ミレー絵画のような世界。
そして、すくっと立つ少女の登場シーンに、
なぜか宮崎駿世界を想起しました。
「田園の守り人たち」80点★★★★
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1915年、第一次世界大戦下の
フランスの田園地帯。
男たちは戦地へと赴き、
残された女たちが、家や畑を守っていた。
そんななか
農園の夫人オルタンス(ナタリー・バイ)は
長女(ローラ・スメット)と二人で馬で畑をすき、種をまき、収穫に備えている。
あるときオルタンスは孤児院出身のフランシーヌ(イリス・ブリー)を
手伝いに雇い入れる。
若く溌剌とし、なにより労を惜しまずに働く彼女は
みんなの人気者になる。
だが、ある出来事が起こり――?!
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「神々と男たち」(11年)の監督作品。
これもまた、名作になりにけり。
1915年から1920年のフランスの田舎が舞台。
男たちは戦地に行き、残された女たちが、畑と家を守っている。
彼女らは一様に、戦地にいる夫や息子を案じながら
不安のなか移りゆく季節を、凛と前を向き、1日1日、生きている。
畑仕事をする彼女らの姿は
まさにミレーの絵画「落ち穂拾い」「種をまく人」のように静謐で
繰り返される人の営みの尊さ、美しさが
胸に刻まれる。
そんな映像のなか
ヒロインの一人である、まっすぐな若き娘が、
農家に働きにやってくる。
その最初のシーンで、なぜか宮崎駿作品を強烈に想起しました。
フランスの田舎の話なのに(笑)。
映画は格別な起伏を作ることなく進むんですが
しかし戦地に行った男たちの訃報が舞い込み
女たちは静かに泣き崩れる。
そして農園の女主人オルタンスも
長男を失う、悲劇に見舞われる。
農園には、味方として闘うアメリカ兵が物資をもらいにやってくる。
そんななかで、少しずつ、なにかが変化し
ある出来事から
働き者の少女は農園を追われてしまうんですね。
「正しく、公平な人だと思っていたのに。あなたは怪物よ」
――振り絞るように少女が投げた言葉がつぶてのように、
女主人の大地に染みこんでいく。
少女はどうなるのだろう?
農園の行く末は?
真っ暗、ではなく未来がほんのり輝くラストもいいです。
農園の女主人と、その娘役は
実際の親子なんです。いいキャスティングですねえ。
それにしてもこの時代から、
もう100年の時が経っているのか!と
ふと気付いてびっくりしました。
チラシにコメントを寄せさせていただきました。
畏れ多くも
加藤登紀子さん、池内紀先生に挟まれるという配置におののきましたが
ぜひお手にとって、劇場へGO!してくださいませ。
★7/6(土)から岩波ホールほか全国順次公開。