ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

ミス・サイゴン博多座千秋楽

2009年03月19日 | ミュージカル・演劇
あーやっと感想書ける・・・
わざわざ福岡まで行ってしまいました。ほのかさんの千秋楽が見たかったというのもありましたが、帝劇で見られなかったソニンキムが見てみたかったのもありました。
本当は橋本エンジニアももう一度見たかったし、できれば橋本エンジニアと坂健ジョンの組み合わせを見てみたかったんだけど、さすがにそこまでは選べず・・・
トップの写真はカーテンコールでゲットした花束。帝劇でも何度か拾ったことありますが、毎度のことですが誰が投げたのか不明・・・しかもいつも床に落ちたの拾ってるし(汗)
博多座は実は2回目でした。一度「モーツァルト!」を観に行ってます。
正直、地方まで観に行くといっても、せいぜい大阪あたりまでだよな・・・というのはあるんですが、その時は「また観たい」と思った時点でまだチケット発売になってなかったのが博多座だけだったんですよね。
あと、博多座って結構見やすい劇場だという評判もあったので・・・
以前は2階席でしたが、確かに舞台がそれほど遠くなく、観やすかったですね。
そして今回は1階の結構前の方の席でしたが、さらに観やすい!
傾斜が適度についているためか、前の方の人の頭がほとんど気にならないんですねー。劇場がわりと横長な感じなのもあって、舞台も近いし。
福岡は遠いけど、観に行く価値はあるかなーと思いました。でもやっぱり遠いですけどね・・・(汗)
で、本編の感想。
楽しみにしていたソニンキムは、確かにすごかったです。結構歌い方にクセがある感じの部分もありましたが、熱演でしたねー。キムそのものになりきっている感じでした。
最初のドリームランドで歌う場面、歌いだしから泣いてしまいました。ここは新妻聖子さんも泣けるんですが、端正で歌の上手い新妻キムさんとはまた違った哀しみを感じました。
役の解釈は、当然ですが新妻キムとも知念キムさんとも違っていて、面白かったです。(笹本玲奈さんだけ見てません・・・)
正直、Sun and Moonとかクリスと恋に落ちる場面はさほど心に残りませんでしたが(汗)このあたりは知念キムの解釈がすごく腑に落ちる感じで好きなんですが。
後半の母になってからの解釈、とくに「命をあげよう」の歌い方が、新妻キムも知念キムもとにかく「母」なんですが、ソニンキムは母として我が子を思う気持ちももちろん強いんですが、クリスを思い、クリスが助けに来てくれることを信じてすがってる感じも強くて、後の展開を知っていると非常に腑に落ちる感じがしました。
「命をあげよう」、久々にかなりボロ泣きしましたよ・・・
その前の、トゥイと再会する場面、最初とても嬉しそうな顔をしていて、いやなんで来たのか想像くらいつくだろ、と思うと嬉しい顔しすぎかなとは思うのですが(汗)、トゥイのこと、結婚することはできないけれど従兄弟として好きなんだろうなあ、と思わせて、これまた後の展開を考えるとちょっとウッと来ました・・・
トゥイを撃った後泣き叫ぶところはどのキムでも泣けますが、ここも激しくて良かったですね。ここでもボロ泣き・・・
ジョンと再会した後の展開では、母としてだけでなく、クリスをずっと待っていた気持ちの強さが、キムの行動をすごく腑に落ちるものにしていたかなと思いました。ホテルの部屋でエレンに「クリスの妻」と言われた時のショックを受けた様子が、Ma-Ann Dionisioさんに近いものがありましたね。今まで見た日本のキムの中では一番来ました。
今まで見た他のキムは、後半「母」としての思いの方が強くて、タムのために自分を犠牲にしたんだろうな、という感じなのですが、今回見たソニンキムは、クリスが迎えに来てくれることはないと知った絶望も強く感じさせて、なんかすごく腑に落ちたというか、なるほど、と思いました。
クリスと直接会えなかった悲劇、というのを、今回一番強く感じましたね。
これで4人の日本のキムを観ましたが、総合的には知念キムが一番好きかな・・・と思いつつ、ソニンキムの後半の激しさも捨てがたいなーという感じでした。良かったですよ。
他のキャストは初見の人はいなかったのですが。
市村エンジニアは、安心して観てられますねー。でも個人的には橋本エンジニアとか筧エンジニアが好きだったりしますが・・・(市村さん好きなんですけど)
特に橋本エンジニアの情けない感じが結構好きですね(笑)
クリスの藤岡正明さんは3回目でしたが、彼のクリスは非常に共感できるので、観ていてすごく素直に見られるのがいいなあと思います。クリスもかわいそう、と思えるのがいいですね。
ほのかさんのエレンは、ソニンキムが激しかったのもあって、受け手としての演技も良かったですね。
昔はI Still Believeがとにかく良いとおもってましたが(ってビデオとCDしか知らなかったけれど)、今回の公演ではキムと会ったあとに歌う「今彼女に会った」の方が揺さぶられますね。ほのかさんもいつも本当に泣いてるし。キムが激しいと、それだけ後のこの歌も良くなる気がします。
今回は、いつものような、崩れ落ちたり顔をおおったり、という動きの演技があまりなく、ただ立っているだけなのに心の葛藤が感じられるという、見事な演技でした・・・というか、もうエレンになりきっていたということかな。
エレンは一つ間違うと単なる偽善者になってしまう、本当に難しい役だと思うんですが、ほのかさんはもう役の解釈が完璧ですね。
本来はとても博愛主義であろう人が、夫を奪われたくはない、でもキムを憎めない、むしろできることなら救いたい、でも所詮はアメリカ人、本当のキムの苦しみまでは理解できず・・・というあたりが、嫌味なく自然に演じられていたのがすごいなあと。
歳の差夫婦も、見慣れたのかもはや全く気にならなくなりました(笑)
倒れたキムを観て背中を向けて、背中で泣いているのが好きだな・・・
岸ジョンは3回目。ジョンは前回最後に観た坂健ジョンが優しくてすごく気に入ったのですが、岸さんも役の解釈が完璧になってきていて、これまたとても共感できるジョンで良かったです。
ジョンは優しいのがツボなんですが(笑)キムに対してはもちろん、クリスに対しても。
今回の岸ジョン、キムにクリスが結婚していることを言い出せない、というあたりも優しさと誠実さにグッと来ました。
ホテルの部屋でのクリスの告白に、クリスの苦しみを理解して、一緒に悲しんでいるようなジョンの演技にもやられました。ここでキム寄りなだけでクリスに厳しいジョンだったりすると、「そもそもあんたのせいだろ」って言いたくなってしまう・・・(汗)
クリスとエレンがキムとタムをバンコクに置いて援助する、という決断に「甘すぎる」という場面も、クリスたちを責めるのではなく、ただキムを思いやってのことに思えて良かったですね。
ラストの悲しそうな表情も・・・
あ、ブイ・ドイも良かったです。歌が上手いのはもちろんなんですが、子供たちのために活動している、という優しく真摯な気持ちが伝わる演説だったと思います。3年の間にジョンは変わったんだな、というのが伝わった気がしました。
今回、そんなわけで、クリス、キム、エレン、ジョンと4人とも役の解釈が完璧で共感できるキャラクターになっていたので、4人が歌うホテルの場面が一番来ましたね。(キムはホテルの外にいるけれど)それぞれの思いが理解できて、それぞれがかわいそうで・・・
この作品、ストーリーだけ読むとなかなかひどい話だな・・・と思うし、アメリカ人が悪役だろ、という感じがしてしまいますが、プリンシパルの役の解釈がきちんとしていたら、素晴らしい作品になるんだなあとしみじみ思いました。正直、2004年の公演ではそのあたりが弱かったんですよね。キムはまあいいんですが、クリストとかエレンとかジョンとかが。
やはり長いこと公演して来た成果が出ているな、博多まではるばる観に来て良かった、と思いました。
あ、トゥイは結局全部泉見洋平さんでしたが(笑)泉見トゥイも成長しましたねー。
2004年の公演では、力みすぎで今イチ・・・と思っていたのですが、今回の公演、7月に見た時には、すばらしいトゥイになっていびっくりしたものでした。
今回の公演、最初の方で観た時は、かなりイッちゃってるトゥイって感じで(汗)明らかに心のバランス崩しちゃってる感じが怖かったですが、千秋楽に至って、すこしトーンダウンして、非常バランスの良いトゥイになっていたと思いました。
人民軍に囲まれた舞台中央で見栄を切るところ、最初のうちは薄笑いを浮かべていて怖かったんですが(汗)厳しい表情のままだったのでホッとしました。
悪夢のシーンも、一時期気持ちが入りすぎで、キムの見た悪夢じゃなくてトゥイ本人が生きているかのようでちょっとどうかなあ、と思ったことがあったんですが、今回は熱演ながらもちゃんと「悪夢の中の幽霊」という感じになっていて、とても良かったです。
泉見さんのトゥイも、単なる悪役ではなく、彼なりの愛情の強さなども感じさせて、存在感のあるキャラクターになっていましたね。だからこそ、キムがトゥイを殺したことに苦しむというのがまた納得できる感じで、良かったです。
というわけで、ロングランの千秋楽を飾るに相応しい、素晴らしい舞台を観ることができました。忙しい中わざわざ福岡まで行った甲斐はあったかな、と思います。
花束もゲットできたし(笑)

カーテンコールでは、千秋楽ということでキャストからの挨拶が。
アンサンブルから、リーダーの人と女性アンサンブルリーダー、ダンスキャプテンの3人、裏方で色々な役目を果たしたキャスト、などの皆さんが挨拶されました。
プリンシパルの挨拶では、初舞台のジジの菅谷真里絵さんがボロ泣きでしたね。ソニンさんもだったけど。
泉見さんはこの日誕生日ということで、市村さんが懐に隠し持っていた花束(どう見ても客席に投げるやつ(笑))を渡したりとか(笑)
最後14日連続出演だったほのかさんの挨拶は、意外と冷静というか、落ち着いたものでした。でも、カーテンコール最後の方は泣いてたように見えましたが。
岸さんは、「アンジョルラスを100回やって博多座で卒業した」と言っていて、そうか卒業なんだ・・・とちょっと悲しかったです(汗)岸アンジョルラスすごい好きだったんですよね・・・
ジョンは今回でなんと99回ということで、「このままじゃ卒業できないので、次の100回目をまたやりたい」とか言ってました。
藤岡正明さんは、クリスを理解したくてベトナム戦争のことなどかなり調べて、余計にわからなくなって、ずっとクリスを理解したい、近づきたいと思ってやってきた、というようなことを言ってました。そういう思いが、あの共感できるクリスを作ってたんだなあと思いました。
まだまだやっていきたい、って言ってましたね。
ソニンさんは、もう自分なんだかキムなんだかわからないくらいにキムと同化してしまって・・・と話していて、やっぱりこのくらい役に入り込まないとああいう演技はできないよな・・・と思いました。歌も演技もそこそこ上手いのに、この「一線」が超えられない人も多いですが、そのあたりは素晴らしかったと思います。
市村さんは、もうエンジニアはこれでやらせてもらえないかも・・・と思っていたら、スタッフ?に「足腰立たなくなるまでエンジニアやってください」と言われたそうで(笑)次にサイゴンがある時もまた市村エンジニアが見られそうですよ。って再演の方が決まってないのですが・・・
タム役の子たち3人も登場して、挨拶を・・・と言われてもさすがに小さすぎて(汗)
みいちゃんという女の子は、「たくさん拍手してくれてありがと」なんてかわいい発言してました(笑)
がーくんという男の子は、市村さんが耳元でささやく言葉をそのまま発言(笑)
でも、最後に「大きくなったらエンジニアになりたいです」と言わせようとしたら、後ろの藤岡さんと岸さんをちらっと見た後、自分の意思で「大きくなったらジョンになりたいです」と言って会場を沸かせてました。
もう一人のタムとリアルに同じ歳の3歳の子はさすがに喋れませんでしたが、大きくなったらドラゴンダンサーになりたいんだそうです(笑)
タム3人、舞台前に出されたはいいが、おじぎもせずに突っ立っているのでほのかさんとソニンさんがあわてておじぎさせに行って・・・なんて場面もありました(笑)
というわけで、千秋楽ならではのカーテンコールも楽しかったです。

昨年は帝劇で4回、セントルイスでも1回観てしまったというミス・サイゴンイヤーでしたが、その締めとしていい舞台が観られて良かったです。
セントルイスのプリンシパルのキャストも素晴らしかったですが、日本のカンパニーも、全員同じ人種が演じるというハンデがありながらも、素晴らしい舞台になっていたと思います。
ドラゴンダンサーはアメリカのカンパニーよりもずっとカッコ良かったですし(笑)
規模が大きいためになかなか再演も難しいと思いますが、またぜひ観てみたいですね。
コメント
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