最近、腰の曲がったおばあちゃんを見る事が少なくなった。
80歳になっても90歳になっても腰も曲がらず矍鑠としているお年寄りが多くなった。
山の家のばあちゃんは、直角よりももっともっと腰が曲がって、
左手は左足の膝の上に置き、木の棒を杖にして歩いてくる。
小学校の一年生くらいの時だったか、本家に遊びに行った時もそうだった。
それよりずっと、ずっと前から腰が曲がっていたらしい。
それでも転んだ事などなく、そんな体で良く動く。
お百姓の事も、昔の事も、何にも知らない小さな子は
「何でそんなに腰が曲がっちゃったの?」と聞いたりした。
ばあちゃんは大正の初めの頃、わりと裕福な家からたくさんの長持ちに布団や着物や子どもの産着やなど、
たくさんの嫁入り道具を持って、この山の家に嫁いで来たんだって。
だけど、男の子4人と、女の子2人の子供に恵まれ、
この山の中で大勢の子供を育てて行くには、朝から晩まで働いて、働いて、働いて・・米を作り、
昭和に入ると戦争が続き、
毎日毎日、ばあちゃんの小さな背中で背負い上げた稲を、米搗き場まで背負って行って米を搗き、
又、背負って地主に年貢を納めに行き、
そんなふうに毎日毎日汗水流して働いて、
少しばかりの保有米で大勢の子どもたちを育てたんだって。
もともと150cmに満たないばあちゃんは、腰が曲がって110cmくらいしかなかった。。。