「バルタルサン」疑惑 (2014-06.12.)
製薬会社ノバルティスフャーマ社の降圧剤「バルタルサン」(商品名ディオバン)を巡る臨床試験疑惑が、刑事事件に発展した。
東京地検特捜部はノバルティス社、元社員白橋伸雄(63)を薬事法違反容疑で逮捕した。京都府立医大の臨床試験データーをバルタルサンに有利になるように改ざんし、論文に掲載させていた疑いが強まったためだ。今後に向けてはノバルテイ社の組織的な関与や、医師、大学側との関わりが焦点となる。
疑惑の根源は、他社製の降圧剤との比較試験に於いて、脳卒中予防などの効果が大きいかどうかの比較試験について、国内5大学が検証するものであり、ノバルティスは「効果あり」との論文を宣伝に多用し、バルタルサンは累計売上で、1兆2000億円を超す大ヒット薬に成ったのである。
ところが、5大学すべてで此の元社員が肩書を伏せたまま論文データー解析に関与していた事が発覚。各大学が調査に乗り出し、府立医大、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉大で、データー操作をされた疑いが判明した。ノバルティスは当時の社長らの決済を受けて5大学に計11億円を超す奨学寄付金を提供したのである。厚生労働省が設置した有識者検討会の調査では、関係者いずれもが、データー操作への関与を否定したため同省は1月に容疑者不詳のまま刑事告発に踏み切った。
常識的には元社員が個人の意思で操作をしたとは考えにくいが、複数の大学で、データー操作の疑いが発覚した事に疑惑を深めている。
人命に関わる薬剤の効果に金や利権が係わる裏事情には不正の無い事を常に望んで来たが、あらためて、この事件を切っ掛けに、徹底的な操作と制度の改革を見直すべきではないでしょうか。
(えびなたろう)