ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

トンマッコルへようこそ

2012年03月13日 | ミュージカル・演劇
映画が好きで、元は戯曲だったというので、どんなだったのかな・・・と思っていたのですが、それが日韓演劇フェスティバルで日本語上演されると知って、観てきました。
劇団桟敷童子による上演です。
会場に行ったら、なんと終演後にオリジナルの脚本・演出(映画の演出は違う人です)のチャン・ジン氏と日本版の演出の東憲司さんの対談があるというではないですか。ラッキーでした。
座席は全席自由で整理番号順入場だったのですが、自由席だと最前列って皆敬遠するもんなんですね~(汗)

しかし、後でトークショーで知ったのですが、脚本が結構オリジナルから変更されていたんですね。オリジナルがどんなか知りたかったのでちょっとがっかり・・・
でも、実際観てみて、コンパクトにまとまっていて、むしろオリジナルよりもすっきりしていて良かったんじゃないかな、とオリジナル知らないながらも思いました。チャン・ジン作品はちょっと長くてだれる部分もあったりしますから・・・映画も前半ちょっと長すぎな感じでしたしね。
チャン・ジン氏も「今まで見た中で一番良かった」と言っていましたが、あながちリップサービスだけでもないかな、と思いました。
演出の東氏は、映画で「トンマッコル」を観て感動したことがあるそうで、その体験から、脚本を絞り込んで、物語の大事な部分を残してすっきりまとめることができたのかな、と思いました。
チャン・ジン氏も、「なんで自分はあんなに長くしたのかわからなくなった」と言ってました(笑)
ただ、カットされるにあたって笑えるシーンがかなり少なくなったらしく、そこはちょっと残念と言ってましたね。
(猪のシーンは映画オリジナルだそうです。後でトークショーで言ってました)

映画ではトンマッコルの住人は天使のように無邪気でどこかファンタジックなのに対して、戯曲の方はもっとリアルでシビアだと聞いていましたが、確かにもう少し人間くさい感じがありました。ヨイルが村長の隠し子だったり、村人たちも戦争やってることは知っていたり。
村長の母親も、映画だとただかわいい感じでしたが、戯曲ではもっと毒があるというか、ボケているのをいいことにやりたい放題?な感じで、映画とは大分違う感じでしたね。
でもスミスが意外と目立たないのは同じなんだなーとか(笑)
山の中の木々に囲まれたようなセットも、小さい舞台ながら印象的で良かったです。
ただ、劇団でやっているからでしょうが、人数の関係か、女性が男性役をやっていたり、若い人が老人をやっていたりしたのが、まあ舞台だったらありではあるんですが、やや違和感だったかなあ。
でも、久々に観て、恥ずかしいくらいおお泣きしてしまいました。やはり好き・・・というには辛い話ですが、いい作品だと思いました。
朝鮮戦争(韓国では韓国戦争と言うんですね)が韓国の人たちのように自分たちの歴史として刻み込まれているわけではないので、韓国の人たちが感じるのとはまた違うのでしょうが、それでも普遍的に人の心を打つものがある作品だと思います。
(と言っても、お正月に池上彰さんの現代史講座をテレビで見て朝鮮戦争の経過を知ってから観たので、よりわかりやすかったですけど。漢江の橋を落としたの実話だったんだ・・・とその時ショックを受けました・・・)
根源にあるヒューマニズムに心揺さぶられるんだろうなあと。民族がどうとか思想がどうとか、そういうのを超えたところで「人を殺すのはもう嫌だ」という、そういう普遍的なものが心を打つのだろうなあと思いました。

トークショーで、チャン・ジン氏にこの作品を作ることになったきっかけを聞いていました。
もともとこういう作品を作ろうと計画していたわけではなく、たまたま初演の会場のこけら落とし?の作品を作ることになっていたのに、全く書けなくて行き詰まり、車で国内をあちこち旅行していたところ、トンマッコルの舞台となった白山の麓の村にたどり着き、村の人々と酒を酌み交わしたりするうちに、トンマッコルの村のイメージが浮かび、2週間で書き上げたのだそうです。
だから、特に朝鮮戦争の話を書こうと思ったわけではなかったのですね。
ただ、トンマッコルのイメージから朝鮮戦争の話になったということは、日頃から朝鮮戦争に対するスタンスはあのようなものだったんだな、というのは想像できますね。実際トークショーで朝鮮戦争について聞かれたとき、「とても愚かなことだった」と言ってました。
トンマッコルを上演した頃は、韓国国内のいわゆる右翼団体から非難されたりしたそうです。

そんなわけで、思いがけずチャン・ジン氏の裏話も聞けて、久々にトンマッコルの世界に触れることもできて、良かったです。
久々にDVD観ようかな・・・と思いつつなかなか見る暇がないのですが(汗)
コメント
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