海上自衛隊 呉地方総監部

2008-05-10 18:38:34 | 岡山・広島・山口






 呉の町はレンガ色―。  明治19(1886)年の海軍条例と鎮守府官制の施行により、呉鎮守府(各海軍区の警備や防御をつかさどり、指揮監督した海軍の機関)が横須賀や佐世保などと共に開庁したのは明治22(1889)年のこと。 急速な文明開化・近代化の波を受け、来日した外国人技師を通して広まった西洋の建築技術が取り入れられる事になり、諸外国に追いつけ、追い越せの機運のもとレンガ造りの建物がまず手始めに軍用施設に建てられていく事になります。 

 この建物は、明治38(1905)年の芸予地震で半壊した初代の呉鎮守府庁舎に代わって、明治40(1907)年に完成した2代目の庁舎です。 軍用施設から水道・鉄道施設、最終的には民間住宅の一部にも取り入れられる事になった呉のレンガ建築の中では大将格にあたるものではないでしょうか。 正面中央部分に用いられた御影石が赤レンガとの美しい対比を見せ、2階に備わったイオニア式オーダーの真ん中には、桜と思しき彫刻がなされ日本的な美意識をさりげなく感じさせます。 建物裏側(海側)は、元々の正面だっただけに現在の正面(山側)と同じような意匠になっており、後年に増築された両翼の突き出し部分が却って正面よりも威厳を強調する要素になっているかも知れません。 先の大戦による空襲で屋根のドームは崩壊・焼失しましたが、平成11(1999)年に復元。 呉のレンガ建築の象徴的存在として昔と違わぬ姿を見せてくれています。  広島県呉市幸町8-1  08年05月上旬 

 ※ 参考文献 『街のいろはレンガ色 呉レンガ考』
         『戦争遺跡を歩く』
         『中国地方の西洋館』