季節はずれのインテルメッツォ(続)

音楽、文学、絵画、スポーツ、シェパード等々についての雑記帖。

スタンフォード監獄実験 その後

2018年12月29日 | その他
スタンフォード監獄実験というのを以前紹介したことがある。ランダムに選んだ被験者を監視役と囚人役に分け、それぞれに相応しい「演技」をさせていくと自発的にその役割を果たしていく、という大変有名になった実験だ。

人には生来残酷になり得る性質がある、それを裏付けるとして様々な取り上げ方をされたという。

その実験に対して疑義を呈する論文が発表された。

詳しく知りたい人はスタンフォード監獄実験 捏造報道とでも検索したら直ぐに見つかる。


厄介なのはこの手のレポートが真実である証拠もまた僕にとっては無いという点だ。それにだけは気を配った上で読んでもらいたい。

社会学系の研究というものは得てして政治色を強める。人の言動を個人から引き離し全体を語るからどうしてもその傾向は強くなる。

学問である以上、その一番難しい処を常に意識しながらな綱渡りのような緊張を強いられる。その困難さを思わない人は研究者として落第である。

そうであるはずにもかかわらず容易に踏み外す。対象への関心が強いほど結論を急ごうという誘惑に打ち克つのは難しいらしい。

それどころか最近偶然目にした上野千鶴子氏の言だが、自分の主張に不利益をもたらすデータは隠しても良いと言い切る。その上それについては他の著名な学者も是認したとあった。

こうなると社会学とは政治運動と何ら変わりないと言え、学問の体をなさないのではなかろうか。

同じ理屈で企業なり自治体なりは不利なデータを隠蔽することも良しとせざるを得ないではないか。学問と言いながら学問を殺しているのは当の学者なのかもしれない。

監獄実験に疑念を呈した記事によれば、実験を主宰したジンバルドーにおいても、まず当時の刑務所の環境に対する批判があり、それをアピールするために劇的な演技をするように強いたのだという。その上、彼自身も所長として実験に参加していたそうだ。被験者はジンバルドーの望んだ「演技」をしなかったとは言い切れないだろう。








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自動運転

2018年12月23日 | その他
車の進化と呼ぶべきなのか。
自動運転の技術が進んでいるのだそうだ。

新技術の裏には必ずと言って良いほど難問が控えている。それも全く予期しないところに。

例えば次のような倫理上の難題が生じているのだそうだ。

衝突を回避するために急な進路変更をする。その作動は人のそれより遥かに正確且つ素早いだろう。

だがもし変更された進路に歩行者がいたとしたら?歩行者は一人で衝突する車には何人もの人が乗っているとしようか。

コンピュータはいずれを選択するのだろう?犠牲者の数だろうか?考えたところで結論が出るとは到底思えない。

この様な深遠なテーマは一般人の手に負えない。ここからは演奏する立場の人として発言しよう。

なんて気取ってみたが。

この手の論者は結構いるのだね。ここでは大学教員としての私が語るとかぺんぺん草としての私が語るとか。

そもそも自動運転中に事故を起こした場合でも責任は運転手にあるらしい。(運転していないのに運転手というのかな?)

それと関係してだろうか、自動運転中も手はハンドルに添えておくことが大切なのだ
と何処かで読んだ。

これは随分間抜けな図である。しかしいくらコンピュータが操縦しているとはいえ、いつ何時想定外の事態が引き起こされないとも限らない以上、たしかに大切な事だろう。

しかし考えてみよう。ハンドルに手を添えただけで不測の事態に際し反応できるものだろうか。

ピアノの鍵盤上に手を乗せて急に弾いたら教師は注意するではないか。弾く前に息をしなさいとか予備動作をしなさいとか。

人間の体はそのようにしか動かない。そうである以上、運転手はある種の身構えをもってハンドルに手を添えた、いや添えただけではだめなのだ、握った状態で座っている必要がある。

そうだ、足だってペダルに着けておかねばいざという時には間に合わない。何のことはない、今まで通りではないか。

さてそこで最初の倫理的難問に戻ろうか。

不測の事態に際しコンピュータは倫理的難問を瞬時に解析し歩行者を守るために衝突を選択したとする。

だが運転手はこちらは倫理とは無関係に本能に従って歩行者の方にハンドルを切る。歩行者に気づかないことだってあるのだから。

こんな時に車はどの様な挙動を取るのだろうね?

僕は今のところ縁のない話さ、とニヤニヤしてしまうのだ。



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