1974年のテレキャスター・カスタムを入手。テレキャスターは以前、アメリカン・デラックスを所有していて、とても愛着があったのだったが、ダンエレクトロの3011を手に入れる際に手放すこととなってしまった。それからしばらくすると、どういうわけだかテレキャスターが弾きたくて仕方がなくなってきた。失って気づいても遅いのだが、やはり私にはテレキャスターも必要だったのである。
テレキャスターで私が好きなモデルはサンバーストのカスタムテレキャスターである。現在それをヴィンテージで入手しようとすれば100万円はくだらない。これではさすがに手を出すわけにはいかない。中古であればアメリカン・ヴィンテージ・シリーズのカスタム・テレキャスター'62を20万円前後で手に入れることができるので、私はそれを狙っていたのだったが、ここは敢えて70年代のテレキャスターにしてみたらどうだろうかと、例によって変な考えが浮かんできてしまったのであった。70年代のテレキャスターといえば、重いとか、ネックジョイントの部分が変だとか、ボディの曲線が違っているとか、あまりよい話は聞かないのであるが、今となってはそれはそれで面白みがあるのではないかなどと思えてくるのが不思議なものである。
そんなわけで70年代後半のテレキャスターをあれこれと探しはじめた私に、じわじわと近づいてきたのがテレキャスター・カスタムという、かなり変わったモデルであった。このモデルの存在を知らなかったわけではないが、これはキース・リチャーズやアベフトシにイメージが直結してしまうため、私としては所有の対象外とせざるを得なかったし、加えて、フロントにハムバッカーというのがどうにもフェンダーらしくなく、それもこのモデルに馴染めない大きな要因であった。であったのだが、変な考えが一度走り始めるとテレキャスター・カスタムのことが妙に気になりだし、YouTubeの動画をあれこれ見ていると、このモデルが欲しくなってしまうのだから不思議なものである。
70年代ということにこだわれば、すでに50年代から存在するスタンダードなモデルよりも70年代初頭に登場したカスタムのほうが、より70年代っぽくてよいというものではないだろうか、といったところなわけである。
さて、テレキャスター・カスタムは1972年に登場し、1981年まで生産された。フロントのハムバッカーを開発したのはセス・ラヴァーで、ギブソンのものよりもワイドレンジなサウンドを目指したものである。70年代初頭からスタンダードなテレキャスターのフロントをハムバッカーに交換するギタリストが増えてきたことから、最初からフロントにハムバッカーを搭載したモデルをということで開発されたカスタムは、そのコントロール部からもわかるように、ギブソンのレスポールを意識したものでもあった。しかしフェンダー社の期待したようには売上は伸びなかった。