季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

ヴルストハウゼ川上 2

2015年07月07日 | 旨いもの
以前肉の川上について書いたことがある。

以前書いたことの繰り返しになるが、ここのハム・ソーセージは絶品だった。近所から箱根に引っ越してしまったのだが、この項を書くにあたり過去記事を探したら2008年のことである。

大変残念だったが、近くのデパートのフェアに時折出品していて、その都度買っていた。ネットで見ると箱根でも人気は上々で、ということは有名人達も出入りしている様子が伺え、密かに喜んでいた。

ふと気がつくとデパートに出店することが久しくない。途中何度か箱根へドライブし、今日こそ店を探そうと思うのだが探すことをメインに行かないと行きつ戻りつしないものだ。そうやって月日が流れた。

つい先頃、久しぶりにネット検索をしたら、ご主人が亡くなって閉店したとの記事を見つけた。まだそんなにお年ではなかったはずである。一度でもよい、行っておけば良かった。デパートではたまに奥さんにお会いして短い立ち話は交したが、ご主人の熱気のこもった話をもう聞けないのだと思うと悔やまれる。あんなに楽しそうに仕事をし、それについて語る人を僕はたくさんは知らない。

心からご冥福をお祈りしたい。





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紅茶の話

2008年05月05日 | 旨いもの


以前紹介したぜにさわコーヒー店は、実は紅茶もめっぽう旨い。どうも、こうやって書いていると、通ぶっているようで、気恥ずかしいのだが。でも、旨いものは旨い。

去年は紅茶の当たり年で、素晴らしいものが入った。連続当たり年ということはまぁ考えられないから、今年は期待しないで、と言われていたのだが。それが、今年も素晴らしいのだという。去年びっくりしたクラスのものも入るが、業者が、今まで経験したことがない、と感嘆するものも入るという。

此を書いているのは、実は、4月22日だが、この時点ではブログでも発表するのはちょっとまずいのである。

この紅茶は、ヒマラヤ中腹から来るそうだが、業者はインド人から、危険だから行くなと止められているのを強行するらしい。そこまでしても、何しろたいへんなクオリティーなので、法外な値段をふっかけてくるかもしれず、その場合は断念するのだそうだ。

つまり、手にはいるかどうか分からず、手荷物ぎりぎりの10キロだけしか入らず(輸送にかかる日数をできる限り短くしようと思えば、自分の手で運ぶ以外無い)そのうち500グラムだけがぜにさわに入るのだという。何人かの常連に分けるにしても、ひとり10グラム~20グラムがせいぜいだ。売り出す前に僕がブログ上で書いてしまったらたいへんだ。

この文章が公開されているときは、もう僕は手に入れているわけだ。そうか、感想を挿入すればいいのだな。

本当に良い紅茶は、淡い色だったりする。日本では、紅茶の色をしていない、と拒否されることが多いそうだ。色が付かないじゃないか、ということらしい。

去年、飲んだ口当たりが、まったりしたものがあった。どうしてあんな口当たりになるんだろうと訊ねたが、よく分からない。でも、新鮮な野菜でも、一種の粘っこさがある、そんなことと似ているのではないか、というのがぜにさわさんの意見であった。そんな気もする。

ここから先がリアルタイムだ。

美味かった。びっくりした。ほんのり甘い。紅茶の香りの中に甘みが溶けている感じだ。まったり感はなく、すっきりしている。とはいえ、どこかにとろみを感じる。香りにも薄い甘みがある。

以前、渋味なんていうものは、酸化している、つまり腐っているということです、と聞いてなるほどそうだよなぁと感心した。ここで扱っている紅茶は、手広くできないから、とほんの3,4種類で、ふだん置いてあるのはありふれたものといいながら、渋味のあるものなぞない。

それでも、こんなに違うと、もう唸る以外にない。何というかな、ヒマラヤのどこかに、桃源郷というものは実際に存在するのではなかろうか、と思うほど、現実感がないのにしっかりとしたものがある。

一煎目は香りが一瞬のように鼻孔をかすめ、二煎目は香りは弱まるが味はしっかりある。その点は日本茶で言われることとまったく同じだ。

味覚も音楽同様説明はしきれないので、むしろ自慢話のようになる。どうだ、いいだろう。
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良い鼻

2008年02月19日 | 旨いもの

以前からちょいと気になっていた店があった。なに、我が家からほんの数分歩いたところにあるコーヒー店だ。といって、ほとんど通らない裏通りに面しているから、車で偶然通りかかっては「良さそうだね、気になるね」と言いながら5.6年経った。

僕は家で落ち着かないと喫茶店で読書したり、ちょっと考えついたことを文章にしてみたりする。以前は2駅ばかり離れたところに落ち着いた雰囲気で音楽も殆どかかっていない店があって、そこを使っていたのだが、閉店してしまった。

話はそれるけれど、音楽のかかっていない静かな店というのが無いのは閉口だ。サービスと心得て芸もなく音楽を流す。すぐに寄ってくるデパートや大手家電量販店の店員のようだ。静けさもサービスだろうに。

そんな理由もあって、ついに件の店に入ったのである。ところが車から通りすがりに一瞬見るだけでは喫茶室かと思いきや、ここはコーヒー専門店であった。読書は諦めざるを得ない雰囲気と狭さだ。

ふつうコーヒー屋といえば、瓶がズラーッと並んでいるのに、この店は入り口の処に多くて10あまり。どうもそうはやっているわけでもなさそうである。店主はと見るに、グリム童話だったかな、「ロバの王子」というのがあるけれど、そのロバの王子がおじさんになったような人だ。

暇そうなのをよいことに少し話し込んでいるうちに、この人はただのコーヒー屋ではないと思い始めた。「コーヒーの苦みを言う人がいるが、それは焙煎が駄目だからです。苦みは焦げです。コーヒーに苦みはあるはずがない」僕はロバのおじさんの目がこういう話になるとすわっていくのを面白く眺めた。

スペシャリティコーヒーというのか、値段は高めだが、とにかく別格の豆だけを仕入れて、自分が納得いく焙煎方法でしあげるという。テイストで次々飲ませてくれるのだが、驚いてしまった。コーヒーに対する認識が一変した。

去年のことである。それ以後この店以外のコーヒーは買ったことがない。一般にブルーマウンテンが価格の上からも最上級とされているけれど、この店ではそれ以上のものもたくさんある。入口に10くらいしかないと書いたのは嘘ではない。

つまり、この店で同じものを買うのは難しい。その時々で良いものを仕入れて売る。しかも、種類によってはほんのわずかしか手に入らなかった、馴染み客に売ってあっという間に完売ということも多い。

この人の口からはコーヒーに関して「オレンジの香り」「レモンの香り」「ナツメグの香り」とか「前頭葉にパッとくる」「脳幹刺激」だとかが次々に出てきて、言われてみればなるほど、とも思う。これが正直な感想。とてもじゃないが敵わない。こういう人もいるのだ、と感心する以外ない。

たった数種類置いてある紅茶がまた信じられぬほど旨い。時折入る茶葉を(良いものは300グラムくらいしか入ってこないという!ひとり30グラムでたった十人しか手に入らない)取り置きしてくれるようになったのは嬉しい限りだ。紅茶に関しても「渋みが普通ありますでしょ、あれは酸化している、つまり腐っているわけです」という。そりゃそうだ。

徒歩圏にこんな店があってほんとうについている。「ぜにさわコーヒー店」といいます。ホームページもある。覗いてみたらいかが。そこで「セント・ヘレナ」というコーヒーを見たら、これはもう別格だと思って下さい。恐れ入りましたと頭を下げて味わうしかない。
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