先週末から体調が悪かったのだけれど、単なる風邪だと思っていた。
2~3日で自然治癒するさと高をくくっていたら、咳がとまらなくなった。
水曜、木曜あたりは咳がひどくて夜中に目が覚め、殆ど眠れなかった。
たんも黄色っぽく、よくない予感がした。
ちょっとおかしいな…と思い、家にあった『家庭のお医者さん』なる本を開いて自分の症状をチャートに当てはめて追っていくと…急性気管支炎のところに行き当たった。
大きな病気をしたことのない自分の健康状態に一抹の不安を抱きながら居間へいくと、ぐうたら寝転がってテレビを見ている父がいた。「咳がとまらないんだけど、ここでタバコ吸うのやめてよ」というと「は~いはいはい」と適当に返されたので一人、哀しくなっていた。
でもその後すぐに、私が本当に咳込んでいる様子を見て父は不安になったのか、急に真面目な顔で「おい、本当に咳がとまらないのか、病院にいったほうがいいぞ。午前中病院へってから会社にいけよ、だめだとは言わないだろうから」なんて言った。
そうそう、いつもそうやって優しくしてくれればいいのにね。一応、娘なんだから。
そして20日の木曜日、職場の上司から許可をもらって午前中に病院へ行った。
好都合なことに、現場から徒歩2分の場所に内科のお医者さんがあったのだ。
正確には病院ではなく診療所で、『市民が推薦する信頼のできるお医者さん』という市民のアンケートに基づいて作られた、良いお医者さんリストの冊子に載っていた。ちなみに私の通っている歯科医もこの本に載っているお医者さんで、相当遠くに引っ越さない限り、ここに通うのだと思うほど頼りにしている歯科医である。
初めてかかる内科医は現場から近かったので、診療所の門の前は以前から頻繁に通っていた。全然、診療所という感じじゃないんですよ。邸宅といったほうがいい。
立派な門に、木々に囲まれた広そうな敷地、その木々の中に古くて品のある白い建物がひっそりと建っているのが外から見えていた。そこから黒塗りの車がでてきてもおかしくないような、そんな雰囲気が漂うところなのです。
どきどきしながら敷地に入ってみると、建物は古い診療所といった感じだったので、少し安心した。そして待合室は混んでいた。
受付を済ませて、椅子に腰掛けて待っていると窓の外に見える景色は緑・緑・緑…そしてツツジのピンクがちらほらと見え、なんとも癒しの空間だった。
待合室の中にはそこかしこに観葉植物があり、玄関先や診察室の入り口付近に150センチはあろう見事な観音竹が3鉢も飾ってあった。
建物もケミカルな感じは殆どなく、特に受付の台は木、壁面は石が張ってあった。薄暗いとはいかないまでも、照明はそんなに明るくなく、ちょっと古めの図書館のような明るさだった。昔からの建物を大切に使っている感じがした。
さて、診察室に入って少し待っていると、お医者さんらしき人の声が聞こえてきた。声からして、なんと、おばあちゃん先生だ。しかもしゃべり方が上品で、豊かで、女優さんのよう。パーテーションの奥で私の前の患者さんを診るおばあちゃん先生への想像が色々ふくらんだ。診察室にはこれまた豪華な8本立ての白い胡蝶蘭が飾られていた。今までこんなに豪華な胡蝶蘭はみたことない。推定…5万はするな、もっとかもしれない。他にもカーネーションの切花やデンドロビュームの鉢植え、ガーベラのフラワーアレンジメント、シャコバサボテンなど…植物が沢山飾ってあった。
「次の方どうぞ」
そう呼ばれて、ゲホゲホいいながらパーテーションの奥へいくとそこには、
着物の上に白衣を着て、お化粧をした、綺麗なおばあちゃん先生がいたのだ。
私は感動してしまった。まるで純文学の世界に迷いこんだかのようなそんな錯覚に陥るところだった。そんな診療所と、この先生に会えたことがとても嬉しかった。
「じゃあちょっと心音を聞いてみましょう」
前、後ろ、洋服を捲り上げると先生は私の下着を見て「まぁ、素敵」とコメントした。
「ちょっと背中で音がしますね」
その日は血液を採って、次の日その結果を聞くことになった。
そして薬は全部で5種類、中には漢方の薬もあった。
「わたくしも先日風邪をひきましてね、この薬がもう…まずいんですよ。
まずいんですけれどね、効きます」
翌日、また上司に断って1時間ばかり抜け出し、診療所へ行くと
「ほんださんはね、いいですね、特に結核や肺炎という心配はないようです。
ただ、ちょっと疲れているのと、お若いのにウィルスに対する防御力が低いようですね。暖かくしてゆっくりお休みになってください」という結果だった。
そしてまた心音を聞いてもらい再び「まぁ素敵」と下着へのコメントをもらった。
「私達が若い頃はレースの下着っていうのはそれこそ10円とか15円とかしましたのよ。今でいったら5~6万円っていうところかしら。そのころはそんないい生活できませんでしたからね、憧れが…ホホホ」
お茶目な先生…私はこのひと時に大変癒されましたよ。まさか下着について何か言われるなんて思ってもいませんでしたしね。
こんなユーモアのある人柄、普段から着物を着る習慣、なんて素敵なんだろうと思いました。そりゃ慕ってくる人も多いでしょう。
生活がどんなに便利になっても、どんなに医学が進んでも、根本的には人間は昔からそんなに変わっていないんだろうし、病気や健康に関することも変わらないのだろうと思った。
「薬を飲み終える頃には良くなっているでしょう。今度は胆がでるとか、症状が変わってくるかもしれませんから、そしたらまたいらして下さい」
そんな時にこういう診療所と自分がいいなと思える医師に出会えることは幸せなことだと思った。薬と土・日よく寝たお陰か、だいぶ咳もおさまった。
あとは溜まった疲れをどうとるか…体の疲れと精神の疲れ。
「体が少し疲れている」と先生に言われてちょっとショックだった。
自分では薄々感じてはいたものの、本当にそうだったなんて。
確かに、最近少し自分を見失って焦っていた気がする。
気持ちを整理して、目標設定しなおさないとな。焦ってるのかな。
自分にとって今が一番充実しているといえるのは確かなのだけど。
2~3日で自然治癒するさと高をくくっていたら、咳がとまらなくなった。
水曜、木曜あたりは咳がひどくて夜中に目が覚め、殆ど眠れなかった。
たんも黄色っぽく、よくない予感がした。
ちょっとおかしいな…と思い、家にあった『家庭のお医者さん』なる本を開いて自分の症状をチャートに当てはめて追っていくと…急性気管支炎のところに行き当たった。
大きな病気をしたことのない自分の健康状態に一抹の不安を抱きながら居間へいくと、ぐうたら寝転がってテレビを見ている父がいた。「咳がとまらないんだけど、ここでタバコ吸うのやめてよ」というと「は~いはいはい」と適当に返されたので一人、哀しくなっていた。
でもその後すぐに、私が本当に咳込んでいる様子を見て父は不安になったのか、急に真面目な顔で「おい、本当に咳がとまらないのか、病院にいったほうがいいぞ。午前中病院へってから会社にいけよ、だめだとは言わないだろうから」なんて言った。
そうそう、いつもそうやって優しくしてくれればいいのにね。一応、娘なんだから。
そして20日の木曜日、職場の上司から許可をもらって午前中に病院へ行った。
好都合なことに、現場から徒歩2分の場所に内科のお医者さんがあったのだ。
正確には病院ではなく診療所で、『市民が推薦する信頼のできるお医者さん』という市民のアンケートに基づいて作られた、良いお医者さんリストの冊子に載っていた。ちなみに私の通っている歯科医もこの本に載っているお医者さんで、相当遠くに引っ越さない限り、ここに通うのだと思うほど頼りにしている歯科医である。
初めてかかる内科医は現場から近かったので、診療所の門の前は以前から頻繁に通っていた。全然、診療所という感じじゃないんですよ。邸宅といったほうがいい。
立派な門に、木々に囲まれた広そうな敷地、その木々の中に古くて品のある白い建物がひっそりと建っているのが外から見えていた。そこから黒塗りの車がでてきてもおかしくないような、そんな雰囲気が漂うところなのです。
どきどきしながら敷地に入ってみると、建物は古い診療所といった感じだったので、少し安心した。そして待合室は混んでいた。
受付を済ませて、椅子に腰掛けて待っていると窓の外に見える景色は緑・緑・緑…そしてツツジのピンクがちらほらと見え、なんとも癒しの空間だった。
待合室の中にはそこかしこに観葉植物があり、玄関先や診察室の入り口付近に150センチはあろう見事な観音竹が3鉢も飾ってあった。
建物もケミカルな感じは殆どなく、特に受付の台は木、壁面は石が張ってあった。薄暗いとはいかないまでも、照明はそんなに明るくなく、ちょっと古めの図書館のような明るさだった。昔からの建物を大切に使っている感じがした。
さて、診察室に入って少し待っていると、お医者さんらしき人の声が聞こえてきた。声からして、なんと、おばあちゃん先生だ。しかもしゃべり方が上品で、豊かで、女優さんのよう。パーテーションの奥で私の前の患者さんを診るおばあちゃん先生への想像が色々ふくらんだ。診察室にはこれまた豪華な8本立ての白い胡蝶蘭が飾られていた。今までこんなに豪華な胡蝶蘭はみたことない。推定…5万はするな、もっとかもしれない。他にもカーネーションの切花やデンドロビュームの鉢植え、ガーベラのフラワーアレンジメント、シャコバサボテンなど…植物が沢山飾ってあった。
「次の方どうぞ」
そう呼ばれて、ゲホゲホいいながらパーテーションの奥へいくとそこには、
着物の上に白衣を着て、お化粧をした、綺麗なおばあちゃん先生がいたのだ。
私は感動してしまった。まるで純文学の世界に迷いこんだかのようなそんな錯覚に陥るところだった。そんな診療所と、この先生に会えたことがとても嬉しかった。
「じゃあちょっと心音を聞いてみましょう」
前、後ろ、洋服を捲り上げると先生は私の下着を見て「まぁ、素敵」とコメントした。
「ちょっと背中で音がしますね」
その日は血液を採って、次の日その結果を聞くことになった。
そして薬は全部で5種類、中には漢方の薬もあった。
「わたくしも先日風邪をひきましてね、この薬がもう…まずいんですよ。
まずいんですけれどね、効きます」
翌日、また上司に断って1時間ばかり抜け出し、診療所へ行くと
「ほんださんはね、いいですね、特に結核や肺炎という心配はないようです。
ただ、ちょっと疲れているのと、お若いのにウィルスに対する防御力が低いようですね。暖かくしてゆっくりお休みになってください」という結果だった。
そしてまた心音を聞いてもらい再び「まぁ素敵」と下着へのコメントをもらった。
「私達が若い頃はレースの下着っていうのはそれこそ10円とか15円とかしましたのよ。今でいったら5~6万円っていうところかしら。そのころはそんないい生活できませんでしたからね、憧れが…ホホホ」
お茶目な先生…私はこのひと時に大変癒されましたよ。まさか下着について何か言われるなんて思ってもいませんでしたしね。
こんなユーモアのある人柄、普段から着物を着る習慣、なんて素敵なんだろうと思いました。そりゃ慕ってくる人も多いでしょう。
生活がどんなに便利になっても、どんなに医学が進んでも、根本的には人間は昔からそんなに変わっていないんだろうし、病気や健康に関することも変わらないのだろうと思った。
「薬を飲み終える頃には良くなっているでしょう。今度は胆がでるとか、症状が変わってくるかもしれませんから、そしたらまたいらして下さい」
そんな時にこういう診療所と自分がいいなと思える医師に出会えることは幸せなことだと思った。薬と土・日よく寝たお陰か、だいぶ咳もおさまった。
あとは溜まった疲れをどうとるか…体の疲れと精神の疲れ。
「体が少し疲れている」と先生に言われてちょっとショックだった。
自分では薄々感じてはいたものの、本当にそうだったなんて。
確かに、最近少し自分を見失って焦っていた気がする。
気持ちを整理して、目標設定しなおさないとな。焦ってるのかな。
自分にとって今が一番充実しているといえるのは確かなのだけど。