クラシック 名盤探訪

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この曲この一枚 その16 J.S.バッハ 音楽の捧げもの BWV1079

2010年09月07日 | この曲この一枚
 
 

クルト・レーデル指揮のこの盤、ちょっと聴くと地味な演奏と捉えがちだが、なかなかどうしてそんな一口では片づけられない深さがある。
指揮者では珍しくフルートの名手でもあったレーデルは、1918年ドイツのブレスラウで生まれている。
1953年に”ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団”を組織して演奏活動を広げ、多くの録音を残しているが、バッハに関するものが何と言っても魅力的。
抽象的な表現になってしまうが、南ドイツ風のおおらかで柔軟な美しさと古典的なスタイルの中に、あたたかい情感を漂わせる奥深い演奏を繰り広げてくれる。
バッハの曲は、とにかく何度聴いても飽きが来ないのが不思議、長年教会の音楽の仕事に携わったからだけではないとは思うが、その信仰心のなせる業は本当に素晴らしいものがある。
今回、ブログの更新をしばらく休んで、「ドイツ13日間作曲家の足跡を訪ねて」と自分で勝手に名付けた個人旅行を敢行したが、その中でバッハゆかりの地であるアイゼナハ、ライプチヒを訪ねることができたのが嬉しい。
この盤のジャケットの像が、バッハ生誕の地であるアイゼナハのバッハの家(博物館)の前にある像だということも判明。
バッハが洗礼を受けた聖ゲオルク教会もいまだに健在で、地元の人々の多くの信仰を集めている。
アマチュアのフルーティスト、作曲家でもあったプロイセンのフリードリヒ大王(1712-86)に献呈された「音楽の捧げもの」、バッハが作品に添えた献辞をみてもその篤実な精神性が伺われる。
解説書から引用すると、「_み恵み深い君主に_心から添しく、陛下に音楽の捧げものをさせていただきます。
その中の特に高貴な部分は、陛下がみずからお作りになりました。
畏れと喜びを持って、私は陛下の仁悲を思い浮かべます。
陛下は私が先日ポツダムに滞在の折、ご自身でフーガのための主題を鍵盤で弾いてお示しになり、それを陛下の目の前でフーガにして演奏するように、私にお求めになりました。
私はつつしんで陛下の命に従いました。
しかし準備不足のため、立派な主題にふさわしい演奏ができないことにすぐ気付きました。
そこで、まさに王者の威厳にふさわしい主題をさらに完全に仕上げ、他に知らしめようと意を固め、努力しました。(以下略)
陛下へ ライプチヒ市にて 1747年7月7日 心から忠実なる僕 作者」
この曲この1枚として、ぜひ聴いていただきたいこの盤、心が洗われる思いがするのは私だけではないと思う。
・クルト・レーデル指揮、ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 <ERATO>