とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

自分の力でできたことでおいしさは何倍にもなります。

2007-02-07 22:50:04 | 障害児教育
 学級通信149号(1月23日号)で『考え方はいろいろあると思いますが、できることを増やすことも大事にしながら、もう一つ、できない時に勇気を出して「手伝ってください」「助けてください」が言えることがとても大事なことだと思っています。このクラスの大半は、これからもいろんな場面で介助を受けて生活をしていくのだと思います。その時に「何をしてほしいのか」をちゃんと伝えられるようになることも、立派な自立の一つだと考えます。』と書いてきました。今回は少し切り口を変えて報告していきます。

 水曜日の給食のことです。この日は、デザートにかぼちゃプリンがついていました。他に、鳥そばと大根の煮物(炒め物?)とご飯でした。この大根の煮物?の中には椎茸がたっぷりと入っていました。Dylanはこの椎茸が大嫌いです。少しの椎茸なら「給食だから…」と何とか我慢するのですが、この日の椎茸の量は尋常ではありませんでした。そこで向かいで食べているロンくんに「Dylan先生は椎茸が食べられません。悪いんだけど、椎茸を食べてくれる?」と聞きました。気の良いロンくんは「いいよ。食べてあげるよ。」と答えてくれました。「お礼と言っては何だけど、このかぼちゃプリンもあげようかな?」「やったー!」というやりとりがありました。実は甘い物もあまり好きではないのです。

 それを横で見ていたレオくんは、「かぼちゃプリンは誰にあげようかな?」と言っています。どうも食べる気がないようです。「羊飼先生にあげようかねー?」と言っています。職員室に配達に行くつもりになっています。

 そういう意味から、かぼちゃプリンは子どもたちの話題に上っていました。それぞれが「かぼちゃプリン食べたよ!」「おいしかった!」と話題にしている頃、コロくんがやっとごはんとおかずを食べ終わりました。さあ次はプリンです。このプリンなかなかふたがあきません。ビニールでしっかり止められているタイプのものです。

 「開けてください!」とコロくんの声が響きます。向かいに座っているDylanはレオくんの食事にかかりっきりです。「今Dylan先生はちょっと無理です。」と言うと藤本先生に向かって「開けてください!」と言いました。でも美里先生は、課題を出しました。「自分で開けられたらプリンはもっとおいしくなるよ」と答えました。以前、香川先生が小学校の経験を話される時に「1年生の子を担任した時に、子どもたちはすぐに開けてください!と言う。でも、一人に応えるとどんどんみんながあけて!と言ってくる」と言われたのを参考にしたみたいです。

 コロくんは、開けようと努力しますが、なかなか開きません。「歯で噛んでやったら?」と言われて試しますが、それでもうまくいきません。その時外から入ってきた瀬川先生が苦労しているコロくんを見て少しだけ開けてあげようと手伝いをしようとしました。瀬川先生は事情を知らないので無理もないのですが、「手伝わないで!コロくん一人でやるんだから!」と手伝いを制止しました。

 コロくんは、次にスプーンを持って空けようとしました。これでもダメなら次はこれ!といろんな工夫をしています。みんなコロくんのやるのをじっと見ていました。コロくんもその目をしっかり意識しています。突き放されているのではなく、みんな頑張れ!の目線で見ていることはしっかりつかんでいたと思います。

 テーブルのはさみもチラッと見たので「はさみは危ないので使えません」とすぐに止めました。そこで最後の工夫を始めました。プリンを横に立てて、上から下へ開けようとしました。「それはプリンが出てしまうかもしれないよ」と心配しましたが、見事に隙間が生まれました。「全部あけちゃえ!」ということで全部開けることができました。その得意そうな顔は誇りに満ちた顔でした。

 一つ食べ終わったコロくんにレオくんのプリンを勧めて、もう一度挑戦してもらいました。2回目はさっとできました。

 それを見ていたレオくんは、「香川先生のプリンをレオくんが開けてあげないと!」と言い出しました。少しだけ隙間を作ってあげると見事に開けることができました。「レオくんの開けてくれたプリンはとってもおいしい」と言われてこれまた得意満面でした。自分は食べられなくても、人のために自分の力を発揮したいと思う心もとても大切な気がしました。自分の価値を何だかの形で見いだすことがセルフエスティームにつながるのだと思います。

 自分の力でできたことは、コロくんにとって大きな自信になったことだと思います。でも、何でも自分の力でやらせた方がいいとは考えません。もちろん前言(149号)を翻す考えもありません。どんなことを自分の力でやるのか、本当にその子の力でできることを課題としてを明確にしてあげることが大切だと考えます。
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2 コメント

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Unknown (Drumming)
2007-02-07 23:43:22
プリンのふた一つでもいろんなドラマがあるんですね。勉強になりました。
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日々ぶつかっている課題・・・少しずつでも克服できてるのかな? (bokuchan)
2007-02-09 04:14:53
「手伝ってください」「助けてください」ということはこの子達だけでなくむしろ通常学校の子ども達や大人の世界でも必要なことではないかと思います。
 それから助け舟を求められたとき、これも難しいですね。手を差し伸べるタイミング、どこまで頑張るのを待ってあげるかがポイントですね。日々反省と学習その中から出てくる課題と格闘の繰り返しです。少しは克服できているのかと・・・
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