過ぎたるは……

2009-01-25 03:34:46 | Music Life
1984年頃のお話。
ヴァン・ヘイレンが「ジャンプ」で大ブレイクしたのね。それまでもギター弾きの間ではエディーすげぇぜっていうのはあったけど、誰もが知るようになったのは「ジャンプ」からだね。このPVで噂のライトハンド奏法を初めて見たという人も多かったんじゃないかな。それまで「誰よりも速くギターを弾く」ことを目指し、フルピッキング命だった連中も、こぞってライトハンド奏法を練習するようになった。そのインパクトはジミ・ヘンドリックス以来と言っても過言ではないかもしれないね。
「ジャンプ」以降、いろんなギタリストがタッピングを始めたし、様々なヴァリエーションを作っていったんだけど、タッピングだけで演奏するギタリストが出てきた。スタンリー・ジョーダン。テレビで初めて見たときはびっくりした。でも、音だけだと有名曲をジャズ風にアレンジしましたって感じのありがちなものだったので、あまり面白くなかった。両手タッピングで自在に演奏できるというのは確かにすごいことだけど、演奏している姿のほうが音楽より面白いというのでは本末転倒という気がする。過ぎたるは及ばざるが如し。
こうしてタッピングが広がっていく一方で、従来からの速弾きも新次元に突入した。イングヴェイ・マルムスティーンがグラハム・ボネットの「アルカトラス」のギタリストとしてデビューしたのもこの頃。リッチー・ブラックモアを倍速にしたみたいなスピードでこれにも驚いた。マルムスティーンはアルカトラスをすぐにやめちゃったけど、代わりに入ったのがスティーヴ・ヴァイ。誰もがトミー・ボーリンの悲劇が繰り返されると思っていたけど、ザッパゆずりの変態フレーズと高度なテクニックでマルムスティーンをしのぐギター・ヒーローになっちゃった。同じようにアルカトラスのオーディションを受けてヴァイに負けちゃったクリス・インペリテリはこの後自分のバンドでデビュー。ある意味アルカトラスっていうのはヤードバーズみたいなものだったというわけね。
誰よりも速く弾くとか、どれだけ音を詰め込むかってところで、左手だけじゃ足りない右手も、ギターもシングルネックじゃ足りない、もっともっとというわけで、これはマイケル・アンジェロに行き着く。ステージでクワッド・ギター提げて仁王立ちしているマイケル・アンジェロは確かにすごい、でももはやミュージシャンというよりは曲芸師だよね。この場合も見ていると面白いんだけど、音だけ聴いても面白くないというわけで、過ぎたるは及ばざるが如し。

もう一つの別の流れ、速弾きもタッピングもしないけど、存在感のあるギターを弾く人たちが出てきたのも1984年頃からじゃないかな。U2のジ・エッジとかスミスのジョニー・マーとか、日本のボウイの布袋寅泰を加えてもいいかもしれないけどね。で、ニルヴァーナのカート・コバーンが出てきて、速弾きとかタッピングとか、長いギター・ソロだとかをやるのがかっこわるいという状況になっていったと思うけどね。

私の場合、もちろん最初は誰よりも速くギターを弾くことを目指していたんだけど、ヴァイとか見て、諦めちゃいました。で、周りをよく見てみると軟弱なディスコ音楽だとバカにしていたシックのナイル・ロジャースのカッティングにびっくりしたり、ポール・サイモンとかジョニ・ミッチェルのコード・ワークにびっくりしたり、ギターの奥深さってこういうところにあるのねって感じ。実は速弾きばかりしてた頃って、どんなに指が動くようになってもギターが弾けている気にならないという不全感がずっとあって、モヤモヤしてたんだけど、コード・ワークが土台になきゃいけないんだと改めて気がついた。そのあたりでギターを弾かなくなってしまったんだけどね。
ギターを再開してからは簡単なクラシック・ギターの曲を練習したりしているけど、なかなか上手くはなりませんね。つい年齢のせいにしちゃうけど、ちゃんと練習していないのがいけないんでしょう。ギターの練習はし過ぎるってことはないので、もっとやらないといけないな。
コメント
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