ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ブリット=マリーの幸せなひとりだち

2020-07-19 03:12:35 | は行

コロナ禍でダンナにイラッイラが募っている

奥さま、必見?(笑)

 

「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」69点★★★★

 

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ブリット=マリー(ペルニラ・アウグスト)は

スウェーデンに暮らす63歳の女性。

 

結婚して40年、

専業主婦として夫(ペーター・ハーバー)の食事を作り

アイロンをかけ、家の中をキチンとすることに、人生を費やしてきた。

 

が、

ある日、思わぬことから夫の長年の裏切りが発覚。

 

ぶちキレた彼女は、荷物をまとめて家を出て

仕事を探し、住む場所を探す。

 

が、40年ぶりの職探しはなかなか難航。

そこで見つけたのは

小さな村の、サッカーチームのコーチで?!

 

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スウェーデンの、ごく普通の主婦だったヒロインが

夫の浮気発覚で「覚醒」し

荷物をまとめて家を出て

新たな人生を踏み出すことに――?!というお話。

 

シチュエーションは、ままある気もしますが、

ヒロインがあまりにもな仏頂面(笑)の63歳、というのが

なかなかおもしろい。

 

さらに、新たに見つける仕事が

田舎の町でのサッカーコーチというのも意外(笑)

 

子どももいなくて、ましてサッカーのルールすら知らないブリット=マリーですが

それでも子どもたちのあしらいがうまい。

キャラの強さと、「年の功」の力なんでしょうか。

 

しかも、その田舎の町が

移民が多く、貧しい困難地区、というのが、また意味を持っている。

 

そんな世界で、はぐれものであるヒロインや子どもたちは

互いをなんとなく支え合うんですね。

 

なにより

「いい妻でいなきゃ」の束縛から逃れた彼女が

新たな世界で生き生きとしていく、その開放感に共感できるのがいい。

 

 

いい雰囲気の彼氏も出来そうな予感?とかあるんですが

 

でもね

そこから先に彼女が選択する道も

また意外にひねってあって

うむむ、と思わされる。

 

いま、「この状況に、耐えきれない!」となってる人に

この映画、ちょっとした息抜きと

問題への新たな画角を与える気がするんです。

 

主演のブリット=マリーを演じるは

あのビレ・アウグスト監督の妻でもあるペルニラ・アウグスト。

そう、「リンドグレーン」(19年)主演のアルバ・アウグストのお母さんでもある、

 

しかも、本作の共同脚本は義理の息子でもあって

アウグスト一族、すげえ(笑)とか思うのでありました。

 

★7/17(金)から新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」公式サイト

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パブリック 図書館の奇跡

2020-07-19 01:12:54 | は行

米で公立図書館が

ホームレスの避難所になっている現実に着装を経た作品。

 

「パブリック 図書館の奇跡」71点★★★★

 

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米オハイオ州、シンシナティの公共図書館で働く

図書館員スチュアート(エミリオ・エステベス)。

 

仕事にも人にも実直な彼は

毎朝、開館とともにやってきて閉館までを過ごす地域のホームレスたちとも顔なじみ。

 

一般客の迷惑にならないように微妙な配慮をしつつ

ホームレスたちともうまくやり、なんとか均衡を保っていた。

 

が、ある寒波の夜。

図書館の外で寝ていた顔見知りのホームレスが凍死したことに

スチュワートは衝撃を受ける。

 

そして次の夜。

閉館しようとしていた図書館で、スチュワートは常連のホームレスから

思わぬことを告げられる。

 

「今夜は帰らない。ここを占拠する」――――。

 

そして、なりゆきから

70人のホームレスたちとともに

図書館に立てこもることになったスチュワートだが――――?!

 

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昨年、予想外の大ヒットとなった

フレデリック・ワイズマン巨匠のドキュメンタリー

「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」(17年)。

この映画にも図書館がホームレスの避難所になっているという話が登場していまして

ハッ、なるほど。。。と感じたのですが

 

その現実に着装を経て、

俳優のエミリオ・エステベスが主演&監督したのが、本作。

 

 

寒波の夜、図書館に立てこもったホームレスたちと、

彼らに味方した図書館職員スチュアート(エミリオ・エステベス)の一夜を描くのですが

 

そこに

次期市長をねらう嫌味な検察官(クリスチャン・スレイター)

ホームレスになった息子を探す刑事(アレック・ボールドウィン)、

そして

スチュアート自身にも実はある過去があった――――と

三者のドラマが絡み合っていく、という構成です。

 

 

凍死者が出るほどの寒波なのに、シェルターは満杯。

そんなホームレスたちを放っておけない図書館員スチュワートは

「代わりの避難場所」を求める

平和的なデモとして「占拠」を始めたのですが

 

しかし

政治的なイメージアップをもくろむ検察官の偏った主張や

メディアのセンセーショナルな報道によって

スチュアートは心に問題を抱えた「アブない容疑者」に仕立てられてしまう。

 

やがて警察の機動隊が出動。

追いつめられたスチュアートと

ホームレスたちが決断した驚愕の行動とは――――?!とハラハラの展開。

 

 

正直、「映画」としては全体にもうひとさじ、なにかが欲しいところではある。

あるのですが、それでも

いやいや、十分にハイクオリティではあって。

驚愕の収束法もおもしろく、ハッとさせます。

 

なにより、いい題材を使い

すごく入り込みやすく、社会問題を考えさせてくれるなと。

 

ここから先、問題の深部へ進むかは

観る我々に委ねられているんだなと

思うのでありました。

 

★7/17(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「パブリック 図書館の奇跡」公式サイト

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