ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

Peace ピース

2011-07-15 22:18:15 | は行

「選挙」「精神」の想田和弘監督、最新作。
やっぱり、この人の映画はすごい。


「Peace ピース」79点★★★★


主人公は岡山で
障害者や要介護者を送り迎えする
介助運送業(実質的には非営利、ほぼボランティア)をしている夫婦。


彼らが世話する人々と、
ご主人が面倒を見ている外ネコたちの姿を、

おなじみの「静かにそこにいる」観察手法で描く
ドキュメンタリーです。


猫バカとしては
ネコたちの可哀相な場面があったらイヤだなと
ビクビクしたんですが

そこは大丈夫でしたので
ご安心ください。


またこの映画の主人公のご夫婦つうのは
実は監督の奥さんの両親、
つまり監督にとって義父・義母であるんですが

そんな説明もないし、
そんなことは知らなくてもいい。


いつもどおり説明なし、ナレーションなしで
対象と自然なコミュニケーションを取る想田監督に
とりあえずついていきましょう。


例えば
ある日、お父さんが訪ねるのは
足が悪く、一人では外出できない男性。
お父さんは彼をバンに乗せて
一緒に買い物したり、回転寿司を食べたりする。

そして男性を送り届けると
「また一ヶ月後に来るからね」と
お父さんは帰っていく。


お父さんが家に帰り
庭で外ネコたちにごはんをあげていると
見慣れないネコが入り込み、
先住ネコたちに緊張が走る。


そのやりとり全てが、なんでもないのに
……切ない!


映される風景の一コマ一コマが温かく染みるのは
これがとことん
“市井”であるからに他ならず、

「困ってたら、助けるっしょ?」的な
無償の「助け合い」精神が
根底にあるからなんでしょうか。


そのうちに
画面に映っている相手と
自分が対話してる気になって、

映画を見ながら自然と微笑んだり、
うなずいたりしまうんだなあ。


監督の優しい視線に
自分が成り変わってそこにいるかのような
図々しいシンクロがある。


同時に、介護現場のとてつもない苦労や
人と人とが関わることの意味に
思いを馳せることになるんです。


そもそもこの映画は
ある映画祭から
「平和と共存をテーマに」と
お題を出されたのがきっかけだそう。


テーマを設定せずに始める監督は
最初、断ろうとしたんですが
たまたま養父と外ネコたちの様子を映したことで
「共存、イケるかも!」となったんですって。


75分とコンパクトですが
まさにお題にピッタリ。

共存、そして平和は
あなたの隣に、あるんです。


★7/16からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。

「Peace ピース」公式サイト
コメント
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