夏休み明け最初の仕事が倉庫からの出荷。近くにあるのでぷらぷら歩く。
ここら辺はぼくの小学校の頃の学区。よく遊びに行った赤木くんの家もある。赤木くんちはお金持ちで、彼の部屋にはわれわれの垂涎の的であったサンダーバード基地や鉄道のジオラマやら、さまざまなものがあった。
赤木くんのおかげでぼくはぼくなりのお金持ち定義を身につけた。
ぼくにお金持ちと認められたければ、次の2つの存在が必要である(しかし、ぼくなんかに認められたいとわざわざ思うお金持ちは、すでにその段階でお金持ちではないような気がする)。
さて、そのひとつは勝手口の存在である。かつては普通のサラリーマン世帯であったさざえさんちにもある勝手口であるが、現代においてもこれをはずすわけにはいかない。いや、むしろ希少価値という点で、まさにお金持ちにふさわしいステータス出入り口と言ってもいい。「うちには勝手口あるよ。そのかわり玄関ないけど」というのはなし。
もうひとつは他人の存在である。お金持ちの家には、血の繋がりのない他人が住んでいる。書生でも女中でも執事でもお抱え運転手でもかまわない。失踪したお姉さんの子どもというのは血の繋がりがあるからだめ。3番目の子と5番目の子は血が繋がってないけど………という事情も考慮しません。
赤木くんちにはどちらもあった。あるとき、赤木くんは、何気ない顔をして、「うちってさ、むかし将軍殺しちゃったから、名字から公って字をはずしたんだ」と話した。
将軍、殺す。小学生にとってその2語は2語ともとんでもなく非日常的な言葉だった。一瞬何を言っているのかわからなかった。
「だから、昔は赤松って名字だったんだって」
あー、知ってるぞ、それ、こないだ社会の時間に見たテレヴィでやってたぞ。赤松なんとかって、室町時代に将軍殺したよな、赤木くんちって室町時代から延々歴史背負ってるんだ。
感心した。さきほどのお金持ちの定義に、もう一つ歴史を加えたいところだが、まあ、二つだけで勘弁してやろう。
赤木くん、今何してるんだろう? 将軍殺そうと計画してたりしてないだろうか。
ま、今の日本に将軍などいないから杞憂であるのだけれど。
はっ、松平健。
ここら辺はぼくの小学校の頃の学区。よく遊びに行った赤木くんの家もある。赤木くんちはお金持ちで、彼の部屋にはわれわれの垂涎の的であったサンダーバード基地や鉄道のジオラマやら、さまざまなものがあった。
赤木くんのおかげでぼくはぼくなりのお金持ち定義を身につけた。
ぼくにお金持ちと認められたければ、次の2つの存在が必要である(しかし、ぼくなんかに認められたいとわざわざ思うお金持ちは、すでにその段階でお金持ちではないような気がする)。
さて、そのひとつは勝手口の存在である。かつては普通のサラリーマン世帯であったさざえさんちにもある勝手口であるが、現代においてもこれをはずすわけにはいかない。いや、むしろ希少価値という点で、まさにお金持ちにふさわしいステータス出入り口と言ってもいい。「うちには勝手口あるよ。そのかわり玄関ないけど」というのはなし。
もうひとつは他人の存在である。お金持ちの家には、血の繋がりのない他人が住んでいる。書生でも女中でも執事でもお抱え運転手でもかまわない。失踪したお姉さんの子どもというのは血の繋がりがあるからだめ。3番目の子と5番目の子は血が繋がってないけど………という事情も考慮しません。
赤木くんちにはどちらもあった。あるとき、赤木くんは、何気ない顔をして、「うちってさ、むかし将軍殺しちゃったから、名字から公って字をはずしたんだ」と話した。
将軍、殺す。小学生にとってその2語は2語ともとんでもなく非日常的な言葉だった。一瞬何を言っているのかわからなかった。
「だから、昔は赤松って名字だったんだって」
あー、知ってるぞ、それ、こないだ社会の時間に見たテレヴィでやってたぞ。赤松なんとかって、室町時代に将軍殺したよな、赤木くんちって室町時代から延々歴史背負ってるんだ。
感心した。さきほどのお金持ちの定義に、もう一つ歴史を加えたいところだが、まあ、二つだけで勘弁してやろう。
赤木くん、今何してるんだろう? 将軍殺そうと計画してたりしてないだろうか。
ま、今の日本に将軍などいないから杞憂であるのだけれど。
はっ、松平健。
笑っていただけてうれしいです。
松平健の無事を祈っています。
すみません。
ってくらいです。