2023年のダンエレクトロ〈番外編〉

2023-04-19 17:29:40 | Dano Guitars
例年だと1月か2月くらいに開催されていたはずのNAMMショーが今年は4月の13日から15日(現地時間)に開催されたようで、やはりコロナ禍の影響だろうか、イベントごとはまだまだ例年通りというわけにはいかないご様子。

今年のNAMMショーにはダンエレクトロも出展していて、このブログでも2023年モデルとして紹介したDIVINEの3ピックアップモデルや2022年モデルとして紹介したロングホーンのバリトンギターなどが展示されていた。ダンエレクトロのブースの様子や会場全体の雰囲気などはYouTubeに動画もアップされているし、ダンエレクトロの日本代理店であるキクタニミュージックのツイートもあるので、現地に行かずとも、ああこんな感じなんだということはよく伝わってくるわけで。



それで、2023年モデルのDIVINEなのであるが、これには市場に出ることはなかったプロトタイプが存在するのである。フェイスブックの Danelectro Owners というグループに投稿された画像を見ると、3ピックアップであるところとピックアップの切り替えがストラトのような5wayスイッチになっているところは共通しているが、ボディのほとんどを覆うようなピックガードとウィルキンソンのトレモロユニットが搭載されていることや、サイドにミントグリーンのバインディングが施されているところが大きく違っている。これはピックガードの形状と合わせ、ヘッドストックこそコークボトルのままとはいえ、ショートホーンの4021に見た感じが非常に近いという印象である。

   

プロトタイプということで、市場には出ていないのだが、4021に近いルックスという意味でも、単純にかっこいいわけなのだから、新製品として来年でもいいから発売したらいいんじゃないかしら、と思ったりした次第である。
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ギターマガジン2023年5月号 鮎川誠とトム・ヴァーレインについて

2023-04-15 19:29:47 | Dano Column
ギターマガジン2023年5月号には、今年の1月に相次いで世を去った二人のギタリスト、鮎川誠とトム・ヴァーレインの特集記事が組まれている。

鮎川誠については、大鷹俊一によるバイオグラフィ的な記事が1本と過去にギターマガジンが行ったインタビュー3本の再掲、次いでギターやアンプの機材紹介とディスコグラフィがあり、そして関係のあったミュージシャンたちへのアンケートによって構成されている。インタビューの1本目は1981年、「ピンナップ・ベイビー・ブルース」リリース時のもの、2本目は1993年、ウィルコ・ジョンソンとの「ロンドン・セッション」リリース時のもの、最後3本目として鮎川誠がパンクを語った2018年のものとなっている。これらのインタビューはいずれも興味深いものだが、とりわけ、ブルースへの想いを熱く語った部分が素晴らしい。



鮎川誠のギターについての私の関心は、彼が敬愛していたリンク・レイにあやかってダンエレクトロのギターを所有していたかどうかにあった。先月だったか、復刻版が出た鮎川誠の「60s ロック自伝」の、リンク・レイについて書かれた箇所を見ていたら、そこにダンエレクトロが「三流のギターメーカー」と書かれてあるのを見つけてしまい、悪意はないだろうと思いながらも、今回の機材紹介を見ると、ダンエレクトロ関連では2本所有していたことがわかった。1本目は1986年製のグレコDE-70という、ダンエレクトロ・ショートホーンのコピーモデルで、赤く塗装されているが、この赤は「シーナ・レッド」なのだそうだ。6弦が外されていて、5弦ギターとしての使用が想定されていたようだ。2本目は2002年製のダンエレクトロDC12で、2016年にサンハウスのメンバーだった浦田賢一から贈られたものだとのこと。レコーディングやライブで使用された形跡はないので、あくまでコレクションということなのだろうけども。

トム・ヴァーレインについては、バイオグラフィとディスコグラフィ、ジミー・リップとネルス・クラインへのインタビュー、そして「トム・ヴァーレインが愛したギターたち」で構成されている。

トム・ヴァーレインが亡くなったとき、このブログに記事を書いたが、そこで彼がなぜポール・ヴェルレーヌから名前を取ったのかについて、深い意味はないのではないかと書いたのだったが、十代の頃にリチャード・ヘルとともにデカダンな詩人に憧れていたということからすると、19世紀末の象徴派の詩人の名前には深い意味が生まれてくるし、トムがヴェルレーヌでリチャードがヘルというのも、おそらくヘルは「地獄の季節(A Season in Hell)」のことで、つまりはそれを書いたランボーにつながっていくのではないかと考えられるとすれば、さらに深い意味が生まれてくるではないか。ヴェルレーヌとランボーが破局したのと同様にトムとリチャードも決裂してしまうわけだけども。

ネルス・クラインがインタビューの中で「トム・ヴァーレインはどういうトーンを求めていたのか?」という質問に対して、「トム・ヴァーレインがリップスティック・ピックアップを気に入っていたことに共感している」と言い、「そのクリスタルのように煌びやかでクリアな音色は僕も大好きで、彼もそれを求めていたんだと思う」と答えている。ネルス・クラインも「わかっている」のだな、と思う。



そしてトム・ヴァーレインのギターについてとなるわけだが、ダンエレクトロ関連では3本のギターが紹介されている。1本目は画像は掲載されていなかったものの、初期にはダンエレクトロの4021を使用していたことが記されている。次いで2本目は白のダンエレクトロ・デラックス6036で、これは画像も掲載されているが、その説明に「3つのミニスイッチとマスターボリュームという仕様へと改造が施されていた」とあるのが引っかかる。マスターボリュームの位置は変わっているようだが、これはおそらくミニスイッチに改造したのではなく、ノブが取り外された状態になっただけ、と見るべきなのではないかと思われる。3本目はシルバートーンの1457で、トム・ヴァーレインはこのギターをいつもベッドのそばにおいて、曲作りの時などに使用していたそうだ。このことは知らなかったので、私にとっては新たな発見であった。
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