毎日が観光

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三浦半島2

2006年02月02日 00時12分20秒 | 観光
 オペラが終わり早々にぼくらは品川へ向かう。しかし、京急のホームはすごい人出。
 「なあなあ、ビールでも買ってのんびり行こうぜ」彼がこの現実を受け入れているのかいないのか、ちょっとわからない。
 「この人出を目の当たりにして何のんきなこと言ってんだよ?」
 「まあ、いいから、いいから、オペラ出してもらったから、ここは俺が」
 ホームにあふれている人をかき分け、売店でエビスビールを2本買うヤツ。オペラの席が350mlの缶ビールに収斂されていく………。
 乗った三崎口行きの京浜急行は案の定満員。ぼくたちはもちろん立っている。
 「これって絶対リゾートではないような気がするんだが」
 「お前はまともな通勤・通学をしてないからこの程度のことで文句を言うんだ」
 「だって、わざわざ、体やすめに温泉行って、何が悲しくてラッシュの電車に乗ってんだよ。それはぼくの来し方の問題じゃないと思うぞ」とぼくはヤツのリュックに挟まっているエビスビールを見ながら行った。「温泉はな、スペーシアとかレッドアローとかロマンスカーとかで行くんだよ、通勤電車で行くもんじゃないんだよ」
 「まあまあ」
 「まあまあじゃないっ!」
 結局横浜で座れ、そこから三浦海岸まで。
 京急ストアというスーパーが三浦海岸駅近くにあったので、そこで夕飯を買う。スーパーで夕飯買うなんて、やはり、リゾートじゃあない。
 マホロバマインズであてがわれた部屋は、広めのバスルームに、10畳ほどのリヴィング、8畳の和室、それに6畳のベッドルーム。ハネムーンで来るなら嬉しかったかもしれないが、何しろ男二人。
 夕飯もそこそこにすぐに寝てしまう。
 横になってるとヤツが話しかけてきた。
 「あのさ、お前って俺の一生の友達だよ。変な顔すんなよ。俺さ、一昨年結婚したじゃん」
 そう、ヤツは一昨年40になって結婚した。結婚式のとき、花嫁さんのどこが一番気に入りましたか? と尋ねられたヤツは「この人ならずっとついていけると思いました」と真顔で答えた。ぼくはヤツのそんなところが好きだ。
 「あんときさ、嫁さんにさ、コイツを頼みます、あきれちゃうこともあると思いますが、根はいいヤツなんです。お願いしますって、何度も何度も頭下げて頼んでたじゃん」
 照れくさかった。ヤツの話す声が湿ってるのにつられて、あのときの結婚式を思い出してぼくもなんだか………。
 「あのとき、ああ、こいついいヤツだなあって気づいたんだよ」
 「お前、気づくの遅すぎっ!」
 あの子に振られたとき、何軒飲みに連れていったか。アパートの隣の部屋に電話を呼び出しに行ったら、住人死んでて、死体の目からうじがわいていた、アパートに帰りたくないって、あんときお前はうちに半月も泊まってただろう。バイトもしないで食えないお前を塾教師のバイトをしてたぼくがどれだけ食わせたか、そのくせ、血を売ったり人体実験のモルモットのバイトとかそんな安直なもんばっかやりやがって、しかも担当の看護婦さんがきれいなんだよ、などと下らねえ自慢して、お前バカか? 気づくんならそんときに気づけよ!

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