弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

クスリ飲ませて 運転させりゃ 対向車線も 想定内

2021年01月30日 19時13分40秒 | 判決どどいつ
昨日の最高裁判決から。
司法試験に出そうな注目の最高裁判決が出た。
自動車運転者に睡眠導入剤を飲ませて事故死させようとし、対向車の運転手らにまで被害を及ぼした場合、そちらの関係でも殺人罪に問えるか。
一審の裁判員裁判による判決は、問えるとしたが、職業裁判官のみによる控訴審は、対向車との関係では殺意は認められないとして破棄差戻しにした。
上告審は、高裁判決の方を破棄して、一審判決を支持した。文字通り「想定の範囲内」の事態と言えるからだ。
刑事裁判官ではない私が言うのも何だが、やはり一審の方が正しいと思う。
罪刑法定主義は「まさかそんな行為が罪に問われるとは思わなかった」という場面でこそ発動されるべきもので、同じ犯罪の法的評価や量刑の場面で用いるものではなかろう。だからこそ、司法試験刑法の定番である錯誤論(いわゆる故意の個数を含む。)が展開されている。
このような場面は、いわゆる冤罪の問題とも到底言えない。