ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

大統領の執事の涙

2014-02-10 22:40:37 | た行

キチンとした人物伝。
かつ、伝記ではなく「映画にした」努力が見えます。


「大統領の執事の涙」69点★★★☆


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1920年代、黒人差別が行われていた時代の
アメリカ南部に生まれた
セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は

ハウス・ニガー(家働きの奴隷)となり、
努力の末、ホワイトハウスの執事となる。

そこで彼は
アイゼンハワーやケネディなど
歴代の大統領に仕え、激動の歴史を、目の当たりにしていく。

いっぽうで、彼の息子は
黒人の人権を求めて、過激な活動に身を投じていき――?!

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1957年から2008年まで、
7人の大統領に仕えた、実在黒人執事の人生を描いた作品。


執事という職人技を身に付けることで
人種差別時代を生き抜いた彼に、
オバマ大統領誕生までの、黒人解放のアメリカの歴史が
うまく重なっていく……という

とても勉強になる一本です。


ただタイトルからイメージする
執事と歴代大統領とのやりとりなどはあまりなく、
(まあ、実際そうだったんだろうけど)
主人公はある意味、狂言回し役。

「空気のように」そこにいることを仕事としたのと同じく、
劇中でもあまり感情を表さないので、
観客の感情移入の対象にはなりにくい。


歴代大統領たちも
その時代に起こった歴史的出来事を
観客に紹介する媒介、という位置づけで
そんなに一人一人がクローズアップされることもない。


そのへん、ちょっと想像と違ってたんですが

その代わりに軸になってくるのが
黒人執事と彼の息子の親子確執なんですね。

息子は「黒人差別NO!」という政治活動に参加し、
行動で黒人の権利を勝ち取ろうとする。

対し、父親は
白人に寄り添うことで、黒人の生きる道を探ってきた人。


親子の手段の違いが、
どちらも歴史の一部に深く関わっていることが面白く、
物語の厚みを増し、引っ張っています。

実在の黒人執事の息子さんはエリートで
息子さんとの云々部分は、全てフィクションだそう。

そのへんの舵取り、
“映画”として、とてもいいと思いました。


★2/15(土)から全国で公開。

「大統領の執事の涙」公式サイト
コメント (2)
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