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こぼれ梅でつくる卵の珍味

2022-10-17 13:40:54 | ブログ

先日、弊社で商品展示会を開催しました。そこにみりんを造り続けて150余年という歴史ある甘強酒造さんが出展されていたのですが、みりん以外にも興味深いものを紹介されていました。それがこのみりん粕「こぼれ梅」


みりんを製造する時にできる搾りかすが咲きこぼれる梅の花のように見えるので「こぼれ梅」とは、なんとも奥ゆかしいネーミングですよね ほんのりした甘さがあり古くからお菓子としても食べられてきたとか。甘強酒造の方の「お茶うけや、料理やお菓子作りにも使えるんですよ」という説明を聞きながら、「こぼれ梅って確かあの小説に出てきたアレのことでは・・・」家に戻って確かめたらありました!

髙田郁(たかだかおる)さんの「みをつくし料理帖」シリーズ

2009年から2014年にかけて発刊された全10巻(後に特別編1巻も出ました)の時代小説です。当時、時代小説は捕り物でちゃんばらシーンがなければ本にならないと言われていた頃。幼い頃に大阪の水害により両親を失い、天涯孤独の身となった少女が、江戸で料理人として成長するお話(←かなりざっくり言ってます)なのですが、刀ではなく包丁を手に自分の人生を切り開く主人公のけなげな奮闘ぶりに、新刊が出る度に夢中で読んでいました。出てくる人が皆、人間味にあふれていて、語り口もやさしく、本当に温かい気持ちになる小説です。

こぼれ梅はまず第2巻に出てくるのですが、第8巻「残月」でこぼれ梅を使った「鼈甲珠(べっこうだま)」という卵の黄身の味噌漬けの話があり、今回、作ってみました!
「みをつくし料理帖」には巻末に実際に筆者が試作に試作を重ねたレシピがついているので、それを参考に。赤みそ1:白みそ1:こぼれ梅2の割合でお酒・みりんと一緒に滑らかになるまで混ぜたみそ床に卵の黄身を漬けるだけ。

黄身が破れないように、みそ床にさらしやガーゼをひいてくぼみをつけたところに黄身をそっと置き、別のさらしの上にみそを塗ってそっと上から重ねるというのがポイント。

漬けるのは3日、楽しみに待って開けてみると、見てください、この違い!何が起こったのか・・・

確かにこれはべっこうと名付けるほどキレイですよね。あの破れそうだった黄身がねっとりと、何のようと例えたらいいのか・・・とにかく珍味です(笑) みそだけでなくこぼれ梅を加えているおかげで、穏やかな塩気がほんのりした甘みとあわさって、黄身のコクがぎゅっと濃厚になったような。お酒の肴にも、ごはんのお供にもよさそうです。

こぼれ梅のおかげで久しぶりに飛び込んだ「みをつくし料理帖」の世界、楽しくおいしい体験ができました。最近は同じ著者の別のシリーズを読んでいましたが、この秋にもう一度ゆっくり読み返してみようと思います。(N.K)