揺れる水筒を押さえながら、頬を上気させた少年が走ってくる。
夏は人によっては不快で仕方のない季節かもしれないけれど、心の中で虫取り網を振り回しているぼくのような人間には楽しい季節だ。
すべすべした丸い石が湿ったり乾いたりしながら、夏の日が過ぎてゆく。
ぼくは、いつか二人で眺めた夏の夕暮れを思い出す。その夕べの悲しいまでの美しさは、世界が悲劇的であることをぼくたちに証明しているかのように思われた。世界が悲劇的だから、人の世は悲劇なんだ。でも、人生が悲劇なのに、他人の人生が喜劇なのはとても悲しい皮肉だ。ぼくたちは、どんなに深刻になろうとも、喜劇にしかなり得ない。
夜の途中に鉄橋があった。ぼくたちはそこで抱き合って、少し泣いた。
そして、また、夏が来た。
夏は人によっては不快で仕方のない季節かもしれないけれど、心の中で虫取り網を振り回しているぼくのような人間には楽しい季節だ。
すべすべした丸い石が湿ったり乾いたりしながら、夏の日が過ぎてゆく。
ぼくは、いつか二人で眺めた夏の夕暮れを思い出す。その夕べの悲しいまでの美しさは、世界が悲劇的であることをぼくたちに証明しているかのように思われた。世界が悲劇的だから、人の世は悲劇なんだ。でも、人生が悲劇なのに、他人の人生が喜劇なのはとても悲しい皮肉だ。ぼくたちは、どんなに深刻になろうとも、喜劇にしかなり得ない。
夜の途中に鉄橋があった。ぼくたちはそこで抱き合って、少し泣いた。
そして、また、夏が来た。