パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

「朝生」を見て

2006-04-01 16:05:21 | Weblog
 久し振りに「朝生」を見る。テーマは「格差社会」だったが、結構おもしろかった。特に、途中で「経済論争」になったあたり。森永卓郎と宮崎哲哉がインフレターゲット派で、それ以外が反インフレターゲット派だ。
 一般向けには、景気が回復したのは小泉改革の成果であるということになっていて、その「成果」のマイナス部分が「格差社会の出現」であり、それをテーマに討論しようというのだから、「そうじゃない、景気が回復したのはインフレターゲット的政策のおかげなんだ」と主張する森永、宮崎の出現に、田原が相も変らぬ調子で、「インフレターゲットって何?」とか「知らぬふり」で割って入ったのは、司会者として問題をそらす必要が生じたからであろう。そして、その挙げ句、「なるほど、経済成長率の目標を2、3%あたりに置くわけね」とつぶやいていたが、おいおい、そうじゃないよ。「知らぬふり」じゃなく、本当に「知らない」んだな、この老人は。
 「経済成長率」じゃなく、「物価上昇の目標値をおいて、それ人為的に起こす」のがインフレターゲットであり、その目標数値が2、3パーセントくらいということだ。

 田原の無知はともかく、わざわざインフレを起こすなんてとんでもないことだと思われるかも知れないが、「ゆるやかなインフレ状態」、言い換えれば、「少しずつ成長すること」が、経済活動を健全に保つためには必要であるというのがインフレターゲット論者の主張だ。いや、そうじゃない、すべての経済学者が、「ゆるやかなインフレは必要である」と考えているが、そのためには、貨幣を大量に提供することが有効である、これがインフレターゲット論者の主張であり、かつマネタリストのやり方でもあって、日銀は、伝統的に反マネタリスト、反インフレターゲットが主だったが、背に腹は代えられないということで、実質インフレターゲット論者の意向に沿ったような政策を続けることで景気回復を果たしたのだが、目標を達成したとたん、それを捨てるなんて、「別れろ切れろは芸者のうちにいう台詞」というか、なんというか、なんてつれない仕打ちなんだ、と一月程前に書いたのは私なんだが、昨日の「朝生」では、それに似たような話が中途で飛び出したので、「面白かった」のだ。

 ところで、もっと面白かったのは、そんな宮崎哲哉に対し、金子勝が「あんた、言ってることが以前と違うね」と突っ込み、それに宮崎が「二年前から、意見変えた」と答えていたことだ。いや、宮崎君、私と同じだね。私も二年前から意見を変えたのだ。

 宮崎は、二度も「二年前から」と言っていたが、「何故二年前からなのか」ということは言わなかった。それで、私の場合を言えば、二年ちょっと前あたりから、日本の為政者の態度が、「世論の動向」を無視し得ないことを自覚し出したように、私の眼にうつるようになった。それで、全体的には、徐々に良い方向に向かっていると思ったのだが、宮崎も多分、同じような印象をもっているのではないか。(「悲観的な方向」に意見が変ったとするなら、その時点ではっきり言わないと、言論人としてはまずいわけで、したがって、それを言わなかったということは、「楽観的な方向」に変わったのだと推測できる……かもしれない)

 宮崎のことはともかく、たとえば、成田空港問題にしても――もちろん、過激派を支持するのではないが――、「世論の動向」に敏感であれば、半世紀近くもすったもんだすることもなかっただろう。そして、日本の為政者は、多分、そのことを学んだのだと思う。その結果が、たとえば、米軍の再編に伴う沖縄の基地移転問題だ。この問題に対する当局の態度は、どんなに少数派であろうと、それを強制的に実力排除すると、結局、問題解決がひどく困難になるというもので、アメリカにもそう言っているらしいが、これは成田問題から学んだのだろう。
 あるいは、狂牛病問題にしても、安部官房長官は記者会見等で「消費者の安全と安心に留意」と言っているが、これは、現在の世論の動向を見る限り、「安全」だけでなく、「安心」の二字も無視できないと見極めているからと思われる。もちろん「安心」なんか、保証できるはずもない代物なのだが、そう言わないと世論が離れ、問題解決が遠のく危険性があると政府当局は見ているのにちがいない。ということは、安部官房長官の談話から「安心」の二字が消えた時、アメリカからの牛肉輸入が再開されることになるのだろう。もちろん、「何故、《安心》を言わないのか」と記者から突っ込まれるだろうが、「安全であることを確認できたということは、《安心》も確認できたということなのであります」とかなんとか答えるのだろうと、先回りして想像したりして。

 というわけで、もちろん、国民年金問題をはじめとして問題は山積しているものの、日本の政府・与党は、「二年程前」から、積年のこだわりだか何だか知らないが、ともかく何かを吹っ切ったように安定し、熟成の道を辿ろうとしているように私の眼には見えるのだが、宮崎哲哉の「二年程前」はどんなことがあったのだろう。

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2 コメント

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しかしなんですなあ (アンソミー)
2006-04-02 17:20:04
いまだに党首候補に菅直人の名前が挙がっているというのも不思議と言うか、非常識というか。だいたい、永田メール事件より、シン・ガンス元死刑囚の恩赦嘆願に署名したほうがよっぽど罪が重いとおもいますけどね。



韓国の裁判で、拉致した状況は生々しく開示されましたからね。知らないで署名したとはいえないですし。

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Unknown (Unknown)
2006-04-09 20:11:32
しんがんすは拉致した女の子全員味見してるだろうなー
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