のだそうで、
夏だし、扇子を持ちたいなと思って七条から地図を見て歩き、お店を探した。
京阪七条、三十三間堂前のバス停あたりから歩いて10分くらい、
豊国神社近く…
のはず…のれんには「風香扇」って書いてあるけど、
電気消えてるし、
確かに古い建物だけどなんかお店の前の雰囲気も老舗の扇子屋って感じじゃない…
お店というより、工房って感じだった。
パンフレットに載ってる店内と様子があまりに違うので、きっと別に店舗があるのだろうと、一度お店の前を通り過ぎて探付近をした。
でもやはり「風香扇」という名前がでているのはここしかなく、
おそるおそる引き戸を開けて、中にいる人影に声をかけてみた。
「すみません、お店やってますか?」
…
返事がない。
店の奥に人影が見えるのに…
「すみませーん」
「すみませーん、お店やってますかぁ?」
三度目でようやく気付いて貰えた。
「はい、はい、やってます。耳が遠いもんでねぇ」
と言いながら白髪で背中の丸い小さなおばあちゃんがパチ、パチ、と電気を点けていく。
「電気消えてたからお店やってないのかと思いました」
「電気つけてると暑いから、店に私ひとりしかおらんし。昔はこの辺りは扇子の店がたくさんあったんや。せやけど、今は職人さんがみな死んで、今残ってるのはうちだけや。死にかけのおばあさんとおじいさんでこうして店番してるんです」
と、今年88歳になるおばあちゃんは笑顔で言った。
おばあちゃん…死にかけって!
とりあえず電気点いてないとお客さんお店休みだと思って入って来ないよぉ。
お店番してるんじゃ…
のっけから面白かった。
「あんた、京都の人?どこから来はったん?」
「埼玉です。このお店がパンフレットに載ってたのでそれを見て来ました」
「ああ、ぎょうさん載せとる、雑誌もテレビも取材にくるわ」
なのに、どぉしてそんなにテキトーなんだ…
「私は扇子をもったことがないので、選びにきました」
「そう、せやったら好きなように見て、気に入ったのがあったらこうていきなさい。なければ今日はみるだけにして帰ったらええ」
「はい」
そう答えて広げて陳列してある扇を触ってみた。
「そういうのはな、見て選ぶもんや」
そういわれて手にしていた扇子の値段を見ると…
15000円だった。
「持つのがはじめてやったらな、うちで一番安いんは3500くらいのからあるから、気に入ったのいったらそれつこうて、
またしばらく使ったらしたらこういうのがいいってでてくるから、そしたらまた来て選んだらいい。
今は100円均一だってあるしなぁ」
と言いながら、おばあちゃんは2500~3500円くらいの扇を広げてみせてくれた。
マナー違反ですみません。
おばあちゃんは扇子の目についた図柄を説明してくれた。
狐の嫁入りだとか、呉服屋さんが着物をしつらえて余った生地を持ってきて作ったものだとか、
外国人がハンカチを扇子にしてくれと持ってきた布で作ったものだとか…
これはどんな人が選んだとか、
祇園祭用に注文があって作ったものだとか…
このお店は、ハンカチや扇子にして欲しい生地を持っていったり、名前を入れたり、好きな図柄を指定したり…
色々相談にのってくれる。
そして修理もしてくれる。
「あんたな、ほかしたらあかんよ。送ってくるんだよ。安いのでも紙や生地張り替えたら80年はもつ。あんたが生きてる間使えるよ」
そんな中、私は一本だけ残っていた七夕の図柄の扇子と扇子入れを買った。
祇園祭用にしつらえたピンクの和紙に花手鞠の透かしが入る扇子も、
「それは京都らしくてええ」
おばあちゃんも言うように、魅力的だったのだけど…
(七夕の扇子も)「あんたにはもったいない、まず一本にしときや」
と諭された。
「大切に使うんやで、またこれ持ってきて違うの張り替えてつこうてもええやろ」
会計中、ちらっと時計をみると14:50だった。
そうこうしてるうちに、カップルがお店に入ってきた。
「おばあちゃんありがとう、元気でね。また来ます」
そう言って…バスで京都駅に向かい、ひかりに間に合って
今に至るのです。
ちなみに私が買った扇子はおばあちゃんが息子さんに電話で確認して6000円、麻布が張られたの扇子入れは1500円。
やっぱり心に留まったのはこれでした。
夜空のダークグレーに、
銀の四角い形が二つ織り姫と彦星で、それを結ぶ銀の線が赤い糸、その間にちりばめられた小さい星が天の川…
という、ロマンチックな夏の扇子です。
もし京都に訪れたら、時間があったら寄ってみて下さい。
楽しいおばあちゃんと、個性豊かな扇子が待ってます。
今はおばあちゃんの息子さんが三代目で扇子の専門店です。
いやぁ、いい旅でした。
夏だし、扇子を持ちたいなと思って七条から地図を見て歩き、お店を探した。
京阪七条、三十三間堂前のバス停あたりから歩いて10分くらい、
豊国神社近く…
のはず…のれんには「風香扇」って書いてあるけど、
電気消えてるし、
確かに古い建物だけどなんかお店の前の雰囲気も老舗の扇子屋って感じじゃない…
お店というより、工房って感じだった。
パンフレットに載ってる店内と様子があまりに違うので、きっと別に店舗があるのだろうと、一度お店の前を通り過ぎて探付近をした。
でもやはり「風香扇」という名前がでているのはここしかなく、
おそるおそる引き戸を開けて、中にいる人影に声をかけてみた。
「すみません、お店やってますか?」
…
返事がない。
店の奥に人影が見えるのに…
「すみませーん」
「すみませーん、お店やってますかぁ?」
三度目でようやく気付いて貰えた。
「はい、はい、やってます。耳が遠いもんでねぇ」
と言いながら白髪で背中の丸い小さなおばあちゃんがパチ、パチ、と電気を点けていく。
「電気消えてたからお店やってないのかと思いました」
「電気つけてると暑いから、店に私ひとりしかおらんし。昔はこの辺りは扇子の店がたくさんあったんや。せやけど、今は職人さんがみな死んで、今残ってるのはうちだけや。死にかけのおばあさんとおじいさんでこうして店番してるんです」
と、今年88歳になるおばあちゃんは笑顔で言った。
おばあちゃん…死にかけって!
とりあえず電気点いてないとお客さんお店休みだと思って入って来ないよぉ。
お店番してるんじゃ…
のっけから面白かった。
「あんた、京都の人?どこから来はったん?」
「埼玉です。このお店がパンフレットに載ってたのでそれを見て来ました」
「ああ、ぎょうさん載せとる、雑誌もテレビも取材にくるわ」
なのに、どぉしてそんなにテキトーなんだ…
「私は扇子をもったことがないので、選びにきました」
「そう、せやったら好きなように見て、気に入ったのがあったらこうていきなさい。なければ今日はみるだけにして帰ったらええ」
「はい」
そう答えて広げて陳列してある扇を触ってみた。
「そういうのはな、見て選ぶもんや」
そういわれて手にしていた扇子の値段を見ると…
15000円だった。
「持つのがはじめてやったらな、うちで一番安いんは3500くらいのからあるから、気に入ったのいったらそれつこうて、
またしばらく使ったらしたらこういうのがいいってでてくるから、そしたらまた来て選んだらいい。
今は100円均一だってあるしなぁ」
と言いながら、おばあちゃんは2500~3500円くらいの扇を広げてみせてくれた。
マナー違反ですみません。
おばあちゃんは扇子の目についた図柄を説明してくれた。
狐の嫁入りだとか、呉服屋さんが着物をしつらえて余った生地を持ってきて作ったものだとか、
外国人がハンカチを扇子にしてくれと持ってきた布で作ったものだとか…
これはどんな人が選んだとか、
祇園祭用に注文があって作ったものだとか…
このお店は、ハンカチや扇子にして欲しい生地を持っていったり、名前を入れたり、好きな図柄を指定したり…
色々相談にのってくれる。
そして修理もしてくれる。
「あんたな、ほかしたらあかんよ。送ってくるんだよ。安いのでも紙や生地張り替えたら80年はもつ。あんたが生きてる間使えるよ」
そんな中、私は一本だけ残っていた七夕の図柄の扇子と扇子入れを買った。
祇園祭用にしつらえたピンクの和紙に花手鞠の透かしが入る扇子も、
「それは京都らしくてええ」
おばあちゃんも言うように、魅力的だったのだけど…
(七夕の扇子も)「あんたにはもったいない、まず一本にしときや」
と諭された。
「大切に使うんやで、またこれ持ってきて違うの張り替えてつこうてもええやろ」
会計中、ちらっと時計をみると14:50だった。
そうこうしてるうちに、カップルがお店に入ってきた。
「おばあちゃんありがとう、元気でね。また来ます」
そう言って…バスで京都駅に向かい、ひかりに間に合って
今に至るのです。
ちなみに私が買った扇子はおばあちゃんが息子さんに電話で確認して6000円、麻布が張られたの扇子入れは1500円。
やっぱり心に留まったのはこれでした。
夜空のダークグレーに、
銀の四角い形が二つ織り姫と彦星で、それを結ぶ銀の線が赤い糸、その間にちりばめられた小さい星が天の川…
という、ロマンチックな夏の扇子です。
もし京都に訪れたら、時間があったら寄ってみて下さい。
楽しいおばあちゃんと、個性豊かな扇子が待ってます。
今はおばあちゃんの息子さんが三代目で扇子の専門店です。
いやぁ、いい旅でした。