パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

ああ勘違い、北朝鮮編

2006-10-22 13:33:54 | Weblog
 北朝鮮問題でわからないこと。

 その一。何故北朝鮮は拉致した日本人を全員返さないのか? 返せば、日本政府から大金をせしめることができるのに。

 その二。これは今後の展開含みだが、何故北朝鮮は、日米が無条件で開かれていると言っている六者会議に復帰しようとしないのか? 

 この二つは、いずれも、いわゆる「弱者の恫喝」(核実験も同じ)だが、北朝鮮は、この「恫喝」による見返りを自ら否定しているようにみえる。

 そこで、少し参考になるかも知れない歴史的事件がある。
 日本で言えば江戸時代のはじめ頃、長崎に向かっていたオランダの貿易船が嵐に遭い、鎖国中だった朝鮮の済州島に漂着し、乗り組み員30数人が京城に送られた。オランダ人船長は、自分達は長崎に向かう途中に事故に遭ったので「鎖国」を犯そうと思ったわけではないと弁明し、日本に行かせてくれと頼んだが、国王は許さなかった。その理由は、「我が国に入った外国人を国外に出してはならないという祖法があるからだ」という、わけのわからないもので、実際、国王もその「祖法」の意味を理解していたとは思えなかった。というのは、当時の宗主国にあたる清から使者がやってくる度、国王は拉致したオランダ人を清の役人の目にとまらぬようにせよと自国の役人に命じたのである。これは、恐らく、「祖法」の根拠を清の役人に説明する自信がなかったからと思われるが、ともかくその結果、オランダ人は、清の使者がやってくる度、朝鮮の役人に引きつられて国中を逃げ回ったのである。
 オランダ人たちはこうして、異国に20年近く抑留され、最後に、監視の隙を見つけて漁船を奪い、長崎に逃れた。その時生存者は、たしか13人だったと思う。(いずれにせよ、日本に帰ってきた拉致被害者の総数と同じだったと記憶している)

 これは大変に有名な事件で、済州島には記念碑も建てられ、韓国の歴史教科書にも大きくのっているが、その記述では、「我が国は鎖国中でも外国人を迎えいれていた」とか、そんなふうに説明されており、読んで目が点になった。

 それはともかく、わからないのが、「我が国に入った外国人は返してはならない」という、「祖法」だ。
 私が想像するに、当時の朝鮮は、記録文書はすべて漢文である。しかもその漢文は、中国の正統的な文語体の漢文で、朝鮮人が日常的に使用している言語体系とは断絶している。日本政府の公式文書が英語で書かれていて、日本語訳がついていないようなものだ。しかも、英語の場合は文語体と口語体がある程度一致しているが、漢文は、全く言語体系の異なる東西南北各地方に中央の指令を通達するために使われた、一種の暗号のようなものなのだ。
 だから、日本でも大昔は正式文書は「漢文」だったわけだが、それはかなり日本語化された「漢文」で、やがて漢字仮名交じり文として完璧に日本語化されたわけだが、朝鮮の場合はそうではない。漢字の母国、中国をもしのぐ程の正統的「漢文」であって、それが彼らの誇りでもあったのだが、いかんせん、今書いたように、漢文は基本的に暗号であって、その解読は、まず古典として成立している過去の文書との照合、有名詩人等によって多くの人に通じるようになった熟語、それに若干の助詞的漢字を参照した上、「全体の意味の流れ」として推測されるもので、確固とした「文法」(暗号解読表)がない。
 ねんか、めんどくさいことを書いたけれど、要するに、「我が国に入った外国人を国外に出してはならぬ」という「祖法」は、もしかしたら、「我が国に入った外国人は国外に出さなければならない」の読み間違えだったりしてるのじゃないかと思うのだ。でなきゃあ、到底、理解できない。もちろん、その祖法の元となった文書が残されていれば、後でそれを検討するという方法が残されているが、彼の国にそれが残されている可能性はほとんどない。ということは、いかにチンプンカンプンなものであれ、それを是正することは不可能ということになる。

 というわけで、北朝鮮問題だが、まさか、李朝時代の「祖法」に縛られていることはないだろうが、金日成の言葉に縛られている可能性はある。拉致日本人の多くは、金日成によって「金の卵」と称されたよど号をハイジャックして北に渡った日本赤軍によるものだし、核開発も金日成の下した政策であることに間違いない。そして、金正日には、おやじの命令を覆す力は、たぶん、ない。つまり、おやじの金日成あっての息子、金日正であるからには、そのおやじのカリスマに頼るしかない。
 ということは、金正日の次の指導者になれば、金日成の政策は金正日の政策とみなされ、それを覆すことも可能になるかもしれないという理屈になるが……。しかし、こんなことをやってるようでは、北の未来はないけれど。(とっくにないか)

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