「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

BPDの人の身体接触欲求 (1)

2008年08月15日 21時54分16秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) に、

 BPDの人の 身体接触欲求について述べられています。

 ボーダーの人は 治療者や身近な人に対して、

 身体接触欲求を訴える 場合があるといいます。

 心子も 主治医に陽性転移を起こしたとき、それがありました。

 身体接触欲求は特に 女性に多く見られるそうです。

 BPDの身体接触欲求は、

 発達早期の依存欲求が 満たされなかったことによると 考えられるでしょう。

 身体接触欲求の背景には、患者の内的状況があります。

 彼らは孤独や空虚感に 苦しめられているのです。

 空虚感は 内的な欠損感が問題です。

 「抱いてほしい」 と訴える患者には、

 次のような 対人関係の特徴が あるということです。

・対人関係で 不信感や被害念慮を抱きやすいが、強く対象を求める。

・周囲への訴えや要求が 強烈で切実。

・対人関係が不安定で、安定した親子関係や 友人関係の体験がない。
 

 接触感覚のなかでは、性的な感覚が 特に問題になるでしょう。

 性的感覚は自己の喪失、自己の感覚の危機を もたらす可能性があります。

 身体接触欲求、空虚感を満たすために 行なわれる性的乱脈は、

 プラスの効果を 生じにくいものです。

 苦しみを一時的に 棚上げにする以上の 効果はありません。

 発達論的には、身体接触は自立の停滞を 意味することがあります。

 母親への接触欲求が 幼児の自立の 反動となる場合です。
 

 接触体験は、自らの皮膚 (外界との境界) を 感じることによって、

 自他の境界や 自己の内面を再確認する 効果が期待できます。

 反対に、相手から 自他の境界を侵害される 恐れもあります。

 特に 境界があいまいな BPDの人の場合、

 接触体験によって 自他境界が不明確になり、

 自分が見失われる恐怖が 起きやすくなります。

 身体接触に対応するには、とりわけ慎重さが求められます。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55544581.html

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕