楽しかったかぼちゃんとの思い出から、なかなか抜け出せないもんた。
目をつむるとかぼちゃんの笑顔。
きらきらした大きな目。
人力車の後ろで嬉しそうに笑ってくれた、かぼちゃん。
でも、いつまでもめそめそしているわけにはいきません。
今日は、飯田の名水、さるくらの泉に来ました。
一人ぼっちで来たのは初めてでした。
ここ、さるくらの泉は、日本の名水100選に選ばれていて、
毎日、水を汲みに来る人が絶えません。
朝は、明るくなるとすぐから、夕方暗くなるまで、
行く時はいつでも人がいます。
お茶の水を探して、天竜川下流の水を飲むと、その美味しさに驚き、
源を探して、天竜川に注ぐ松川を遡り探し当てたのが、このさるくらの泉
だと云われる言い伝えは、広く、この地に住む人に知られています。
時々、ここで、お茶会も行われています。
ここが、さるくらの泉だよ。
もんたは、静かな、森の中に流れる、水の音と、鹿脅しの、かーん、かーんという
森に響く音を聞きながら、
夏の、かぼちゃんとの思い出に浸ります。
もう、秋。寂しさが増して来ました。
もんたは、目の前にある木の枝の上に何か動いているような気がして
じっと目を凝らしてみました。
何だろう?
びっくりしたのは、もんただけではありません。
その、小さい生き物、目をまん丸にして、もんたを見つめています。
そればかりではなく、他の木の枝には、違う小さな動物が・・・・。
もんたは、何だかわくわくして来ました。
「君たちは誰?」
「僕たちは森でいきている・・フクロウやみみずくや兎やきつね・・・の種類ではあるんだけどね・・」
「人の前には現れないから、みんな知らないんだよ。」
「ここ、さるくらの泉は、絶え間なく人が来るから、夕方しか出て来ないんだよ」
「何ていう名前?」
「もんたって言うの。よろしくね。」ともんたが言うと
「もんたくん、この水を飲んでみて!! ホントに美味しいんだよ」
と、泉の水の周りに集まって来て、口々に何か言っている。
「一緒に話したら分からないよ。飲んでみればいいんだね。」
もんたは、宝石のようにきらきら光りながら流れ落ちる
水を一口。
なんて、美味しいんだろう!!
(柔らかくて甘い水だなぁ)もんたは思いました。
最初は、怖がって近くに寄ってきてくれなかった、小さな動物達。
まだ、人世界の図鑑にも載せられていない、この子たちも
もんたが危険な生き物でない事はすぐに分かったらしく、
ほら、もう、お友達になりました。
もんたも、嬉しくてたまりません。
でも、夕方しか会えない、この友達。
もう、日が暮れて、見えなくなりそうです。
「今日は、もう遅いから、帰るね。又すぐ遊びに来るよ」
と、もんたが言うと
ちびちゃん達、泉の周りに勢ぞろい
ほんとに、ほんとに、又来てね。
小さいまん丸の目で、もんたを見上げます。
「うん。必ず来るからね」
ちびっこ動物。
この夕、もんたが見えなくなるまで、ずっと、見送ってくれました。