エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

映画「東京家族」を見て

2013年01月19日 | ポエム
19日からロード-・ショー公開される、映画「東京家族」の試写会に出かけた。
何の先入観念も無く映画を見たのであるけれど、小津安二郎の「東京物語」が激しくオーバーラップして、観た後には虚しさが残ったのである。

小津作品の焼き直し・・・そのものである。
決定的に違うのは、キャメラ・ワークである。

それに、役者の重さであると言っては失礼か?



台詞回しは、小津作品に似ている。
しかし、キャメラが小まめに動くので台詞が画像に定着していない。
説得力に欠けるのである。

しかしながら、吉行和子と妻夫木、それに蒼井優は良かった。
林家正蔵は「大根役者」剥きだしであって、観ていてスクリーンが汚かった。

橋爪功は、好演だけれど笠智衆には遠く及ばない。
無理である。







「毎日が家族の絆根深汁」





俳優に、こうした映画に耐えられる人材が居ないと言ってはいけないのだろうが、現実なのである。
例えば、大滝秀治(故人だけれど)。
例えば・・・女優では奈良岡朋子。
個性溢れる俳優である。

その他に名前が頭に浮かばないのは、寂しい。
老境の人物を描き切る俳優がいなくなったのであろう。

山田洋二監督、晩年に駄作をリリースしてしまった。
誠に惜しい。
それにつけても、俳優陣の不甲斐無さよ!

一言感想を言えば、やっぱり寅さんが面白いし、釣りバカ日誌が面白い。
山田監督には大きい期待を持っている。
このところ、昭和を作った人々が他界している。

大島渚監督なども、その一人である。
日本春歌考など、面白かった。



さて、小津安二郎の東京物語であるけれど、イギリスの権威ある月刊映画専門誌『Sight & Sound』2002年版の「CRITICS' TOP TEN POLL」では、年老いた夫婦が成長した子供たちに会うために上京する旅を通して、小津の神秘的かつ細やかな叙述法により家族の繫がりと、その喪失という主題を見る者の心に訴えかける作品、と寸評を出している。

鋭い洞察力である。

BBC「21世紀に残したい映画100本」に、『西鶴一代女』(溝口健二監督、1952年)、『椿三十郎』(黒澤明監督、1962年)、『乱』(黒澤明監督、1985年)、『ソナチネ』(北野武監督、1993年)などと共に選出された。
この作品は、ニューヨーク近代美術館に収蔵されているのである。



優れた作品は永遠の命を得るのである。

ぼくはこの映画と俳優を貶しているのではない。
作品には、その作品にあった役者がキャスティングされるべきであるし、脚本とキャメラ・ワークは不離一体で進行すべきである事を言っているのである。

今日から一般公開である。
まず、観て頂きたい。
その後、自分の家族を考える。
そうした機会になれば良いのではないだろうか。



「映像の向こうに涙冬一日」



      荒 野人