのになとは思います。かなりハイデッキでしたが、リアウインドウは大きいのでそれほど後方視界が悪い車ではありませんでした。ただし、やたらとでかいリアのヘッドレストが邪魔です。
●その他
オートエアコンは優秀。ガチャガチャいじる必要はありません。静粛性はさすが高級車で、ロードノイズ透過も少なく驚きます。パワーステアリングは、非扁平タイアに猛烈に軽いセッティングが悪さをして、グニュグニュで気持ち悪いフィーリングです。純正オーディオは操作性がイマイチ。ダイアル式のワイパやヘッドランプのスイッチなども使いやすいとは言い難いです。
■総評
80年代丸出しの魅力的なスタイル、高い静粛性、燃費と音が良いV6エンジン、広い室内…不満要素の少ない車だったと思います。故障すると新品部品が絶望的な点は気になりますが、そもそも誰も乗ってない車なので、人と違った車に乗りたいヲタの人にはオススメです。
しかし、唯一にして最大の欠点は、とにかく「運転していてちっとも面白くない」こと。もしこの車に乗って「なんて楽しい車なんだ!!」と思った人は、ちょっと童貞です。もっと楽しい車がいくらでもありますから(ダッシュターボ車なんかは面白い類の車なのかもしれませんが)。
しかし、そもそも運転を楽しむ類の車ではありませんし、この車をもって「運転していてちっとも面白くない」という感想は、お門違いなのかもしれませんね。
とにかくスペアパーツが入手できなかったので、将来に不安を感じ手放してしまいましたが、もっと長く乗ってみれば、意外な側面も垣間見れたかな?とは思います。もしまたこのギャランを手にする機会があるとすれば、サイクロンDASHのVRグレードや、前期の4気筒デジパネなどに乗ってみたいですね。おそらくほとんど現存していないかとは思いますが。
今をもっても、この車ほどお尻のかっこいい車は存在しないと、個人的に思います。たった1年ほどしか所有しません(できません)でしたが、良い思い出です。