季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

初心者を教える

2020年05月27日 | 音楽

もう何年も前からコンクールの審査などで、子供に対してもっと違う教え方をしたらどうだろうと感じることが多かった。

先生をしている生徒たちにも様々なアドヴァイスをしてきたのだが、どうも偉そうに言っているだけでは申し訳が立たないと思うようになった。

そこで自分でもまったくの初心者を教えてみることにした。

といっても僕に習いたいという子供がそんなにいる訳もなく、数年に1人申し込みされるにとどまる。

条件は毎日30分弾くこと、それくらいなのである。小さな子供の扱いに長けているわけではないし、その辺は見様見真似とでも言おうか。

いざ実行してみると思った通りのこともあれば思うに任せぬこともある。

それでも上達させるには欠かせないと僕が思う点ははっきりしている。

これは教えている人全員に言えることなのだが、言わなければならないことを言い、言わずにいても差し支えないことは放っておく。  

では何を言う?何を言わない?それだけが問題なのだ。以前から僕が感じた批判はつまり、言わなくて済む、いやもっと言えば言ってはいけないことまでを言って伸びる芽を摘んでいるではないかということだったわけである。

僕としては習いに来てくれた子を何としても上手にさせたい。それも出来るだけ無理なく、楽な方法で。それを思う。

参考までに1年半前から習い始めた子の普段のレッスンの一部をアップしてみた。ずっと上手に教える人もいるだろう。それでも
この子は毎日1時間練習するという。するとたった1年半でこうして弾けるようになる。

僕としてもその昔先生もなく1人メトードローズを弾いて悦にいっていたかすかな記憶を楽しむのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

古い記憶

2020年05月25日 | 音楽
シュヴァイツァーといっても知る人は少なくなってきただろう。ましてやこの人が卓越した音楽家だったことなどは忘れ去られているのではなかろうか。

この人の自伝で知り鮮やかに記憶に残っているのだが、彼は子供の頃ピアノで表現するのが恥ずかしくてたまらなかったという。決して出来の良い生徒ではなかったようである。

ある時無言歌を練習するように言われた
が、先生は「君はどうせこの曲も台無しにするのだろう」と言った。

シュヴァイツァーはその言葉に感じるところがあったのだろう、次のレッスンまで自分に出来るすべてを傾注した。

次のレッスンで彼が心を込めて弾き終えた時、先生は彼の肩を抱いた。以来二人の間には友情が芽生えたという。

こうしたエピソードは両者の音楽への愛情の強さを物語る。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フランス組曲

2020年05月19日 | 音楽
https://youtu.be/7BzBBsZBr9M
自宅でのレッスン風景のほんの一部を紹介してみた。

ネット上で演奏を詳しく説明するのは不可能で、それをするには長い解説が必要かもしれない。しかも解説というものは大して役にも立たないのだから、レッスンの雰囲気を多少感じて貰えれば良いと思う。

生徒諸君がそれぞれ一所懸命に、それでいて伸び伸びしてくれているのが僕としては嬉しいのである。その辺りだけでも伝わるだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

楽音という雑音

2020年05月18日 | 音楽
以前楽音とは雑音だと書いた。ただし美しく聞こえる雑音。

ピアノにおける雑音の最大は鍵盤が棚板を打つ音なのは説明するまでもない。

では鍵盤は棚板にぶつからないように弾くのが美しく聴こえるのだろうか?これはこれで全く違うのである。

浮ついた音で弾いてはいけないと言われる。その時の音がこの音なのである。

では更にもう一歩前に進んでみよう。

この音は使い物にならない音なのだろうか?それもまた違う。

所謂レジェロはこれに近い。ある時にはこの音そのものである。メロディにおいて、或いはマルカートにおいて浮いた音は
いけないと注意されるのはこうした理由なのだ。

つまるところピアノの音とは様々な雑音の組み合わせだと言える。(棚板を打たぬ音にしてもやはり物理的には雑音であるから)

ひとつ確実に言えることがある。それはハンマーが弦を打つポイントにエネルギーが集中することが極めて大切なのだということ。

それを逃して棚板を打つ力が最大になった時、楽音という雑音は雑音という楽音になり下がるのである。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

又々スコットランドソナタ

2020年05月14日 | 音楽
https://youtu.be/xKIv_3dfhJs
引き続きスコットランドソナタの3楽章を上げてみた。休みなく続く16分音符は一見容易そうに見えるが中々の難物である。

しかしその難しさは表面的なもので、その向こうにある激しさや夢想をわざとらしい表現を避けつつ実現することこそが困難なのだ。

敢えてほぼ全部を上げてみたのは僕のメンデルスゾーンへの愛着故でもあるし、上述の「意見」を実際にはこうアプローチしていることを示したかったからでもある。

長目の動画が続いたが是非見て貰いたいと願っている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弾き方次第

2020年05月13日 | 音楽
引き続きスコットランドソナタの2楽章を。

僕が今まで聴いてきたところでは、この楽章を子供のお使いのように弾かないことは大変難しいようである。

繰り返されるメロディが余りに平易で大抵の場合そのせいで子供のはやし歌になってしまうのだ。

そうなるのは作曲家のせいだろうか?試しにベートーヴェンの第九のフィナーレをフンフンフンという調子で歌ってご覧なさい。これも立派な下らぬメロディに成り下がるのが判る。

この2楽章をそうなり下がられない為に細心の注意を払いたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

メンデルスゾーン讃

2020年05月12日 | 音楽
https://youtu.be/REyV3YEfZIU

コロナの影響でオンラインレッスンもしているが自宅でも続けている。

オンラインでは細かいところを繰り返し指摘することが多くなるようだ。いつもより取り上げる曲数が少なくなり不思議に思っていたのだが、後で見直してみると納得する。

自宅ではある時には同様にこと細かに一緒に練習するけれど、この動画のようにもう少し違った観点から語ることもある。

メンデルスゾーンのこのファンタジーは演奏が大変難しい。先ず1楽章を上げてみる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

強いとは

2020年05月10日 | 音楽
ボクシングの井上尚弥選手といえば、そのあまりの強さゆえにボクシングに関心の無い人でさえ名前は知っているという存在になっている。

その井上選手だが、握力は成人男子の平均をかなり下回って何と30キロ台なのだという。インタビュー記事で本人の口から知った。

意外ではあるが驚きもしない。スポーツ選手が身体能力の全てで超人的な数値を残す訳ではないばかりか、ある時には非力ですらあるのは珍しいことではないから。

僕はピアノ演奏という観点からもそれを良く知っている。強さはある時には脆さと同義だったりする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

テロップ付きにした

2020年05月09日 | 音楽
https://youtu.be/XTpJl_MWkxw
昨日やってみたテロップ付けがあまりにお粗末だったので今回は頑張ってみた。

やや長い動画であるが、途中から様々な曲に脱線しつつ説明しているからなるべくそちらまで見ていただけたらと思う。

5本の指と1本の腕で弾くのだ、そう何通りもの動きがある訳ではない。どれもが何処となく似通っているのである。

その辺りを伝えられていたら良いのだが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

子供のためではなく

2020年05月07日 | 音楽
YouTubeに投稿していて念の為に言っておきたいことがある。

ブラームスの練習曲が思いのほか視聴されていて、僕も動きの基礎などと解説している。

ただしこれは所謂上級者辺りに向けた言葉なのである。決して子供にさせたりしなくて良い。

根本的な基礎というのは本当は僕たちに生来備わった何となくの動作だ。スポーツのことでも考えてもらえば誰でも了解するだろう。

大人になってからピアノを始めた人達で上達が極めて早いと多くの場合独学なのである。基礎が大切だからと熱心な教師に習った人は往々にして行き詰まっているように見受けられる。

ブラームスの練習曲を基礎動作と言ったのは以上をふまえた上でのことだと理解してもらいたい。

何でもまず弾きやすいように弾いてみよう。歌うように弾いてみよう。最初に敷居を高くしてはいけない。より遠くへより高くへ行くにはそれが一番大切なことなのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする