季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

映像の魅力 本編

2010年03月05日 | その他
前回映像の魅力について書こうとしたら、かってに肉声の魅力に話がいってしまった。

肉声の魅力について長々と書いたが、じつはもう一つの感覚的な認識、視覚の魅力について感に堪えぬ思いがしたことを書き留めておきたかった。

映像自体はもうとっくに市民権を獲得しているけれど、それはあくまで映画やドキュメンタリーやスポーツ中継においてであった。市民権を得ていると書いたが、そんな言葉では遙かに及ばない影響を映像は持っている。善し悪しを問うのはもはや意味がない、それほど大きな影響力だ。

例えば厳粛な席で偶然の笑顔を映し出せば、その人に人でなしという烙印が押されかねない。そんな危険もはらんだ力の前に人は否応なしに立たされている。

インターネットが進み、動画が配信されるようになると、見られないものはないという有様になった。

繰り返すが、賛否を論じても仕方ないのである。こういう事態には上手に付き合うことを心がけた方がよい。このような時代にならなければ僕が目にすることはおそらくなかったであろうと思われる映像だってある。そののひとつが本田宗一郎氏のインタビューである。

この人の功績はもちろんいつの間にか知るところとはなっていた。考え方やおよその履歴も目にして好感を抱いてもいた。それでも実業界は僕の関心からは遠く、好感以上のものを敢えて探す労を払うには忙しすぎた。

僕が見たインタビュー映像の感想を言ってしまおう。こんなに魅力のある話し方をする人はそう多くはあるまい。僕が実業界に漠然と抱いているイメージと合致するものはどこにもない。

僕が見たものは社長を退いた後なされたインタビューである。ここで本田氏は自分の時代は戦後新しく出発する時代で幸運だった、上の世代から押さえつけられずにすんだ。だから現在でも上に立つものはなるべく早く後進に道を譲るべきだと言うのだが、これを文字で読んでも、まったくその通りの正論だと言う以外ない。

ところが、彼がこれを言う時の体の動きに目が行くと、話し声は彼の口からではなく、腕から、体全体から発せられるように思われてくる。

体は言葉につられて左右に揺れる。それは欧米人の大きなゼスチャーともまったく違う。いま話題にあがっていることがらについて話すことが楽しくて仕方ないのが傍目にもよく分かる、そんな感じ。

楽しい話題ばかりとは限らない。たとえば彼が社長を退いたとき、よく創業者がするように息子に跡を継がせることをしなかった。

インタビュアーから、本田さんでもふつうの親心もあったであろうによくそれができた、迷いはなかったのかと質問される。

一瞬の間をおいた後「会社は本田家のものじゃないものね。会社は株主のものだものね。(また一瞬の間をおいて)従業員のものでもあるものね。そんなことをしたら(息子に継がせること)社員はやる気をなくしますよ」と言う。

ここでも大切なのは意見ではない。意見にはいくつでも異論反論があるかもしれないし、同じ気持ちを持つ人も同様にいるだろう。

それよりもこの発言をする本田氏の表情には当たり前だと自分で思ったことを当たり前に行動する人特有の無邪気さというか、素直さがある。意見を異にする人への皮肉や反感くらいこの人から遠いものはなかったと思われるのだ。

言葉の本当の意味で気取らぬ態度を見て、僕はじつに良い気持ちになったのである。

真剣に本心を語ると心動かされる。人間という動物は面白いものだと改めて思う。「わざ」と題して書いたものの真反対である。you tube で本田宗一郎と検索をかければ出るはずです。URLを貼っておけば良いのだろうが、クリックしただけでそこに跳べるようにできないのです。だれか教えてくださいな。





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2 コメント

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素晴らしいです (やまかた)
2010-03-08 00:57:30
http://www.youtube.com/watch?v=0ynnNKMHw0s

これではないかもしれませんが、貼ってみました。
URLをコピーして貼り付けます。

すべて心から出てくるそのままの言葉ですね。
そして楽しそうに嬉しそうにお話しする姿に心打たれます。
紹介して下さってありがとうございます。
返信する
有難うございます (重松正大)
2010-03-12 00:46:11
やまかたさん

これです、僕が見たものは。

URLをどうやっても貼り付けられなかったので有難いです。
返信する

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