ピックガードデザイン試論

2015-08-30 18:19:02 | Dano Column
ギターについているピックガードは文字通り、ボディの塗装をピッキングから守るためのものであるが、それだけにとどまらず、様々な素材やユニークな形状によって装飾的な役割を担うこともあれば、ギターの見た目の印象を決定づける「顔」としての役割を担うこともある。



ダンエレクトロのショートホーンモデルのピックガードも他にはないユニークな形状を備えている。この形こそがダンエレクトロをダンエレクトロたらしめていると言っても過言ではないわけだが、このピックガードの形が一体どこから来たのか、そのデザインの源泉は何か、というのが「だのじゃん」的に未だに解けない謎なのである。



謎は謎として、改めてダンエレクトロのギターを眺めてみると、そのボディの黒とピックガードの白とのコントラストは陰陽太極図を思わせるが、ネイサン・ダニエルが道教に関心を抱いていたというような事実はないわけで、これは単なる偶然に違いないと思われる。



また、その曲線は雲形定規のようにも見え、そのものズバリのテンプレートがあったりするのではないかと思ったのだが、ネットの画像を探しても当たらずとも遠からじ、といった感じであった。



ボディとピックガードの曲線の重なりという面から見れば、同時代の自動車のボディとフェンダー部分の曲線の重なりと通じる部分があるような気もするが、気がする以上の決め手には欠けるのがもどかしいところである。

ショートホーンのピックガードは一般に Seal(アシカ)ピックガードと呼ばれている。その形状がアシカに見えるからだが、アシカやイルカの流線型的な体型は、これまでも様々に造形的なモチーフとなってきた。例えばロイ・スメックのウクレレにはサウンドホールがアシカの形をしたものがある。



そもそも弦楽器にはヴァイオリンに代表されるようにf字のサウンドホールが施されていて、普通は具象的なものからそれが抽象化されていくのであるが、この場合は、すでに抽象的なf字からアシカやイルカのような具象へと逆に進んでいくというわけで、このような、生物的・有機的な曲線を導入するアール・ヌーヴォー的バイオモルフィックな発想がダンエレクトロのデザインの源泉の一つであると考えることはできるかもしれない。

これらのことは要するにアール・ヌーヴォーからアール・デコへというデザイン潮流の変遷の中にあって、ダンエレクトロもそれらに影響を受けながらギターのデザインをしていたということを示すものではあるのだが、1950年代アメリカの工業製品であればそれは当然のことでもあるわけで、何ら新しい視点を与えてくれるものではないのである。

そんなわけで、まだまだあてどない思索の彷徨は続くのである。
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動画で楽しむDano(138)

2015-08-25 20:15:30 | Dano Movies(洋)
'Cigarettes' - Russian Red (La Maleta de Russian Red)


ロシアン・レッドといっても彼女はスペインのマドリード出身で、本当の名前はルルデス・エルナンデスという。ロシアン・レッドというのは彼女の好きなリップスティックの色なのだそうだ。

キャリアは意外に長く、2008年にファーストアルバムをリリースし、すでに日本にも3回ほど来ているという。ベル&セバスチャンをゲストに迎えたアルバムもあったりする。

彼女が使うギターはほぼアコギであるが、たまにこの映像のようにダンエレクトロを使ったりするようだ。
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思わず検索したくなる……

2015-08-11 19:17:01 | Music Life
ヨッちゃんのギター・コレクションを全部並べてみた(short ver.)


ギタープレイヤーは多かれ少なかれギターコレクターという人種を憎んでいて、「奴らは金に飽かしてヴィンテージを買いあさり、相場を吊り上げた挙句、やることといったらそれを眺めて酒を飲むくらい。俺が持った方がよっぽどギターが生きるのに」と思っている。

ギターコレクターは多かれ少なかれギタープレイヤーが自分たちのことをよく思ってないことに気づいていて、「ジェフ・ベックならいざ知らず、お前ごときにそんなことを言う資格はない。お前の汚い手でさわられるくらいなら倉庫に死蔵されているほうがよっぽどギターのためだ」と思っている。

このようにギタープレイヤーとギターコレクターは相容れないものであったりするのだが、野村義男の中ではこの両者が共存しているように見える。共存しているというよりはうまく棲み分けられていると言うべきか。350本を超えるギターはこの棲み分けのために必要というわけだ。

野村義男が最近出した「思わず検索したくなるギターコレクション」という本は文字通り彼のギターコレクションを一冊にまとめたもの。このコレクションを見ても、いっさい手を加えないヴィンテージと様々な改造を施されたギターというような、本来は排他的な二項対立の図式となるところがそうならないのは彼のギターへの愛ゆえというところか。本人も「芯が通っていない」と言っているが、コレクションとしては体系化されていない無節操なものに見えてしまうのは、レスポールやストラトキャスターと同様にメロディーメイカーやミュージックランダーのようなギターも同等に愛せる、その愛のかたちが博愛であるためなのだ。

とはいえ、この野村義男であっても、プレイヤーとコレクターのせめぎあいの中で悲しみを感じることもあるようで、その心情は「ギターは消耗品でもあるから本当に大切なものは弾かなくなる。それはギターという楽器の残念な性かもしれない。」という言葉に表れているように思う。

さて、「だのじゃん」的には彼が所有しているダンエレクトロが気になるところであるが、オリジナルはコーラルのエレクトリックシタールとダブルネックの3923というモデルの2本。しかもこの3923に関してはオリジナルのハードケースも持っているのがとても羨ましい。そのほかはリイシューとジェリージョーンズが数本あるが、以前持っていたコーラルのファイアフライはこの本には掲載されていないので、すでに手放してしまったようだ。ダンエレクトロのギターは気に入っているようで、特に25インチスケールが弾きやすいとのこと。
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