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一週間ほど前(8月21,22日)、越後妻有アートトリエンナーレつまり越後妻有・大地ノ芸術祭・三年大祭(2000年から3年毎に開催。ことしで3回目)に行ってきました。7月23日~9月10日が開催期間です。早くから、行こう行こうと思いながら、やっとこさ、行ってきました。ものすごい数のモダン・アートの屋内外展開ということで、インターネットで調べても、どこへ行って、どんな風にまわったらいいのか。はっきりしないままに、息子の運転で愛車“Honda Airwave”は、上信越ハイウェイを走っていました。
ともかく、大元の事務局(総合案内)がありそうな十日町の“越後妻有交流館キナーレ”に行く。ここで、パスポート(3500円)を購入する。ガイドマップ(100円)を見ても、市役所から派遣されている職員と話しても、どこにいくべきなのかの問題は解決しない。3つか4つの市町村にわたって、360のアートが点在するのだ。
お昼に、名物“へぎそば”(小嶋屋総本店)を食べる。おそばについていた、“あさつき”という植物(!)の苦味と合わせて美味だった。ともかく、新聞やNHKで紹介されたものを訪ねてみよう。
まず、川西地区のナカゴ・グリーンパークへ。作品109“グリーンヴィラ”(たほ りつこ)で、火・水・農・藝・天神の象形文字を刻印した地上絵が美しい空間を作っている(写真2)。
作品111“光の館”(ジェームス・タレル)は、宿泊可能なアート。ただし、いつも予約でいっぱいらしい。就寝することになるお座敷の天井から空を見上げて、幻想的な光空間に身をおくことになるんだそうだ。10人ぐらいで貸切宿泊したい。お風呂もある。自炊もできる。
近くの節黒城跡キャンプ場にある3つのコテージも2000年出展のアート作品。宿泊も可能だ。むし暑い、草いきれの中を上り下りして、小川のあたりに出る。そこで涼しいオアシスのような作品112“越後妻有レインボー・ハット(関口恒男)に出合う。作者としばし立ち話。アフリカ、インドを放浪し、ワラ小屋空間のイメージができた。周辺の浅い水中にカガミを置き、反射が虹の光となって、さしこむ。涼しい風が吹き込む作品。
田んぼの中の農協(ライスセンター)にある、作品“アース・ライス/大地の米”(塩澤徳子)は、テレビで紹介された。お米で作った立体世界地図だ。お米の色あいが真実の世界の色を感じさせてくれる。どうしてだろう(写真3)。
それから信濃川の対岸に渡って、車を山中に入れる。山田舎の細道をぐんぐん登っていって、ある古い民家がアートに改装されていた。名前はうぶすなの家(写真4)。陶芸グループの展示が3つ4つ。モダンな茶室も作られていた。
1日目の終わりに十日町の町中に戻る。あるお宮の境内に、作品82“妻有の家”(レアンドロ・エルリッヒ)があった。はしゃぐ子どもたちも一緒にする、じつに愉快な作品(写真5)。
宿泊は、松之山温泉“ひなの宿・千歳”。どっぷりと温泉の一夜。
翌、早朝散歩をかねて、宿から30分かけて上り、作品322“夢の家”(マリーナ・アブラモヴィッチ)へ。ここもまた、廃屋アート作品。宿泊も可能。その日も宿泊中で、周りを歩く。外から見るだけなら、どこにでもある廃屋だ。
さらに、雨模様の中をかなり走らせて、松代の西の端の山中に、作品289“脱皮する家”(日本大学芸術学部彫刻コース有志)。20日のNHK日曜美術館で紹介されて、家人が一番関心を寄せていた作品。廃屋の床板・柱・棟木・・・・あらゆる所を、彫刻刀で、彫っているのである。みんな同じ方向に。その結果、家全体が不思議な雰囲気を生んでいるのだ。指導した鞍掛純一さんと立ち話。“出来上がった結果は予想・着想どおりでしたか?”と私。“そうですよ”と、鞍掛さん。そうならば、すごい。アーチストなんだな、と思った(写真6)。
このあたりは、どこを見ても棚田、棚田。棚田の撮影ポイントという看板もあった。小雨で深い緑の棚田の中に、作品288“風のスクリーン”(杉浦康益)はあった。棚田の風景によくマッチしていた。
ホクホク線まつだい駅前には、作品251“花咲ける妻有”(草間彌生)。草間さんのいつもの水玉の巨大な花。豪雪の中にたくましく咲き続ける花だそうだ。駅前には、“まつだい雪国農耕文化村センター(農舞台)”があって、センターの内外に、数多くの作品がある。そこで食事をしながら、ガラス越しに、作品249“棚田”(イリア&エミリア・カバコフ)を見る(写真7)。
<写真7>
もういいか、帰ろう、と思いながらも、テレビ紹介されたブランコの家に行きたいと、今度は北へ。確かに、過疎になっていくのだろうなと思わせる山の中に、どんどん入っていく。作品216“TIRAMI SU3持ち上げてー行ったり来たり”(マーリア・ヴィルッカラ)。私らが育った岡山県後月郡の田舎の家と同じ。何にもしないのに、それがアート。作品217“BankART妻有”(MIKAN+BankART1929)は、庭に湯をためて、若者の遊び。
これが、ほんとに最後。私が行きたいと思っていた作品58“こころの花―あの頃へ”(菊池歩)。里山をしばらく歩き、突然、緑の下草に、むらさきや白の小さなはなの群生。里びとたちも協力して作ったビーズの花だ。雨上がりのしっとりした雰囲気の作品だった(写真1、8)。
パスポートの裏に、押したスタンプは、1泊2日で34個。全展示の1/10にすぎない。それでも、いい気持ちが残った。これを企画・運営している地域の人たちの心意気に感動する。市町村合併もあって、よくわからないが、その地の行政と職員のモチベーションの高さに敬意を表したい。そして、見てまわるより、やはり出展参加することにこそ意味がある。若いアーティストにそう思わせるイベントのように思った。
次回までに、3年あるからやってみないか、と声をかけてみようと思っていた。