以前、TEISCOのMayQueenのことを書いたときに平川雄一の「中村メイ子をかき鳴らせ!!!」のことも書いたんですが、そのときは「月刊少年マガジン」に連載中でした。連載は昨年で終わって、先日最終巻の単行本が出たので、この機会に改めてこの作品について書いてみようかと思います。結論から言えば、これは描かれただけで価値のある作品だと言えるでしょう。
エレキギターが美少女に変身するという設定はいわゆる「萌え擬人化」の文脈でとらえることもできますし、作中にもそうした「萌え要素」を含んだ場面があったりもしますが、この擬人化という設定について、例えばハイデガーあたりを援用しつつ、1本のエレキギターを交換可能な道具的な存在(本質存在)としてではなく、かけがえのない存在(現実存在)として描いたなんてことも言えるわけで、私のようなギターバカにしてみれば、人と楽器との特別な関係とか人と音楽の関わりに楽器視点を導入したとか、そうしたところが重要なわけです。
まあ「弘法筆を選ばず」とか「玩物喪志」とか、モノに過度の感情移入をすることを戒めるような言葉もありますし、ギターを弾く人にもいろいろあって、ギターを単なる道具と言い切ってしまう人もいますので、そういう人からすればギターが美少女に変身するという設定はフェティシズムのあからさまな発露ということで敬遠してしまうものかもしれませんね。
さて、このマンガはあまりの音痴ぶりに「ゆるジャイアン」とあだ名される中村清春という高校生を主人公としています。彼の家は骨董店を営んでいて、そこにある品物を整理しているときにTEISCOのMayQueenと出会いますが、音が出るか試しているとそのギターが美少女に変身してしまうというところから始まります。その美少女は中村メイ子と名づけられ、メイ子は清春に「私に40年分の賞賛を浴びさせなさい」と強く迫るのです。この導入部からは、音楽的な才能がまるでない清春がギターを手にし、様々な人たちと出会い、音楽に目覚め、バンドを結成し、幾多の障害を乗り越えながら成長・成功していくといったストーリー展開が予想されますが、この予想は裏切られます。音楽を通じて主人公が成長・成功する物語は今までにもいろいろ描かれてきましたので、主人公がギターがうまくならないままの結末は異色であると言えるでしょうし、リアルでもあります。ギターを手にしている人のほとんどがプロ、ましてや世界的なロックスターになれるわけでもなく、日常の中でささやかに音楽や演奏を楽しんでいるというのが圧倒的なわけですから。で、こうした普通の人々の音楽や楽器との関わりにも喜びや悲しみがあり、それらもかけがえのない経験であることに変わりはないのだといったところ。
「中村メイ子をかき鳴らせ!!!」では、日常の中でギターを楽しんでいる人たちの諸類型が描かれています。主人公の清春はギター初心者ですし、そのほか中年になってから再びギターを手にした人やギターマニア、そして清春が入部した軽音部の部員たちなど。彼らもいろいろなものを背負っていたりするわけです。そこに描かれるエピソードの一つ一つは悲喜こもごもですが、楽器をやったりバンドをやったりした人には共感できるところだと思いますし、音楽や楽器の演奏は特別な才能がある人だけのものではないということで、これから何か楽器をやってみたいという人が読んでも楽しめると思います。
こうした登場人物の中でイチオシは軽音部の部員、志水響子ちゃんですね。愛用のギターがダンエレクトロの59DCでThe CHICKSという実力派ガールズバンドのギタリストでもあるという。ダンエレクトロのギターが登場するマンガというところでも「中村メイ子をかき鳴らせ!!!」は「だのじゃん」的に嬉しい、特別な作品であるわけです。
エレキギターが美少女に変身するという設定はいわゆる「萌え擬人化」の文脈でとらえることもできますし、作中にもそうした「萌え要素」を含んだ場面があったりもしますが、この擬人化という設定について、例えばハイデガーあたりを援用しつつ、1本のエレキギターを交換可能な道具的な存在(本質存在)としてではなく、かけがえのない存在(現実存在)として描いたなんてことも言えるわけで、私のようなギターバカにしてみれば、人と楽器との特別な関係とか人と音楽の関わりに楽器視点を導入したとか、そうしたところが重要なわけです。
まあ「弘法筆を選ばず」とか「玩物喪志」とか、モノに過度の感情移入をすることを戒めるような言葉もありますし、ギターを弾く人にもいろいろあって、ギターを単なる道具と言い切ってしまう人もいますので、そういう人からすればギターが美少女に変身するという設定はフェティシズムのあからさまな発露ということで敬遠してしまうものかもしれませんね。
さて、このマンガはあまりの音痴ぶりに「ゆるジャイアン」とあだ名される中村清春という高校生を主人公としています。彼の家は骨董店を営んでいて、そこにある品物を整理しているときにTEISCOのMayQueenと出会いますが、音が出るか試しているとそのギターが美少女に変身してしまうというところから始まります。その美少女は中村メイ子と名づけられ、メイ子は清春に「私に40年分の賞賛を浴びさせなさい」と強く迫るのです。この導入部からは、音楽的な才能がまるでない清春がギターを手にし、様々な人たちと出会い、音楽に目覚め、バンドを結成し、幾多の障害を乗り越えながら成長・成功していくといったストーリー展開が予想されますが、この予想は裏切られます。音楽を通じて主人公が成長・成功する物語は今までにもいろいろ描かれてきましたので、主人公がギターがうまくならないままの結末は異色であると言えるでしょうし、リアルでもあります。ギターを手にしている人のほとんどがプロ、ましてや世界的なロックスターになれるわけでもなく、日常の中でささやかに音楽や演奏を楽しんでいるというのが圧倒的なわけですから。で、こうした普通の人々の音楽や楽器との関わりにも喜びや悲しみがあり、それらもかけがえのない経験であることに変わりはないのだといったところ。
「中村メイ子をかき鳴らせ!!!」では、日常の中でギターを楽しんでいる人たちの諸類型が描かれています。主人公の清春はギター初心者ですし、そのほか中年になってから再びギターを手にした人やギターマニア、そして清春が入部した軽音部の部員たちなど。彼らもいろいろなものを背負っていたりするわけです。そこに描かれるエピソードの一つ一つは悲喜こもごもですが、楽器をやったりバンドをやったりした人には共感できるところだと思いますし、音楽や楽器の演奏は特別な才能がある人だけのものではないということで、これから何か楽器をやってみたいという人が読んでも楽しめると思います。
こうした登場人物の中でイチオシは軽音部の部員、志水響子ちゃんですね。愛用のギターがダンエレクトロの59DCでThe CHICKSという実力派ガールズバンドのギタリストでもあるという。ダンエレクトロのギターが登場するマンガというところでも「中村メイ子をかき鳴らせ!!!」は「だのじゃん」的に嬉しい、特別な作品であるわけです。