リチャード・トンプソンのダンエレクトロ

2024-08-16 18:21:22 | Dano Column


上の画像でシーフォームグリーンのダンエレクトロを抱えてポーズをとっているのはフェアポート・コンヴェンションのオリジナルメンバー、リチャード・トンプソンである。こんな画像があるからにはライブでもダンエレクトロを頻繁に演奏しているのではないかと動画を探してみたのだが、見つけることはできなかった。そのかわりと言っては何だが、ちょうどこの画像について、ネット上で質疑応答がされている書き込みを見つけたので紹介しておこう。

http://www.richardthompson-music.com/QAgeartunings.asp

質問者はその画像のダンエレクトロはあなたのものかと尋ねたのだが、リチャードさんは時々色だけで選んだギターでフォトセッションをすることがあると答え、自分を気取り屋と言い、恥ずかしいとも言っている。なのでおそらく、このダンエレクトロはリチャードさんのものではないのだろう。だが、発言の続きで、ダンエレクトロは古い友人で、たくさんのレコーディングで使用したとも言っているので、昔から何本かは所有してきたのではないかと思われる。

また、あなたはダンエレクトロの隠れファンだったりするのですか、という質問に対しては、イエスと答え、バリトンやベースも好きだと言っている。

リチャードさんがレコーディングでダンエレクトロを使用した楽曲として思い浮かぶのは「Word Unspoken, Sight Unseen」と「Crawl Black」だそうだが、実際それらを聴いてみた限りでは、それらがダンエレクトロのサウンドなのかどうかはよくわからなかった。

この他にもダンエレクトロに関する質問があったので、ついでに書いておくと、質問者はダンエレクトロのコンバーチブルを持っているそうなのだが、このギターのチューニングが弾いているそばから合わなくなってしまうとのことで、チューニングやイントネーションをキープするコツはあるかというのがその内容である。また、コンバーチブルの、ボディに乗せるだけの安っぽいブリッジなどを素晴らしいものに改造できる腕のあるルシアーがいるか、とも質問している。

これらの質問に対してリチャードさんは、チューニングが合っているということはダンエレクトロにおいては必ずしも美徳とは言えないのだと答えている。とはいえ、新しいペグへの交換がチューニングを安定させるのに役立つとも言っている。ブリッジについては、自分はまだ改造していないが、誰かにやってもらわなければならないと言っているので多少は気になっているのかもしれない。とりあえず、弦を太いゲージにして、ブリッジを少し高めにして、ブリッジからボディへの接地圧を高めることで、多少はズレにくくできるか、といったところで、ブリッジを固定したりするのはちょっと違うかと私は思うけどね。
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Danecaster の謎が解ける

2024-08-01 17:39:22 | Dano Column
ジム・ウォッシュバーンという、ダンエレクトロについて大変詳しい人がいるのだが、彼の Facebook に面白い記事があったので紹介することにしたい。

その記事というのは、以下の画像でジェフ・ベックとロッド・スチュワートが持っているギターに関するものである。



二人が持っているギターだが、一見、フェンダーのテレキャスターかと思いきや、ネックがおかしなものになっていることに気がつくだろう。このおかしなネック、実はダンエレクトロのベルズーキという12弦ギターのものなのだが、なぜこんなことになってしまったのかは、ギターマニアの間でもときどき話題になることがある。フェンダーとダンエレクトロではスケールが違うから、ネックを取り換えてオクターブチューニングが合うのかといったことが議論されることもあるが、ネックを取り換えた理由については、フェンダーのラジアスのきつい指板よりはダンエレクトロのフラットな指板のほうが弾きやすいからだろうという見解でほぼほぼ一致している。

ジムさんの記事に戻ると、実はこのギターはロン・ウッドが持っていたものだったということが明かされている。さらに驚くべきことに、このギターはロン・ウッドが The Birds というバンドに在籍していた頃に、ロンドンのイーリングにあったジム・マーシャルの店でセッティングしたものだったということも記されているのである。そしてこのギターは当時のイギリスではあまりにユニークだということで、当時の音楽雑誌「Beat Instrumental」に記事が掲載されるほどであった。「BIRD HAS A “DANECASTER” 」と見出しのついた記事を以下の画像で確認できるが、この記事では、誰が命名したのか、ロン・ウッド所有のギターのことを Danecaster と呼んでいる。



さて、ここで横道にそれるが、「Beat Instrumental」という雑誌について触れておきたい。これは1963年5月に「Beat Monthly」として創刊された雑誌で、誌名は18号から「Beat Instrumental Monthly」、37号から「Beat Instrumental」に変更となった。ギターやアンプ、エフェクターといった楽器や機材のレビュー、ミュージシャンへのインタビュー、レコード評、音楽に関する最新ニュースなどで構成される、今の日本で言えば「ギターマガジン」のような雑誌である。1960年代だと表紙は以下の画像のような感じである(「Dano研」的にロングホーンを弾くグラハム・ナッシュとショートホーンを弾くピート・タウンゼントが表紙になっているものを敢えて選んでおいた)。



ロン・ウッド所有の Danecaster とジム・マーシャルとの関係など、ジムさんの記事によって新たな発見があったが、そうなるともう一つの Danecaster のことが気になってくるというもの。以下の画像でピート・タウンゼントがアンプのキャビネットに突き刺しているギターのことである。



テレキャスターのボディにコークボトルヘッドのダンエレクトロのネックを取りつけたこのギターも、おそらくはジム・マーシャルの店でセッティングされたものではないだろうか。ピートとマーシャルとの関係や今回のジムさんの記事からすると、その可能性は非常に高くなったと言えるだろう。
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