昨年、夏、7月初めー両親を連れて旅行しようと計画を立てた。
平成30年6月28日から10日ほど降り続いた雨は豪雨となり西日本を中心に、河川の氾濫、土砂災害、家屋浸水などによって多く死者、行方不明者などを含む被害を出し、
そのため、ほぼ西日本全域の高速道路が通行止めとなった。
旅行になどとても行ける日ではなかった。
しかも、計画したのは京都の海、京丹後と言われる丹後半島から姫路城を見て、和歌山県の高野山まで、まさに豪雨の中心に目的地があったのだ。
旅行の数日前、両親に新しい歩きやすい靴を買ってあげた。
実家に行くと数日前から玄関に新しい靴と二人の帽子がきれいに並べられていた。
まるで、遠足を楽しみにして眠る小学生、それもまだ初々しい一年生のようだ。
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出発の3日前には雨が降り出し、玄関の帽子も傘に変わっていた。
前日もひたひたと降り続く雨の音を聞きながら、数分おきにスマホで雲の動きを見ていたのを思い出す。
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家を出る朝には、中央道から北陸自動車道まで通行止めとなり、宿の宿泊費も振り込んであったのだけれど家を出る事すらできない状況で当日キャンセル。
それでも、事情が事情だけに・・という事で、ホテルの宿泊は日程を改めて泊まらせてもらえることになった。
夏が過ぎ、秋になり、冬は動けず、なかなか行く時間がとれないままに春になって、ふと考えると今年のGWは10連休、
きっとGWの頃にはどこの観光地へ行っても年寄りには辛いだけだろう、と思い、
思い切ってGWの前にもう一度このコースで旅行を計画した。
一日目は、福井県の敦賀に出て、海岸線を若狭湾に沿って走り京都に入り、伊根町の伊根の舟屋、経ヶ岬灯台を見て、
京丹後市の小天峡に宿泊予定。
とにかく山国を抜け、海の見える所まで行かないと・・・
福井県に入ると三方五湖の見えるサービスエリアでちょっと一息
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越前海岸にある越前岬からその日の目的地の一つである丹後半島の突先の経ヶ岬までをもって若狭湾を形成している。
その若狭湾に沿って小浜、舞鶴を過ぎ、丹後半島に入るとすぐに天橋立のある宮津を通った。
海岸線をのんびりと走ると、伊根の舟屋が近づいて来た。
この辺りの地域、全国的にも有数の降雪地帯であり、冬以外でも雨の多い地域であるらしく
この地域の言い伝えに「弁当忘れても傘忘れるな」という言葉があるらしい。
今思えば、
昨年の7月、一日でも旅行の日程が早かったら、もしかしたら取り返しのつかない事になっていたかもしれないと思いながら
春の穏やかな海を見る。
何でもない海岸風景も、山国に暮らす私たちには珍しく新鮮に目に飛び込んでくる。
雲のない青空を背にして咲く満開の桜、
海岸に何気なく植えられ、人知れず咲いている一本の若い桜を見ながら、
今日でよかった、今日が良かった・・・と改めて思う。
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人間の計画など自然の前にはあまりにも無力で、
人生の流れも然り、自然の流れの中に穏やかに身を任せた方がいい方向に向かっていると実感できる事が多い。
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こんな風景が見れたのだから・・・。
伊根町もこれから行く京丹後市も京都府にあり、京都という言葉の響きからはこの風景は想像できないなぁ・・と思いながら、
ちょうど緑色と青色の中間にあるような色の海を見る。
伊根の舟屋は、伊根湾に寄り添い立ち並んでいる民家で、
海岸に突き出したよう建築された建物は、船の収納庫の上に住居を備えたこの地区独特の伝統建造物だと説明された。
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伊根湾を取り囲むように立ち並ぶ舟屋の風景は独特で、映画やドラマのロケ地としても全国に知られているらしい。
国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
伊根町から178号線を丹後半島の先端まで行くと経ヶ岬灯台がある。
現在の灯台はコンクリート製だが、歴史的には木造や石造り煉瓦造り、鉄造りもあり、現存するものもある。
その一つ、白亜の灯台として有名な経ヶ岬灯台は明治期に建設された石造りの灯台として歴史的価値が高い。
車で行ける経ヶ岬の駐車場から辺りを見回すとこんもりした山の向こう側に真っ白な灯台が見える。
近くにいた地元の方が灯台まで歩いて行ける事を教えてくれた。
経ヶ岬灯台は海抜148mの断崖絶壁に建ち、一世紀以上もの間海の安全を守り続けていて近代化産業遺産群に認定されている。
教えてもらった細い灯台までの道を歩き始めてみると、石段や階段ばかりの山路ともいえる道が400m~500mくらい続いていて、約20分くらい上るみたいだ。
母はもちろん車の中で待っていることにして、父は・・・行くらしい。
何度も言っている事だけど94歳。
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この好奇心と気力には脱帽する。
若者ですら息を切らして上って行ったのに・・・・。
満開の桜のトンネルの向こうに真っ白な灯台が見えてきた。
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「足が弱くなったもんだ。やっとやっとで辿り着いた」と独り言を言いながら、父もゆっくり歩いて来た。
帰り道、ちょっと一休みしながら道下を見下ろすと絶壁の下には青い海。
京丹後市は山陰海洋ジオパークの一部なので、美しい地質遺産を含む自然公園でもあり珍しい造形の岩や地形が多く、
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丹後半島を海沿いに走ると波の浸食によってできた奇妙な岩が多いのに気づく。
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あちこちゆっくり遊び過ぎてこの日の宿のある小天橋に着いたのはもう夕方だった。