スペンサー・デイヴィスの罪

ダンエレクトロがヴィニー・ベルと共同開発し、コーラル・ブランドで売り出したエレクトリック・シタールの最初の二本をビートルズのジョン・レノンとジョージ・ハリスンに贈ったことはよく知られている。結局ビートルズはこれをレコーディングに使用することはなかったのだが、あれほど音に貪欲だった彼らが、エレクトリック・シタールを与えられて何もしなかったというのは謎といえば謎である。

ビートルズがステージやレコーディングに使用した楽器を網羅したAndy Babiukの著書「Beatles Gear」の中に、コーラルのエレクトリック・シタールについて触れた箇所がある。それを読むと、ジョージのエレクトリック・シタールをスペンサー・デイヴィスが借りたまま長い間返さずにいたということが記されている。どうやらこのあたりに謎を解くカギがあると思われる。

1987年の「ギタープレイヤー誌」でジョージはこんな風に語っている。
「エレクトリック・シタールを見てスペンサーが一晩それを借りてもいいかい？って言ったんだ。そして彼はそれをハイジャックしたのさ。２年ぐらいその姿を見ることはなかったよ。誰もがエレクトリック・シタールを使うようになってたとき、僕は実際には使えなかったんだ」

After Tea - The Spencer Davis Group


スペンサー・デイヴィスは「アフター・ティー」という曲でエレクトリック・シタールを使うつもりだったのだが、デイヴ・メイソンが本物のシタールを弾いたので使わずにすんでしまったとのこと。それでしばらくジョージのエレクトリック・シタールはスペンサー・デイヴィスの自宅に放置されたままになってしまったという。

スペンサー・デイヴィスはこう言っている。
「あるとき、ジョージの事務所から電話があってね。ハリスン所有のエレクトリック・シタールはあなたのところにありますねって言うんだよ。うん、そうだ。それは事実で、私が持っていると答えたよ。そして私はミニにエレクトリック・シタールを積んで、返しに行ったというわけさ」

もし、スペンサー・デイヴィスがすぐにエレクトリック・シタールを返していれば、それを面白く効果的に使ったビートルズの楽曲が生まれていたかもしれないと思うとはなはだ残念。

動画で楽しむDano(102)

French Kicks on Craig Ferguson


フレンチ・キックスはニュー・ヨークのバンドで、現在は活動を休止しており、ほぼ解散状態のようだ。ガレージロックやポストパンクをミックスしたサウンドと評されるが、音程の曖昧な独特の浮遊感が特徴のように思う。

この映像では「Also Ran」を演奏している。ギターのジョシュ・ワイズがダンエレクトロの3011を弾いている。