熨斗(のし)

のし(熨斗)について、趣味について、色々なことを綴っていきます

昔の話ーばあさんに連れられて。

2016-08-28 13:49:24 | スケッチ

(父や叔父から聞いた昭和初期の頃のお話です)

 

ある日、ばあさんが長峰の家に行くという。

長峰の家はじいさんの妹が嫁いだ家だった。

長峰の家は間沢川を越えて、まっすぐ急な松林をハアハア言いながら上り、

急な斜面を耕して作られた畑を越えると、ひょっこり現れてくるかやぶきの屋根の家で、

叔父さんはブリキ職人で柄杓ややかんを作っていて、

いつも鏝(こて)を熱し、はんだを溶かす臭いがしていた。

 

長峰のばあさんはややかすれ声で世間話が好きだった。

時々、お歯黒の真っ黒な歯を見せて大声で笑う。

長峰の家には「正」という兄と「松、竹、梅」という三姉妹の妹がいた。

ばあさんの用がすんで「さあ、帰るに!」と言うまでは、

シャボン玉を草の生えたかやぶきの屋根まで飛ばしたり、

鬼ごっこをしたりしてばあさんの用の終わるのを待ったものだが、

「さあ、帰るに。」って言ってからも、話好きのばあさん達の話は終わらず、

いつも待ちくたびれていた。

 


西岳(2398m)

2016-08-23 09:17:18 | 

八ヶ岳の西岳は編笠山のお隣で兄弟みたいな山ですが、比較的登山者は少ないような気がします。

富士見高原に登山口があります。

西岳から青年小屋に下り、編笠山を回って富士見高原に下りて来るのも楽しい。

 

登山口から15分くらいで不動清水があります。

夏の登山者にはありがたい御水です。

西岳登山道のほとんどは樹林帯で、ごつごつした岩場の多い八ヶ岳の中では変化が少ない山なので、

きっと単独で登る事が少ないのだと思うけれど、

この樹林帯には多くの生き物がいます。

山頂までは登山口から2時間半から3時間くらい。

いつもよりのんびり歩ける距離なので、この日は鳥の声を聴きながら森の植物を観察。

 

山頂直前のお花畑では、霧の中の岩陰で小さな高山植物が可憐に咲いていました。

 

お花畑から10分くらい、山頂に着きます。

 

山頂からはすぐ近くに編笠山が見えるのですが、この日は霧の中にぼんやりと浮かび上がっていました。

帰りは森の中、

昆虫やきのこ、鳥の追っかけをしながら遊び、

 

 

 

リスの食事の跡を見ながら、リスたちの昼食を想像したり、

  

アサギマダラを追っかけたりしていると、つい時間の経つのを忘れ、

登りよりも長い時間下りに費やしてしまいました。

 

 

 

 

 

 

 


昔の話ー狐火(最終回)

2016-08-21 08:04:09 | スケッチ

狐火に導かれてか・・

二丁の川を渡り、林道を歩き、隧道を越えると、家のある菖蒲ヶ沢のに入った。

山に木霊して父達が山に向かって叫んでいる声が聞こえてきた。

山の上の小さな家は大騒ぎになっていた。

父も、母も、妹たちも、みんな山の方を向いて大きな声で自分らの名前を呼んでいる。

汗をかき、最後の力を振り絞って家に着いた頃には、もう栗の事なんか忘れていた。

父に

「馬鹿じゃねえか、日の暮れるのも分からんか!みんな、心配するじゃぁねえか!!!」

と、こっぴどく怒られた。

母は安心したのか、ようやく夕飯の支度にとりかかり、

家族が遅い遅い夕飯にありついた時、ほっと胸をなでおろした。

 

冷たい布団の中に入っても、まだゆらゆらと真っ暗な林道でたき火をしている人が見えていた。

 

あれは狐火だったんだ!

80年経った今でも、二人は口を揃えて言う。