ダンエレクトロはいかにして復活したか

2022-10-29 11:06:48 | Dano Column
先日記事にした「謎のハコモノギター」について、真相を知っていそうな人物としてマイケル・カンピオンの名前が挙げられていたのだが、それがなぜかと言えば、1990年代にEVETSコーポレーションのスティーヴ・ライディンガーとともに、ダンエレクトロを復活させた男だからに他ならない。

ダンエレクトロの復活といっても、それはブランドネームが同じというだけで、ネイサン・ダニエルが創設した会社とは全く別物だということは言わずものがなのことではあるが、大前提としておく必要がある。

さて、ダンエレクトロブランドが復活に至るには、まず、ミュージシャンであるマイケル・カンピオンがEVETSコーポレーションのスティーヴ・ライディンガーと出会ったことから始まる。1992年のことであった。彼らはまず最初に液晶ディスプレイを採用したギターチューナーを開発した。これは迅速かつ正確なチューナーで高い評価を得たそうだが、これが現在のクリップ・チューナーである「SNARK」に脈々と受け継がれているのだろう。



この後二人はリーズナブルな価格帯のペダルを開発し、その際に多くの候補の中からブランド名を「ダンエレクトロ」とすることにした。その理由としてダンエレクトロにはシンプルな美しさと歴史と神秘性があったからだという。ダンエレクトロの商標権は1969年の工場閉鎖後からニュージャージーのアンソニー・マーク氏が保有していたが、1990年代半ばにライディンガーが取得したとのこと。



こうして、ダンエレクトロブランドのペダルは1997年1月のNAMMショーでお披露目となり、大評判になったという。その際、多くのディーラーから「ギターはいつ出すのか」と質問攻めとなったため、1年後にシングルカッタウェイのU2モデルをリイシューした。

ダンエレクトロのギターをリイシューするにあたっては、スティーヴ・ゾーストが招かれた。彼はダンエレクトロのギターに関して専門的な知識を持っていて、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが所有していたダブルネックギターの4弦ベースの部分を6弦ベースに改造するなど、ヴィンテージのダンエレクトロを修理した経験も豊富であった。そして彼らはどのギターをリイシューするかを議論し、シングルカッタウェイの56-U2が誕生したのだという。オリジナルと違う点はネックにトラスロッドが仕込まれたこと、ペグが1個1個の密閉型となったことなどが挙げられるが、ブリッジやピックアップはオリジナルを踏襲している。このリイシューされたダンエレクトロはアマチュアだけでなく、数多くのプロギタリストたちからも絶賛され、彼らは何本も買い集めたと言われている。これを追い風に、98年10月にはダブルカッタウェイの59DC、56U1(U2の1ピックアップモデル)、56-U2のレフティ仕様、ロングホーンベースなどが市場に投入され、90年代におけるダンエレクトロの復活は確固たるものとなったというわけだ。

しかし、2002年になると、マイケル・カンピオンはダンエレクトロを去り、本業のミュージシャンに専念することとなる。とはいえその後もライディンガーのEVETSコーポレーションはダンエレクトロのギターやペダルの販売を続け、紆余曲折ありながらも現在に至るというわけである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2022年のダンエレクトロ

2022-10-23 10:12:09 | Dano Info


ここのところ新製品が出てこなくなったダンエレクトロから久しぶりに新製品が出るとの情報が入った。
今回ラインアップされたのはロングホーンモデルのバリトンギターで、コッパーバーストとシルバーバーストの2色展開となるようだ。

ロングホーンのバリトンは以前にもリイシューされたが、今回はDEAD ON 58のようにポインタノブを採用するなど、よりオリジナルに寄せたものとなっている。スケール長は29.72インチなので、一般的にはショートスケールとなるだろう。フレット数は24あり、金属の6連サドルが採用されている。

ダンエレクトロの公式サイトにはまだこの情報は掲載されていないが、アメリカのギターショップではすでに予約販売が始まっている。569ドルなり。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

動画で楽しむDano(407)

2022-10-20 21:33:43 | Dano Movies(邦)
COOL SPY ON A HOT CAR - クールなスパイでぶっとばせ - / FLIPPER'S GUITAR【Official Music Video】


前回紹介したNagakumoは、ネオネオアコの旗手として、フリッパーズ・ギターやシンバルズから影響を受けていることを公言しているわけだが、それではフリッパーズ・ギターは当時どんなギターを使用していたか。強く印象に残っているのは、やはりグレッチあたりだろうか。

「クールなスパイでぶっとばせ」はフリッパーズ・ギターのセカンドアルバム「CAMERA TALK」に収録されたインスト・ナンバーで、スパイ映画のサウンド・トラックのような感じなのだが、このプロモ映像はというと、画面がチカチカし、しかも暗い画面なので見えにくい。小山田圭吾はVoxのファントムを弾いていて、小沢健二が弾いているのがシルバートーンの1448。かなり前に見ているはずの映像なのだが、小沢健二がシルバートーンを弾いていたことについ最近まで気づいていなかった。一生の不覚である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジミー・リードのDano

2022-10-07 19:22:13 | Dano Column


この画像は「living blues」という、1970年に創刊されたブルース専門誌の1975年5-6月号(通巻第21号)の表紙である。ジミー・リードの特集なのだから彼が表紙になるのは当然としても、なぜダンエレクトロの Pro-1 を抱えた姿にしたのかその意図は不明である。ちなみにジミー・リードと私は誕生日が同じなのである。

ジミー・リードが使用したギターといえば、ケイのシグネチャーモデルが知られている。その他にもエアラインやスプロといったチープなギターを弾いたりすることも多く、ビザール系のギターとの親和性はなるほど高いとはいえ、ダンエレクトロの、しかも Pro-1 を弾いているとなれば、これはこれで驚くべきことで、とても珍しいことなのである。



さて、ジミー・リードの Pro-1 がどんなものかといえば、オリジナルそのままではなくて、ボディ表面に何やらキラキラしたものがモザイク状に散りばめられ、それが全体を覆っている。加えて、レスポールでいえばピックアップ切り替えのトグルスイッチがあるあたりにコンチョのようなものが貼り付けてある。そしてトーンやボリュームのコントロールノブは外されており、ポットの軸がむきだしとなっている。



そもそもこの画像、私は Silvertone World のフェイスブック・ページで見たのだが、これには続きがあって、ジミー・リードの Pro-1 は、現在、ジミ・プライム・タイム・スミスというブルースマンが所有しているという情報が流れてきたのである。残念ながら音声や映像は見つからなかったのだが、ブルースマンの魂はこのようにして受け継がれているのだな、と感慨にふける今日この頃であることよ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謎のハコモノギター

2022-10-05 18:18:51 | Dano Guitars


このギターの画像は Facebook の Danelectro Owners というグループに投稿されたもので、投稿者はこれを5年ほど前に友人から購入したという。どことなくグレッチを思わせるハコモノギターであるが、ヘッドには DANELECTRO のロゴが見える。しかしこのギター、カタログに掲載されたことはないし、今までネット上にも現れたことがないものなのである。

投稿者によれば、このギターには Danoblaster と同じようにエフェクトが内蔵されているらしい。その頃と同時期につくられたものだとすれば、当時はオリジナルのリイシューのほかに全く新しいギターをつくろうと、モズライトやストラトキャスターをダンエレクトロ流にデフォルメしたボディシェイプにしてみたり、リップスティック・ピックアップをあえて搭載しないモデルにしてみたりと、かなり攻めた商品展開をしていた頃なので、グレッチをベースに、今までのダンエレクトロにはなかったハコモノギターをラインアップしようとしたというのであれば、あり得ない話ではないと思われる。

しかし、この投稿には Doug Tulloch や Steve Soest といったダンエレクトロの権威もコメントしているのだが、彼らでさえ、このギターを見たことがないというのである。スティーヴさんは、1990年代にダンエレクトロを復活させたことで知られる Michael Campion に聞けばいいよ、とコメントしていたが、マイケルさんからのコメントはまだなく、このギターの詳細については謎は謎のままなのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

動画で楽しむDano(406)

2022-10-03 23:03:54 | Dano Movies(邦)
Nagakumo "思いがけず雨"(Official Video)


Nagakumoは2021年に結成された大阪のバンドで、ネオネオアコを標榜している。
なるほど聴いてみると確かに言われるように、フリッパーズ・ギターやシンバルズの影響を強く感じさせる。

この動画ではオオムラテッペイがロングホーンベースを弾いている。最近のライブでは、ボーカルのコモノサヤもダンエレクトロ(59DCらしい)を抱えていたそうで、そういった意味でも将来楽しみなバンドである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする