函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

過疎の村に秋は深まり

2007年10月28日 16時51分10秒 | えいこう語る
私の家のすぐ近くに、1人暮らしのおじさんがいる。若い頃、様々な国の海で魚を捕っていた人だ。
子供の頃に母親に死に別れ、中学校を出てから他所で働き、東北のある港町で所帯を持った。一年のほとんどを船上で暮らす生活だったので、子供も出来たが離婚したそうだ。
60歳過ぎた頃に故郷に戻ってきて、父親が残していった家を改修し、住んでいる。船乗りは、危険業務なので、年金は一般の人より多いと話していた。
このおじさんの趣味は骨董品の収集である。海外の港に上陸する度に買い集め、今でも函館市にバスで行き、何やら購入してくる。
故郷を離れていたのが長く、離婚していて1人暮らしをしているなどのこともあるせいか、近所とはほとんど付き合いがない。父親の後添いの子が、私と同じ歳なので、3回ほど骨董品を拝見させてもらった。
家中、足の踏み場もないほど置かれ、ちょっとした骨董品店よりたくさんある。
購入した金額も相当に思える。
集め始めた理由を聞くと、一人で淋しいから、自分の好きな骨董品に囲まれているのが楽しいからと言った。
買う時の心構えも聞いた。これはいいなと思ったら、先に手付け金を払う。良い物だと目を付け、店を一回りして来たら、後から来た人に買われていたと言う悔しさを、何度も味わった事があったからだという。
一言で言うと「決断力だな」と、胸を張った。
このおじさん、近所で只1人心を許せる女性がいる。近くのガソリンスタンドの奥さんだ。この奥さんのご主人とおじさんは同級生だ。
奥さんは「お節介クラブ会長」と私が名付けたくらい、誰にでも平等に親切な人だ。だから、そのおじさんにも食事が偏らないようにとか、身の周りのこととを、がみがみ注意する。
おじさんは「みっちゃん」には勝てないな、と何時も笑っている。
そのみっちゃん奥さんが、ある時私にこんなことを話してくれた。
おじさんが、みっちゃんに生命保険の受取人になって欲しいと、言って来たそうだ。あんたに親切にしてもらうから、死亡保険金を受け取って欲しいと言う。
そんな事は他人がする事ではないと、丁寧に断ったと言う。
家族の愛情に恵まれず、骨董品に愛情を傾けているおじさんが一人。
今日も骨董品に逢いに、過疎の村からバスに乗り、片道1時間半の函館市に出かけた。
バスの走る山道は、紅葉も深まりを見せていた。