パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

倫理の匙加減

2006-03-11 16:43:18 | Weblog
 「ザ・フライ2」を深夜テレビで見る。またまたまたまたまた、途中から、題名も知らずに見て、翌朝、新聞のテレビ欄で確認した。
 「ザ・フライ」の1も見ていないが、クローネンバーグというマニアっぽい監督が作ったということだけ知っていたが、2は、クローネンバーグではないらしい。

 1も知らない上に、30分ほど過ぎてから見たからストーリーはよくわからなかったが、主人公の顔がだんだんくずれていって、繭のようなものに包まれていくところ、気持ち悪い! しかし、外見が醜く、人間離れするにともない、行動が粗暴になるのは、何故?……ったってしょうがないのかもしれない。そんなものだ、人間は。途中でガード犬が化け物に変身した主人公に頭を撫でられて大人しくなるところなんか、そこらへんを皮肉ったのかもしれない。
 おもしろかったのは、化け物が人を殺した後、放り投げるところ。投げられてひんまがった姿勢のまま死んでいるところに、監督の「美学」みたいなものを感じたりして。これが「クローネンバーグ調」かと、「ザ・フライ」の続編であることを知った後に、後付けで思ったりしたが、さらに調べたら監督はクローネンバーグじゃないそうで……。

 ところで、殺した後、死体を放り投げるというのは、非人間的行為の象徴として演出していると思われるのだが、先に、幼児を二人殺した中国人女性も、自動車の車内で包丁で滅多刺しに刺して殺した後、外に「放り投げた」と自供している。私はこれを聞いた時、中国女らしいなーと思った。
 中国は、半世紀前までは一夫多妻みたいなもので、それに儒教の男尊女卑の教えが根深く残っているから、女性の力が弱そうだが、実は、世界一、恐妻家の多い国として知られている。それもつまるところ、大陸風「大家族主義」から来ている。
 というのは、大家族の「家長」には一族の最年長の男がなる場合が多いが、制度的に「最年長の男を家長とする」と決まっているわけではなく、あくまで「実力」で決まるので、時には女性が家長につく場合がある。そのような場合、その女性は「旦那さん」と呼ばれることもあるらしいが、そういった場合の、「女性の実力」とは何かというと、つまるところ、女性独特の手のつけられない「ヒステリー」といっていいかと思う。

 話が飛ぶが、ヒトラーがそうだったらしい。たとえば、会議の最中に激高してヒステリーを起こしたら、女性のヒステリーをだれもとめられないように、もう誰もとめられない。歴戦の勇士揃いの将軍連中も、ヒステリーを起こしたヒトラーに異義を唱えることができるのは一人もいなかったそうだ。画家のダリは、ヒトラーの背中は中年女性の背中だと言ったらしいが、さすが、ダリだ。観察眼が並みじゃない。
 それはともかく、数カ月前のことだ。私の前を二人の若い女性が腕を組んで歩いていた。若い女性が公衆の面前で腕を絡ませるのは、東アジア独特の風習だそうだが、最近では、日本ではあまり見られない光景なので、私の前の二人の女性は朝鮮か中国かどちらかだろうと思っていたが、言葉を聞くと中国人だった。
 ところがこの中国女性の一人が、歩きながらさっと顔を横に向け、「ペッ」と、音がしそうな勢いで道ばたに唾を吐いたのだ。瞬間的動作だったが、見事というか、鮮やかというか……もし、たとえば一メートル先に痰壷があったら、そこにピタリと入るような正確さと勢いが、この「唾吐き」にはあった。これか! これが有名な中国女性の「唾吐き」なんだ、と私はちょっと感動したりした。
 というのは、中国前漢時代に、趙飛燕、合徳という、美女姉妹がいた。姉の飛燕はスレンダーな美女、妹の合徳は豊満な美女という対照的タイプで、極貧の農家に生まれながら、二人して皇帝の側室に入り込んだ。中でも飛燕は非常に気が強く、やがて皇后の座を射止めてしまったが、妹はこの気の強い姉を非常に恐れていて、ある日、姉が「ペッ」と吐いた唾が妹の着物の袖にかかった。姉を恐れていた妹は、その袖を広げて、「まるで華のように美しい」と言ったいうのだが、じゃあ、「唾吐き」という行為自体は「美しい」のか? 唾を吐いた跡が「華のように美しい」のなら、唾吐き行為それ自体も「美しい」のでなければ理屈に合わないが、そういうことではない。「唾吐き」は、相手の顔に向かってなされる場合は、多分万国共通だと思うが、最大の侮辱行為だ。実際、中国の映画で、女が憎い相手に唾を吐きかけるシーンを見たような記憶もあるし。
 「唾吐き」だけでない。たとえば、重病の父母のために、妻を殺して、その肉をスープにしたりすることが、「美談」だったりする。だったら、人肉料理は、めったに口にできない最高級料理なのか、というと、必ずしもそうではない。やっぱり、人を食うのは、「犯罪」だったりする。
 ここらへんの「倫理」の匙加減が、中国人の場合、どうもよくわからない。

 「ザ・フライ2」から話がそれてしまったが、……なんの話をしてたのだっけ? ああ、そうだ、「死体を放り投げる」ことについてだった。まったく、なんてことをしやがるのだ、中国女は。そういえば、「中国女」というゴダールの映画があったけな。

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1 コメント

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最近。 (うさぴょん)
2006-03-12 12:50:45
「前の記事へ」とか「次の記事へ」とかをセレクトすると「表\示出来ません(302)」となってしまい、回線をブチ切るしかなくなってしまいますが、こういうのは、どこに言えばいいんでせう?

という訳で南原さんのコメント欄に投稿してみました(苦笑)。

やはり最近、次の記事が無くても「次の記事へ」が表\示されるようになってしまいましたが、とかも(笑)。
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