ある日の事、
少年のお母さんはその日、一日中留守でした。
僕は思いました。
(うまく歩けないよ・・・)
(もう、回し車にも乗れないかもしれない・・・)
その日はこうやんも学校からなかなか帰って来ません。
僕は、突然寒気を感じ、その場に倒れ込んだ。
そして、その後の事はあまりはっきり覚えていないけれど、
僕には、その、(やつ)が目の前に見えたのが分かった。
(ぼく・・もう戦えないよ・・・・)
僕は泣きそうだった。
でも奴は、ゆっくり歩いて来て、いつも寝ている時のように
僕の隣にぴったりと寄り添った。
何て大きくて、何てあったかいんだろう。
僕は少しずつ暖かくなった・・・・
でも、ぼんやりとした幸せはそんなに長くは続かなかった。
次第に眠くなって、その後の事は何も覚えていない。
男の子のお母さんが家に帰った時には、もう外は暗くなっていた。
次第に温かくなり、僕が、お腹が動き出したのを再び感じるまでの間、
恐らく数時間は意識がなかったんだろう。
僕は、誰かの手の中にいるみたいだった。
だんだん温かくなり、やっと目を開けると
こうやんが言った
「生きてるかも?!」
「でもまだ冷たいから電気あんかの上にでも寝かせた方がいいかもな。」
(生き返ったのかも・・・)そう思いながら、うっすら開けた目に
ぼんやりと見えたのは電気あんかの赤い布だった。
お腹が動き出すと、僕は何だか何か食べたくなった。
でもまだ雨に濡れたように体は冷たく、ぴくりとも動けない。
その時、「動いたよ、動いた」
「何か餌をあげないと・・・近くに撒いてみたら?」
こうやんとお母さんの声が聞こえた。
僕は精一杯立ち上がろうとしたけど、
よろめいて撒き散らしたひまわりの種の上に再び倒れ込んだ。
僕がもう一度目を覚ました時は、
たくさんのひまわりの種の上だった。
幸せだった。・・・全部僕のひまわりの種。
次の日から、僕らは新しい部屋に移った。
二階建てなんだ。
その日から、僕は一人でゆっくり眠れるようになった。
あいつが僕の家に来る前のように。
でも、僕の中では、奴はもう敵ではなかった。
友達になったんだ。ずっとそばにいてくれたから・・・。
僕はちっちゃい、でも、元気。
こんな幸せな時が幾日か続き、僕は気付いた。
あいつ・・・僕が寝てる時、僕の部屋からひまわりの種持って行くよね。
僕が10gなのに あいつは50gなんだ。
こんな事言ってはいけないけど、
太り過ぎだと思うーーー僕ら、ねずみだよ。
あしたにつづく