情報理論のシャノンの定理を同時期に日本人研究者も証明していた(2008.1.14)

2008-01-14 23:49:59 | Weblog

*右;シャノン;コミュニケーションの数学的理論(長谷川、井上訳)明治図書、1969年5月発行。左;原著、Mathematical Theory of Communication (Univercity of Illinois Press) 第1版は1949年発行。

今日は、このブログにふさわしくないかもしれませんが、なんと情報工学の話題なのです。

毎朝、新聞の死亡記事を軽く眼をとおします。4,5日前(1月10日)に、<染谷 勲さん=元NEC常務。12月31日、急性呼吸不全で死去、92歳。葬儀は近親者で済ませた。喪主は・・・、連絡先はNEC・・・>と、ごく一般的な書き方の死亡記事がありました。
日経はこれで終わりでしたが、朝日には、ほんの少し追加があったのです。<アナログ信号をデジタル化する情報技術の基礎定理「標本化定理」を、米国のシャノンと同時期に独立に証明した> と。“えっ”と思ったのです。
ネットで、他の新聞を調べてみたのですが、<追加>しているのは、朝日だけのようです。さすが、朝日です。

*朝日新聞 2008年1月10日付

シャノン(クロード E シャノン;Claude Elwood Shanon)は、情報工学を勉強してきた者、あるいは関心のある者には、知らない人はいない程の、情報理論の考案者、大先駆者です。

私も30年ほど前に、シャノンの情報理論を本気に読んでいた時代があります。

 *7,8年前に、埼玉県立久喜図書館で廃棄されたシャノンの本を拾ってきました。この古典的名著が捨てられるのはたまらなかった。だから、わが家には2冊あります。

いくつかの<シャノンの定理>が知られています。
そのシャノンの定理のひとつ、標本化定理を、シャノンと同時期に、日本人が証明していたというのです。知らなかったのです。

ネットで調べると、<標本化定理は1928年にハリー・ナイキスト(Harry Nyquist)によって予想され、1949年にクロード・E・シャノン(Claude E. Shannon)と日本の染谷勲によってそれぞれ独立に証明された>と出てきました。

まもなく、今年2008年2月 “画像電子ハンドブック”が発行、発売されます。私は、画像電子年表を担当しています。<ここにあります>
画像電子ハンドブック(1993年版)も担当しました。つまり、ざっと20年間以上、画像技術史、情報技術史に関わっていたことにもなります。シャノンのことを書きながら、日本の染谷勲に触れていないのです。

情報技術が欧米を中心に発展したことは事実ですが、日本にも発展に寄与した研究者がいたのです。
やはり欧米の学会などでの積極的な発表の有無が重要になるのでしょう。

日々、情報研究室で励んでいる若い研究者さん、積極的に、欧米の学会に発表していくことも必要なのですよ、<まず、英語・・・・かな、余裕ができたら、英語でしょうか>

   【おまけ】
*この染谷さんのことを、ネットで調べようと検索していたら、慶応義塾大学の足立研究室のブログ(2007年5月29日)にヒットしました。<ここにあります>

*染谷 勲さん著 波形伝送 (足立研ブログから)。公立図書館では、とっくに廃棄しているでしょう。信州大学工学部の図書館、あそこには、ありそうな気がします。

*<ディジタル信号処理の基本である「サンプリング定理」は1949年に米国ベル研のシャノンと電電公社(現NTT)の染谷によって独立に提案された。染谷は「波形傳送」という本の中でこの定理を発表した>と、足立先生が、<著書「MATLABによるディジタル信号とシステム」(東京電機大学出版局,2002)でサンプリング定理誕生のエピソードを紹介したら、読者から,「染谷勲著:波形傳送」(昭和24年10月発行、390円)が突然送られてきた。送っていただいた方は電電公社に勤務されていた技術者で,退職後,この貴重な本をどこかに寄贈しようと思っていたところ,本を読んで慶應義塾大学 足立研究室に寄贈することに決めたとのことであった>

*私は、こういうお話が大好きなのです。私も蔵書というほどでもありませんが、本の山の一冊でも、こんな風に、あとから来る人に役立てることができたら至上の喜びなのです。


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9 コメント

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こんにちは (fuku)
2008-02-17 02:40:36
こういう話は本当に興奮しますよね。
シャノンの作った情報理論の核をなすものに相互情報量というのがあります。しかし、この量のことを本当に理解できている(=直観的に説明できている)資料はほぼ皆無だというのもなかなかいい話題なんです。
相互情報量の直観的な説明とは、シャノンが相互情報量を作り出したアイデアそのものにせまるということと同じことです。
相互情報量についての直観的な説明をのせているホームページを宣伝いたします。

http://kirin5.hp.infoseek.co.jp/
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クロード・E・シャノン (f (fukuさんへ))
2008-02-18 13:42:18
読ませてもらいましたよ。不思議なブログですね。

(f)
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ありがとうございます。 (fuku)
2008-02-18 14:10:50
酔った勢いで大変に生意気な投稿をしてしまい、後悔していましたが、読んでくれるとは思いませんでした。思いがけず嬉しかったです。有難うございました。ブログこれからも楽しみに拝見させていただきます。でわまたです。
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今後ともよろしく・・・ (f (fukuさんへ))
2008-02-19 08:11:46
ネットワークという言葉、私には、そもそもハード用語から接してきました。この頃、ネットワークする(ネットワーキング)とか、このブログはご近所連絡用が目的ですが、時々脱線しています。
シャノンの定理にコメントいただいて、勇気100倍で、TCP-IPとか・・・インターネットのひろがりはすごいですね。時々、のぞいて下さい。
(f)
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たのしいですね (fuku)
2008-02-19 15:51:16
情報理論以外にも楽しげな話題が豊富でうらやましいです。時々のぞきにいきますよ~

似たような友達で時々(本当に時々)やりとりのある友達がいます。

情報理論の参考になる友達(あと音楽も)
http://www.yobology.info/index.htm
(http://www.yobology.info/sato/Jukebox.htm)

ブログ作成を手伝ってくれた友達
http://www.dotstars.org/

なんだかあつかましい感じですが他意はなく、読み物のひとつとなれば幸いです・・・
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Unknown (1/2f)
2011-04-30 20:59:53
ずいぶん昔のことですが、電気工学ハンドブックだか、電子情報通信ハンドブックで日本の学会が、シャノンの定理をシャノン=染谷の定理と呼ぶことにしようと提唱したが、受け入れられなかったというような記述を読んだことあります。残念です。
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Unknown (f(1/2fさんへ))
2011-05-01 08:01:41
目にとめて下さってありがとうございます。
もっと、ちゃんと書かれている人もいらっしゃるでしょう。
(f)
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染谷勲が3年早かったのでは? (J. v. ナウマン)
2011-06-01 13:39:23
3年前にこちらのブログを拝見して、以後、シャノンの旧訳、筑摩学芸文庫での新訳、そしてIEEEが出した論文集も図書館で一部読みました。

その後、電子情報通信学会の昭和21年3月の学会誌を見ていたら、なんと染谷勲さんの「波形伝送理論」が掲載されているではありませんか。

すると染谷さんのほうが3年シャノンより早かったことになります。

これはいったいどういうことかと頭を悩ませているところです。
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波形伝送理論 (f(Jv ナウマンさんへ))
2011-06-01 23:53:56
コメントありがとうございます。
昭和21年3月ですか、
電子情報通信学会誌でなく、電気通信学会誌、いや
まだ電気学会だったのでしょうか。
どこかに書かれたらいかがでしょう。
(f)
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