*右;朝日新聞2011年12月28日付。ベン:シャーンが描く久保山愛吉さん。
1930年代の世界大不況、1940年代の戦争の時代から1960年代に至る時代に生きたアメリカの画家ベン・シャーンは、ワタシの1960年代に気になる人でした。画家というよりクリエィターでしょう、社会の不条理に声を出した市民でしょう。
今、ベン・シャーン展をやっています。だからベン・シャーンの特集を組んだ芸術新潮1月号を買っていました。新聞も美術展評を載せます。NHKの番組・日曜美術館も、この間の日曜に<静かなるプロテスト>と扱っていました。
再放送があります。明日1月22日(日)夜8時~です。再放送を確認したくて、今朝、新聞の土曜版の週刊番組表をみました。二つの新聞の番組紹介のしかたの違いが少し面白いのです。
朝日新聞は、<静かなるプロテスト~反骨の画家ベン・シャーン>
日経新聞は、<核の恐怖を静かに訴えた画家・ベン・シャーン>
両紙は、いずれも12月28日付けの文化面で、ベン・シャーン展を紹介しています。日経は、<声なき声をすくい上げ>と見出しをつけて社会派リアリズム画家を紹介し、朝日は、1954年、第5福竜丸で水爆実験被ばくして死んだ久保山愛吉さんの絵を大きく扱っています。
フクシマ原発事故以前に計画されたようですが、それと同じ年に開かれることになった、この<ベン・シャーン展>と、福竜丸(ラッキー・ドラゴン丸)は、不思議な巡り合わせを感じます。
日本には、ヒロシマとナガサキだけでなく、第5福竜丸の被ばくもあったことを訴えます。
しかも、この絵の所有者は、フクシマ県立美術館というのです。
NHKの番組は、<ベン・シャーンの第五福竜丸>という絵本も紹介していました。
*この絵本を見たことはありません。ネットのアマゾンに載っている画像です。
ワタシ自身は、1960年代以来、ベン・シャーンで最も覚えているのは<サッコとヴァンゼッティ>事件を告発した一連の作品です。
*ベン・シャーンの絵<サッコとヴァンゼッティ>、手錠がかけられています。
1927年8月に、サッコとヴァンゼッティというふたりのイタリア系移民のアメリカ人が、無実ながら処刑された事件です。思想弾圧事件です。処刑当日、ニューヨークのユニオン・スクエアに集まった抗議の市民の中にいた石垣綾子さんが詳しく書かれています。
*(さらばわがアメリカ 石垣綾子著 三省堂、昭和47年発行)。
1970年代の初め、この事件を、ベン・シャーンの絵で知ります。ウッデイ・ガスリーのプロテスト・ソングで知ります。そして、サッコとヴァンゼッティ事件を描いたイタリア映画<SACCO &VANZETTI(邦題;死刑台のメロディー)>を観ます。主題歌は、ジョーン・バエズが歌っていました。
1977年、マサチュセッツ州知事は2人の無実を公式声明を出しました。当時の新聞を切り抜いたのですが、すぐに出てきません。
*ウッディ・ガスリーの<サッコとヴァンゼッティ>のLP(Forkways FH-5485)とCD(SF-CD-40060)。
*LPに入っているライナーノーツに、ベン・シャーンの<サッコとヴァンゼッティ>。
ベン・シャーン展、<ベン・シャーン クロスメディア・アーティストーー写真・絵画・グラフィック・アート展>は、今、2012年1月29日まで、葉山の神奈川県立美術館でやっています。行ってみたいのですが、ちょっと寒いなあ。
その後、名古屋、岡山と巡回し、6月3日から7月16日まで、福島県立美術館で開かれます。
ベン・シャーン展は、フクシマで観ることこそ、意味があるようにも思います。
春日部のウチから、葉山に行くのも、福島に行くのも同じ距離です。福島に行くことにします。
【おまけ】
*ベン・シャーンは、LPレコードのジャケットデザインもやっていて、いくつか展示されているようです。これは、フォーク・ミュージック・コンサートのポスターです。ピート・シーガーとウィーバーズ(Weavers)の名前がみえます。
*ウォーカー・エヴァンスが撮ったベン・シャーン一家(芸術新潮2012年1月号)
*芸術新潮のベン・シャーン特集で初めて知ったことに、ベン・シャーンの撮った写真があります。しかも、ウォーカー・エヴァンスの写真とそっくりなのです。エヴァンスから習ったとも書かれています。1970年代初めに、エヴァンスの写真集も2冊ほど買っているのです。そのことは、またにします。