a little favorのlittleは、日本語の「ちょっと」とか「小さな」とか「ささやかな」と同じような意味で用いられる。実際、それはまったく「ちょっと」でも「小さな」で「ささやかな」お願いではなかったりする。
“Can I ask you a little favor? Lend me 2 million yen. I promise to pay you back someday.”
「ちょっとお願いがあります。200万円ほど貸していただけないでしょうか? いつか必ずお返ししますから」
このsomeday(いつか)とは一体いつのことか? これを明確に定義できる言語はまず存在しない。(2006/04/01)
prodigiousは、「巨大な, 莫大な」「感嘆すべき、驚異的な」。
“His novel achieved prodigious success worldwide.”
「彼の小説は世界中で驚異的な成功を収めた」(2023/10/12)
do byは「…に対して尽くす、…を遇する」。
“He didn't feel the company did right by him, so he decided to look for a new job.”
「彼は会社に正当に扱われていないと感じたので、新しい仕事を探すことにした」(2023/11/17)
scarcely(やっと、かろうじて)がcouldなどの「推量の助動詞」と比較級と合わせて使われる時には注意すること。
“There could scarcely be a better opportunity to showcase your talent than this upcoming audition.”
「今度のオーディション以上に、あなたの才能を披露するよい機会はあり得ない」(2023/07/09)
Man's youth is a wonderful thing: It is so full of anguish and of magic and he never comes to know it as it is, until it has gone from him forever. It is the thing he cannot bear to lose, it is the thing whose passing he watches with infinite sorrow and regret, it is the thing whose loss he must lament forever, and it is the thing whose loss he really welcomes with a sad and secret joy, the thing he would never willingly relive again, could it be restored to him by any magic. ―― Thomas Wolfe, Of Time and the River
人間の若さはすばらしい。たいへんな苦悩と魔法にあふれていて、自分から永遠に離れてしまうまで、人はその通りに理解できない。失うことが耐えられないものであり、自分から過ぎ去っていくのを測り知れない悲しみと後悔の念をもって見つめるものであり、その喪失を永遠に嘆き悲しむものであり、失うことを悲しみと密かな喜びをもって実際に受け入れるものであり、魔法をもってすれば再生が可能だとしても、ふたたびよみがえらせたいとは決して思わないものである。―― トマス・ウルフ『時と河について』
日本語の慣用句に「取りつく島がない」がある。さて、これはどんな英語にしたらよいだろう。
wouldn't (even) give someone the time of day(今何時かということさえ教えてくれない)という表現が使える。
共同事業をやらないかと彼にもちかけたが、取りつく島もない。
I approached him about the possibility of a joint venture, but he wouldn't even give me the time of day.
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」(富岡義勇)
“Don't take from me the power to spare or take the lives and property of the people.”(2023/05/01)
俺は俺の責務を全うする!! ここにいる者は誰も死なせない!!(煉獄杏寿郎)
“I will fulfill my duty!! I won’t let anyone here die!”(2020/12/31)
"Following to a courtesy call on Midori City’s mayor in March, I am paying an official visit to Kiryu City’smayor today."
「3月はみどり市の市長に表敬訪問したが、本日は桐生市の市長に表敬訪問する」(2023/09/29)
新旧どの号にも何か楽しめるものがある、と気づいたのだ。絶えず拡大を続けるマーベル・コミックのキャンバスにおいては、あるストーリーの細部が時に別のエピソードにつながる。(スーパーヒーロー・コミックでは誰も死なないのが定石だが、平たく言えば一度出てきたものは事実として何もなくならないということだ。マーベル・コミックに登場したどんなキャラクターや装置も、展開したどんな状況も、その後のほかの作者によってほかのストーリーで語り直される。10年、あるいは30年のちに、クリスタル・ザ・クリスタル・ウォリアー*1やアルカナ・ジョーンズ*2といったキャラクターや、リーダーが作り出したブレイン・ウェーブ・ブースター*3といった装置は、いつかきっとどこかのシリーズに再登場するだろうし、元ネタを知っている者はさらに楽しみが増すだろう。)
マーベル・コミックは「あるストーリーの細部が時に別のエピソードにつながる」ことで、どこまでも拡大し続ける。出てくるキャラクターも膨大で、当然日本では知られていないものもたくさんあるから、ここに示しただけでも*を付けたものには以下のような注が必要だ。
*1 クリスタル・ザ・クリスタル・ウォリアー(Crystar the Crystal Warrior) 1983年5月刊行に初登場。クリスタル王国の支配者で、クリスタルの創造物に変身する能力を持つ。クリスタルはマーベル・ユニバースの一部だったが、それほどの人気を得ることができなかった。
*2 アルカナ・ジョーンズ(Arcanna Jones) 1978年12月の『マーベル・プレミア』に初登場。強力な魔術師で、テレキネシス、テレパシー、魔法のエネルギーを使いこなし、スクワドロン・シュプリームやアベンジャーズほか多くのスーパーヒーロー・チームのメンバーだった。
*3 リーダーが作り出したブレイン・ウェーブ・ブースター リーダー(Leader)はハルクの宿敵。頭部は巨大で、驚異的に高いIQと超人的な知性を持つ。ブレイン・ウェーブ・ブースター(Brain-Wave Booster)を発明し、自身の知性と精神能力をさらに向上させて、人の心をコントロールしたり、自分の意識をほかの人に乗り移らせることができるようにしたりした。リーダーは1962年11月刊行の『テールズ・トゥ・アストニッシュ(驚くべき話)』に初登場、ブレイン・ウェーブ・ブースターは1964年12月刊行の同タイトルに登場。
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☆2 ヒット曲がどれもそうであるように、どこか違う 音楽評論家ロバート・クリストガウ(1942~ )の言葉を引用した。
アメリカ文化の成り立ちを詳細に追う1冊として、マーベル・ファン、アメコミ・ファンのみならず、多くの読者に手に取っていただけるものになると思う。
Douglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)
上杉隼人(うえすぎはやと)
編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)など多数(日英翻訳をあわせて90冊以上)。現在、2023年後半最大の話題書の1冊を鋭意翻訳中。
『ディズニー ヴィランズ タロット』に続いて、今度は……
『ディズニー ふしぎの国のアリス タロット』!
In 2022, Disney Villains Tarot Deck and Guidebook was released. This year, Disney Alice in Wonderland Tarot Deck and Guidebook is making its debut!
日本語版にはふしぎの国の住人たちの一言説明も!
Includes a short introduction for each character in Alice in Wonderland.
マッドハッターは風変わりなお茶会(マッド・ティーパーティー)を開催する。3月うさぎとは仲よしで 一緒にお茶を楽しんでいる。マッドハッターは白うさぎを追いかけるアリスをお茶会に誘う。
The Mad Hatter hosts an unusual event known as the 'Mad Tea Party,' where he enjoys tea with his close friend, the March Hare. He invites Alice to join them while she is in pursuit of the White Rabbit.
チェシャ猫はいたずら好きのふしぎなネコ。体はピンクとすみれ色のしま模様で、いつもニヤニヤ笑いを浮かべている。ふいに現れたり、ニヤニヤ笑いだけ残して消えたりして、アリスを混乱させる。
The mischievous Cheshire Cat is a peculiar cat with a pink and violet striped body, always wearing a grin. It appears and disappears suddenly, leaving Alice bewildered with its mischievous behavior.
女王はいじわるな性格で怒りっぽく、いつもいばっていて、すぐに「首をはねろ!」と叫びちらす。クロッケーの試合にアリスを誘うけれど、周りが気を使って女王に勝たせようとする。
The Queen of Hearts is an ill-tempered and bossy character who is quick to shout “Off with their heads!” She invites Alice to play croquet, but her subjects try to ensure that the Queen wins.
アリスは大きな木の下でお姉さんに本を読むように命じられるが、退屈してしまう。飼い猫のダイナを連れてお姉さんから離れていくと、白うさぎが大きな懐中時計を持って走っていくのを目にして、追いかける。
Under a big tree, Alice's sister is reading a book and encourages Alice to do the same. However, Alice quickly grows bored and leaves her sister to wander off with her pet cat, Dinah. While wandering, Alice spots a white rabbit running with a large pocket watch and finds herself unknowingly pursuing the rabbit.
トゥイードル・ディーとトゥイードル・ダムは陽気な双子の兄弟。白うさぎを追いかけてふしぎの国に迷い込んできてびっくりしているアリスの周りを飛び跳ねて、歌をうたって聞かせる。ふたりはアリスに「セイウチと大工」の話も聞かせる。
Tweedle Dee and Tweedle Dum are cheerful twin brothers who bounce around with Alice in Wonderland as she chases the White Rabbit. They entertain her by singing and sharing a story “The Walrus and the Carpenter.”
アリスは「私をお食べ」と書かれたクッキーを食べて突然体が大きくなる。そしてこの世界から出られないと泣き出して、涙の海を作り出す。
After eating a cookie with the words “Eat Me” written on it, Alice suddenly grows in size and fears she won't be able to leave this world. Overwhelmed with despair, she weeps, creating a sea of tears.

「永遠の英語学習者の仕事録」第28回
人間が生きる上での習慣――大江健三郎がもうひとつ残してくれたもの

編集者、翻訳者(英日、日英)、英文ライター・インタビュアー、英語・翻訳講師。桐生高校卒業、早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書にマーク・トウェーン『ハックルベリー・フィンの冒険』(上・下、講談社)、ジョリー・フレミング『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(文芸春秋)、ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます──山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)、マイク・バーフィールド『ようこそ! おしゃべり歴史博物館』(すばる舎)など多数(日英翻訳をあわせて80冊以上)。
『桐生タイムス』の連載エッセイ「永遠の英語学習者の仕事録」の第22回が同紙2023年1月29日号に掲載されました。
https://twitter.com/kiryutimes/status/1620315662307700736
https://kiryutimes.co.jp/uesugi/
『桐生タイムス』の連載も22回目。
https://kiryutimes.co.jp/column/uesugi/34761/
ダイバーシティがあたりまえになった今だから読みたい一冊 上杉隼人─永遠の英語学習者の仕事録【22】
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編集者で翻訳者としても活躍する上杉隼人さんが英文を交えながら、翻訳という仕事のおもしろさや奥深さなどを、エピソードとともに語ります。今回紹介する本は、『「普通」ってなんなのかな 自閉症の僕が案内するこの世界の歩き方』(ジョリー・フレミング、リリック・ウィニック 著 上杉隼人 訳)です。(毎月第4土曜掲載)
こちらからダウンロードできます。
https://kiryutimes.co.jp/wp/wp-content/uploads/20230128_uesugi_022.pdf
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