ジミー・ペイジの功罪

2014-12-21 23:12:14 | Dano Column
このブログの「動画で楽しむDano」では130人ほどのダンエレクトロ・プレイヤーを紹介しているが、多くの人々にとってダンエレクトロといえばいまだにジミー・ペイジなのである。それは彼が世界的に有名なギタリストであるからだが、ダンエレクトロの演奏法について極めて理にかなったやり方を発見したからに他ならない。

ジミー・ペイジがダンエレクトロを手にしたのは、シド・バレットが使っているのを見たことがきっかけだったとのこと。いくつかのインタビューで、シド・バレットについては「素晴らしいひらめきに満ちた天才」と発言しているし、いずれにせよジミー・ペイジがシド・バレットから大きな衝撃を受けたことは確かで、ヤードバーズ時代に丸いミラーをテレキャスターに貼っていたのもシド・バレットを真似してのことであっただろうし、シド・バレットが使っていたダンエレクトロは前衛的で実験的なサウンドを生み出す魔法の杖のようなものに見えたのかもしれない。



ジミー・ペイジがダンエレクトロを使い始めたのはいつの頃からかといえば、すでにセッション・ギタリスト時代にそれを演奏している写真が残っている。ヤードバーズ時代ではジェフ・ベックが脱退した後、「ホワイト・サマー」をステージで演奏するためにダンエレクトロを使用した。この曲はいわゆるDADGADチューニングで演奏される曲で、ジミー・ペイジがフォーク・クラブに足繁く通っていた時期にアン・ブリッグスやバート・ヤンシュの影響を受けて出てきたものである。スタジオ盤ではアコースティック・ギターで演奏されているが、ステージではダンエレクトロが使用された。「ホワイト・サマー」はレッド・ツェッペリンでも引き続き演奏されたが、そこでもやはりダンエレクトロが使われた。ダンエレクトロを変則チューニングで演奏すること。これこそがジミー・ペイジが発見した理にかなった活用法なのである。

ダンエレクトロのオリジナルはそのブリッジ構造ゆえ、チューニングの際に弦を1本ずつ合わせることができないという弱点があった。現行品では金属製の6連サドルやバダスブリッジを搭載したモデルがあり、チューニングの問題をある程度克服することができるようになったが、ジミー・ペイジはこの問題に対してはDADGADのような変則チューニングにしたり、スライドバーで演奏したりすることでうまく回避することに成功した。さらに「ホワイト・サマー」や「カシミール」のようなオリエンタルな雰囲気の楽曲においてはちょっとしたピッチのずれがかえってそのサウンドに神秘性を与えることにもなった。

この発見はジミー・ペイジの大きな影響力と相俟って、ダンエレクトロは民族楽器的なアプローチをするもの、しなければいけないものという先入観を与え、その呪縛に多くの人がからめとられてしまったことは否めない。ダンエレクトロ自体がエレクトリック・シタールやベルズーキのように見た目が民族楽器的なエレクトリック・ギターをいくつかつくっていたということもこの呪縛をますます解きがたいものにしたのかもしれない。

ダンエレクトロのような楽器さえへヴィでラウドなサウンドの中に生かしていくジミー・ペイジの素晴らしいひらめきが、それゆえに多くの人を先入観でがんじがらめにしてしまう。ジミー・ペイジの功罪はこんなところにあったと思う。
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